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ゴブリン先生、異世界を行く  作者: 青背表紙
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9 魔力

お話を書くのって難しいですね。最後まで書けるように頑張ります。

 俺の額の傷の光は次第に弱くなっていき、やがて消えてしまった。だが力が消えてしまったわけではなく、体の中に入り込む力の入り口が閉じたって感じだ。今は胸を中心に体の中で渦巻いている。


 群れの皆も三々五々、自分のねぐらに帰ったり子供の世話をしに戻ったりして、今この場にいるのは俺と群れの年寄りこと最年長のオスだけだ。


 それにしても、体にあふれるこの力は何なのだろうか。俺は自分の胸や額を触り、首を捻って考えるがさっぱり分からない。そんな俺の様子を見て、群れの年寄りが話しかけてきた。


「それはな、魔力じゃよ。」

「魔力?じいちゃん、これが何か知ってるの?」


 最年長のオス、俺の母さんの父親、つまり俺の祖父であるじいちゃんは、群れで一番の物知りだ。最年長のメスである俺の母さんが群れを維持するための知恵を蓄える存在だとするなら、じいちゃんは外敵と戦い、群れを守るための知恵を持つ存在といえるだろう。


 今でこそ体の力が衰えてはいるが、先代の長を務めたじいちゃんは、他の若いオスと比べても遜色のない体力と何よりも長い狩猟生活で得た深い経験と知識を持っている。通常、現役を退いたオスのゴブリンが簡単に命を落としていく中で、ずっと生き残ってきたことがその強さの証でもある。


 じいちゃんは群れを襲う魔物との戦いで右目を失った。そのあともずっと長を続けていたが俺の父さんがリーダーとなった時に長を退き、自分のハーレムを父さんに譲り渡した。以来、じいちゃんは若いオスに生き残る術を伝える役として、母さんとは別の方面から群れを内側で支えてきた。


 リーダーの力が十分でないと、長の交代がうまくいかず、先代の長やその子供たちを、新しい長が争いの末殺してしまったりすることがあると、他の群れから来たオスが話しているのを聞いたことがある。


 そんな群れは結局立ち行かなくなり、滅んで他の群れに吸収されることが多いそうだ。この森はゴブリン同士で争っていられるほど、生易しい所ではない。


「ああ、魔物は皆その体に魔力を持っておる。わしの母親、つまりお前のひいばあさんが特に強い魔力を持っておってな。不思議な術を使っているのを見たことがある。」

「魔力を使う?」

「うむ、わしもほんの少しだが、使うことができる。目をつぶって自分の胸の奥に気持ちを持っていってみろ」


 俺は言われたとおりに目をつぶり、意識を胸の奥に集中させる。すると燃え盛る炎のような赤黒い何かがあるのを感じる。


「何か、あるのが分かるか?わしは自分の胸の中に、小さな水たまりのようなものがあるのを感じることができた。お前はどうじゃ?」

「俺には何だが火のようなものが見えるよ。」

「火か、それはまた恐ろしいものが見えるな。」


 そう言ってじいちゃんは、のどの奥でググっと笑う。俺たちは日頃、火を使う習慣がない。火はどちらかといえば恐ろしいものだ。俺は自分の中にある力に、なんだか不吉なものを感じる。


「それを動かすことができるか?」

「うーん、やってみるよ。」


 目を閉じたまま、胸の中の炎に動け動けと念じてみる。その途端、炎が一瞬大きく膨れ上がった。ずっと押し込めていた炎が急に解放されたような、あるいは燃え盛る炎に油を注いだような、そのあまりの勢いに思わず目を開き、炎を払うかのように慌てて胸を叩く。


「グググ、お前の魔力はよほど強いようじゃな。『真の名』を得たせいか、あるいはオークの魔石の力か、あるいはその両方じゃろう。」

「魔石?あの赤い石のことか。」

「うむ、魔物の胸にある石を魔石と呼んでおる。おそらくはそれが魔力の源なのかもしれんな。さあ、もう一度やってみよ。」


 今度は恐る恐る手を伸ばす感じで意識を向けていくと、それに応じて自由に炎の形を変えることができることが分かった。なんだか俺はテンションが上がり、年甲斐もなく大声で叫んでしまう。


