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ゴブリン先生、異世界を行く  作者: 青背表紙
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58 精霊

かなり長くなってしまいました。まとめるのって難しいですね。

 俺は自分の記憶が見える白い部屋の一番奥、赤い光が渦巻く出口に勢いよく飛び込んだ。


 この中にはもう一人の俺、ゴブリンのガウラがいるはずだ。呪いに囚われたあいつを救いだして、あいつと一緒にみんなのところに帰るんだ。


 そんな気持ちで思い切りよく飛び込んだ俺だが、出口の向こうには床がなかった。いきなりの想定外だ。俺は怨嗟の声に満ちた赤い光の中、手足をバタバタさせクルクル回りながらどこまでも落ちていく。


 正確には『落ちて』はいない。上下の感覚もないからだ。何も存在していない宇宙空間に急に放り出されたような感じだった。


 ただ『足元に何もない空間だから落ちる』と俺が感じたことで、急激な落下の感覚を味わうことになった。


「えー!!これ、どうなってんの!?とりあえず床、床はどこだー!!」


 テンパった俺が叫ぶと、俺の落ちていく方向に畳と板の間の床が現れた。だが俺は畳を勢いよく突き抜けて、さらに下へと落ちていく。


 俺は口に入った藺草を吐き出す。あ、これ、新しい畳だわ。すごくいい藺草の香りがする。ってそんな場合じゃねぇ!!


「もっと丈夫な床!ぶっ叩いても壊れないような丈夫な床、プリーズ!!!」


 すると今度は石で出来た四角い舞台みたいなものが現れた。やばい、あれにぶつかったら大けがするぞ!?俺は必死に受け身を取る。


 自分でも信じられないくらいきれいな宙返りをして、俺は石の床に見事な着地をした。足の下からしびれが脳天に突き抜ける。だが、何とか激突せずにすんだようだ。


 ところでこの舞台、見覚えあるわ。あれだ、俺が大好きなアニメの天下で一番の武道会に出てくるあの石の舞台だ。どうやら俺の丈夫な床のイメージから出てきたらしい。


 この場所の仕組みが何となくわかってきたぞ。ひょっとして?


「かめ〇め波!!」


 俺があの主人公の構えをマネして両手を前に突き出してみた。俺の両手から水色のエネルギー波が飛び出し、舞台の向こうに消えていった。何これ超楽しいじゃん!!


 テンションが上がっていた俺の体に、虚空から現れた赤熱化した鎖が幾重にも巻き付いた。俺の着ていたジャージが燃え上がり、焼けた金属を押し当てられた皮膚が焦げて炭化していく。


 俺は火だるまになりながら「水!水!!」と叫ぶ。頭上から大量の水が降りそそいであっという間に火は消えた。だが全裸の俺の体に食い込んでくる鎖は凄まじい蒸気を上げて水を蒸発させたものの、いっこうに冷えることはなく、ますます俺の体を締め付けてくる。


 俺が痛みに耐えかねて絶叫を上げると、頭の中に「憎い!憎い!!」という声が満ち始めた。それにつれて足元にあった石の舞台がボロボロと砕け始める。やばい、このままじゃ・・・!


 赤熱した鎖を何とかしようと、俺は必死に熱に負けない服を着ている自分を思い描く。俺と鎖の間に消防士の着ている耐火服のようなものが現れるが、すぐに燃え尽きてしまった。


 これじゃだめだ!炎に負けない身体がいる。そうだ!!俺は自分の体が炎の塊で出来ている様子をイメージする。以前子供たちと一緒に社会科見学で見た溶鉱炉の中の金属を思い浮かべる。


 黒焦げだった俺の体がさらに燃え上がり、焼け焦げた俺の皮膚の下から真っ赤に焼けた金属みたいな皮膚が現れた。


 自分が金属を溶かす炎だとイメージすることで、鎖の熱を感じなくなった。頭の中に響いていた声が少し遠くなった。俺は自分の体の温度を自ら上昇させる。すると赤熱していた鎖が溶け、石の床の上に流れ落ちた。


 自由になった俺は、自分の元の姿を思い描く。再びジャージを着た元の自分の姿に戻った。どうやら自分が体験したりよく知っていたりするものの方が出しやすいらしい。


 俺はもう一度丈夫な石の床を思い浮かべる。崩れかけた床が元通りになった。するとその上にもう一人の俺、ゴブリンのガウラが姿を現した。


 その姿はもうゴブリンとは思えないほど捩じくれ巨大化していた。体中が歪な再生を繰り返したせいで、筋肉がデタラメに盛り上がっている。手足のバランスもバラバラだ。


 体は銀色の輝く体毛に覆われ、その上に赤熱化した鎖が巻き付いていた。まさに悪魔そのもの。見るからに恐ろしい姿だが、俺にはガウラが苦しんでいるのが分かった。


 ガウラは金属が軋るような声で、静かに俺に語り掛けてきた。


「呪いの力を上回るほどの魂の力を持っているとは。ただの人間だと思っていたが、お前どうやってそれほどの力を手に入れた?」


「んー、たぶん俺の力じゃないと思う。お前にもあの声が聞こえるだろう。」


 そう、俺の耳にはあの白い部屋にいた時からずっとガウラの名を呼ぶゴブリンたちの声が響いていた。俺はそのおかげでこの怨嗟の声に満ちた空間でも正気を保っていられたのだ。