「動かせたよ、じいちゃん!」

「そうか、やはりお前は強い魂の力を持っているようだ。今度はその力を自分の体に広げてみよ。」


 俺はまた目をつぶり、今度は炎を薄く細く伸ばす感じで、体の隅々に行き渡らせるようにイメージする。すると魔力の流れたところに、強い力が漲ってくるのを感じる。体が高揚感に満たされ、このまま炎を体内に燃やし続けていたいという誘惑にかられる。


 だが、ある一点を過ぎたあたりで急に魔力の流れが速くなった。恐ろしくなった俺は、慌てて魔力の流れを押さえ、手足に流れる魔力を胸に戻す。


「うまくいっているようじゃな。では今度はその力を目に集め、わしを見るがよい。」


 言われるままに魔力を目に集め、じいちゃんの姿を見る。するとじいちゃんの体にうっすらと闇色の膜のようなものが重なっているのが見える。じいちゃんの胸と目は、その色がやや濃くなっている。


「どうやら、見ることができたようじゃな。」

「ああ、じいちゃんの体の周りに何かがあるのが見えるよ。」


「それが魔力じゃ。使い方次第で姿を隠したり、自分の力を強くしたりすることができるぞ。何ができるかは自分で試してみるとよい。じゃが使いすぎるとぶっ倒れることがある。気を付けるのじゃぞ。」


「分かった。ありがとう、じいちゃん。ところでひいおばあちゃんはどんなことができたの?」

「ああ、わしの母さんは、人の体の痛みを取ったり傷を癒したりすることができた。自分の群れだけでなく他の群れからも慕われた偉大なメスじゃった。」


 魔力でそんなこともできるのか。俺にはどんなことができるのだろう。新しいおもちゃをもらった子供のように自分の力に夢中になっている俺に、じいちゃんは言った。


「ガウラよ、お前の持つ力は強く大きい。増えすぎたゴブリンの群れは、やがて自分の縄張りを食い尽くして自ら滅ぶ。お前の力もそうならないよう気を付けるのだぞ。」


 そう言って俺の頭をポンポンとなで、そのまま自分のねぐらへと引き上げていくじいちゃん。そうだな、じいちゃんの言うとおりだ。自重しろ、俺。何ができるかはこれから試していくとして、この力は自分と群れを守るためだけに使おう。そう、強く思った。


 さて、もう少し夕闇が深くなれば、いよいよ狩りの時間だ。俺も準備をしておこう。そうして足下に置いてあった角を拾い上げる。


 そう言えばこの角、うまく使えばもっと強力な武器になるんじゃね?パッと見、日本刀みたいに見えないこともないし、岩か何かで表面を研いで刃を付けられないだろうか。


 ゴブリンの剣士。うん、燃えるな。ついでに魔法でビームとか撃ったりして。よし、それでいこう。そうと決まれば、早速角の加工をしよう。


 俺はついさっきまで自分に言い聞かせていた自重も忘れ、食べられる木の実の採集のついでに、角を削るための石を探して、近くの森に分け入って行った。




個体名:ガウラ(後藤 武)

種族名:ゴブリンソルジャー

生息地:暗黒の森

装 備:魔獣の黒角

レベル:5(15)

スキル:突撃L5 格闘L3 登攀L2 潜伏L2 武器防御L1 魔力操作L1 魔力感知L1

言 語:ゴブリン語

称 号:真の名を持つもの

状 態:狂化の呪い


「狂化の呪い」の効果

 強い憎しみの感情を持ったりや生命の危機に陥ったりしたときに、体内の魔力が暴走状態となる。痛みや精神攻撃に強い耐性を持ち、自分の力を極限まで引き出すことができるが、我を忘れ敵味方の区別なく襲い掛かる狂戦士と化してしまう。この状態は一定の時間が経過するか意識を失えば解けるが、自分の意思で解くはできない。また任意に狂戦士化を発動することもできない。

週末ごとに投稿できたらいいなって思ってます。読んでくださった方、ありがとうございます。

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