「お前が『憎しみの精霊』ってやつか?」


「・・・私はその成れの果て。かつて私は自分の世界を滅ぼしてしまった。私は自分が滅ぼした多くの人たちの憎しみに囚われ、自分をどうすることもできないまま、さまようだけの哀れな存在。」


 俺が逆にガウラに向かって問いかけると、ガウラは自嘲するようにそう答えた。


「私はすべてを滅ぼす。私の中にいるすべての人、その憎しみを癒すまで、止まることはできない。」


「憎しみを癒すために滅ぼす?それはまた新たな憎しみを生み出すだけじゃないのか?」


「そうだ。そうやって私はこれまで多くの憎しみを自分の中に取り込んできた。もうどうすることもできない。」


「そんなバカげた話があるか!お前だってそれがどんなに間違っているかわかっているだろう?だから聞こえるあの声のために苦しんでいるんだ。」


 俺は目の前のガウラ、その中にいる憎しみの精霊に問いかける。ガウラの中にある苦しみが俺の心に伝わってくる。


「本当は別のやり方があるんじゃないのか。」


 ガウラは捩じれた腕で頭を抱えると、雄叫びを上げた。額にある半月形の傷が脈動するように緑の光を放っている。


 だがガウラの体に巻き付いた焼けた鎖がさらに伸びて、ガウラの体を強く強く縛り上げた。ガウラの体が焼け爛れ、緑の光が消える。


「もうおしゃべりは終わりのようだ。私はこの定められた在り様から抜け出すことができない。お前の魂を滅ぼし私の中に取り込んでやる。お前も私の力となり憎しみが消えるまで世界を滅ぼし続けるのだ。」


 ガウラは俺の方に向き直ると、一気に俺の方に加速してきた。ガウラの爪の一撃で、俺の体は呆気なく切り裂かれた。内臓がズタズタになり血が噴き出す。想像を絶する痛みで気が遠くなりそうだ。


 だが俺は死ななかった。一撃で吹き飛ばされ地面に転がったが、その場で逆再生するように体が修復していく。体が再生するときには傷つけられた時と同じ痛みがもう一度繰り返された。俺はたまらず絶叫を上げた。


 俺は何とか立ち上がりガウラに向き合う。この世界は俺の魂の力で成り立っている。俺が『死んだ』と思わない限り、俺は決して死ぬことはない。


 いや、それは正確じゃないか。俺はすでに『死んで』いるのだ。肉体のない魂だけの存在。だからこうやって何度でも蘇ることができる。


 魂だけの存在は実はすごく『曖昧』だ。思いが形になるということは逆もまた然り。もし皆の声が俺を守ってくれなければ、俺はこの空間に満ちる怨嗟の声に支配され、あっという間にすべてを憎むだけの存在になり果てただろう。


 あと魂だけなのに痛みがあるのは俺が『生きたい』と強く願っているからだ。死んでしまえば痛みも感じない。生きているから痛みを感じる。俺がそう思っているから『痛い』のだ。だから俺は痛みをあえて受け入れた。


 といっても何度もこれを味わったら、さすがに俺の心が折れて『生きる』ことを手放してしまうだろう。俺がそうなる前に、ガウラを救い出さなくてはならない。


 俺が立ち上がった時には、すでにガウラは俺に掴みかかろうとしていった。俺は胸の中に黒い魔力の炎をイメージする。俺の体が魔力で満たされる。成功だ!


 魔力を使う感覚はこれまでの戦いの中で十分に分かっている。かめ〇め波が撃てたくらいだ。魔力を使うことはそれ以上に俺にとっては自然なことだった。


 俺は身体を強化しガウラの一撃を躱すと、角棍棒を右手に作り出しそれを鉈の形に変化させて、ガウラの体を縛る鎖に叩きつけた。


 鎖が砕けて空中に飛散する。消える瞬間、鎖の輪の一つ一つがデジタル記号のような赤い光の欠片になって消えていくのが見えた。思った通りだ。


 憎しみの精霊はさっき俺に『定められた在り様』と言った。おそらく精霊は何者かにこの憎しみの連鎖を強制されている。それはあの鎖のせいではないかと思ったのだ。


 鎖を砕いてガウラを解放すればこの呪いを解くことができるかもしれない。そう思った俺はガウラの攻撃を躱しながら、鎖を砕くためのチャンスを伺った。


 だがガウラの動きはこれまでの俺が経験した以上のものだった。呪いの力がガウラの持つ力を極限まで引き出しているのだろう。俺は攻撃のチャンスを掴めないまま、たびたびガウラの爪の一撃を受けてしまった。


 爪で抉られた体を魔力で癒す。そのたびに強い痛みを感じる。痛みは恐れに変わり俺の動きを鈍らせる。このままでは勝てない。


 そう思った俺は角棍棒を捨てる。棍棒が空中に溶けるように消えると同時に、俺は両拳に赤いドリルを作り出すと、自分からガウラに向かって突進した。


 足に魔力を漲らせ一瞬でガウラの懐に飛び込むと、ガウラの体を縛る鎖目がけてデタラメに拳を叩き込んだ。ガウラは目の前にいる俺を両腕で捕まえるとそのまま締め上げた。ベアハッグだ。


 俺の左腕ごと胴体が締め潰される。ガウラの鋭いナイフのような体毛が俺を切り裂き、体の奥から骨の砕ける嫌な音が響く。凄まじい激痛に絶叫を上げながら、俺は残った右拳のドリルで目の前のガウラの頸に巻き付いた鎖を殴りつけた。


 ドリルが鎖ごとガウラの首を砕く。鎖が赤い記号に変わって消えるとガウラの額の傷が緑色に輝き、ガウラは俺を手放して両手で頭を抱えて苦しみだした。


 ガウラの体の表面がボロボロと崩れるように剥がれていくと、まるで脱皮をするように呪いが発動する前のガウラが現れた。だがそのガウラの体にも赤い鎖が巻き付いている。額の傷の緑の光が弱まる。


 俺が魔力で身体を修復し終わらないうちに、再びガウラが襲い掛かってきた。だがさっきほどの圧倒的な力は感じない。鎖も一回り細くなっているように思った。


 俺は再び魔力の鉈を作り出し、防御に徹しながら体を回復させる。やはりさっきまでのガウラよりも弱くなっている。俺は身体を回復させると、隙を付いて鎖に再び一撃を加えた。


 するとさっきと同じことが起こった。ガウラの体が崩れていく。ガウラの中から現れたのは『成り上がり』を果たす前の普通のゴブリンのガウラだった。体に巻き付いている鎖はまた一層細くなった。


 だが俺の体にも異変が起こる。突然魔力が使えなくなったのだ。ガウラが『成り上がり』をする前に戻ったことで、俺も魔力を失くしたと無意識に思ってしまったようだ。


 俺はガウラに素手で飛びかかっていく。ガウラは爪で俺を引っかき、手足を振り回して俺に攻撃する。素手の人間とゴブリン、どっちが強いかって?


 そんなのゴブリンに決まってる。俺はあっという間に組み伏せられ、ガウラにボコボコに殴られた。俺のだんご鼻がつぶれ、前歯が折れて、瞼が腫れる。


 だが俺は手で赤熱化した鎖を掴むと、力任せに引きちぎろうとした。俺の手が鎖の熱で焼ける。俺はガウラに殴られながら、魂の力で傷を再生させ、必死に鎖に組み付いていた。


 はっきり言って無様な戦いぶりだ。かっこよさのかけらもない。派手な技も見惚れる様な武器もない。だが俺は決してあきらめたりしなかった。ガウラをあきらめない。その思いだけで鎖を全力で掴んでいた。


 朦朧とする意識の中で、俺は俺が勤めていた小学校の女性の校長先生との会話を思い出していた。




「ねえ、後藤先生。いい先生の条件て何だか知ってる?」


「えっと、勉強を教えるのがうまいとか話が上手とか?あ、子供が好きなことですか?」


「そうねえ、それはあったほうがいいことね。でもね、一番の条件はそうじゃないって私は思うわ。」


 俺が首を捻って考えていると、校長先生は俺に諭すように言った。


「それはね後藤先生、子供を決してあきらめないことよ。子供たちの良い所、可能性を信じるの。」


「子供たちをもっと頑張らせろってことですか?」


「それはあなたの思いをただ子供に押し付けてるだけね。そうじゃないの。『この子はもうダメだ』って思わないことよ。」


 この言葉は俺に突き刺さった。教師になって数年が経ち、俺は子供たちのダメなところばかりが目に付くようになっていた。そのころの俺はついつい頭ごなしに子供を叱ってしまい、それを子供の不出来のせいにしてしまっていたような気がする。


 まるでかつて子供のころの俺を嫌っていた小学校の中年女性教師のようだ。あんな先生にだけはなるまいと思っていたのに、いつの間にか自分がそうなっていたことに気付いて俺は愕然とした。


 校長先生は俺の心を見透かすように、俺の目をまっすぐに見て言った。


「あなたには人間の醜さから逃げない強さがある。それはあなた自身が多くの痛みを経験してきたせいね。でもそれは人間を見限ってしまう弱さにもなるわ。」


 俺は校長先生から目を逸らすことが出来ないまま、その言葉を噛みしめるように聞いていた。


「小学校の教師なんてそんなに大きなことができるわけじゃないわ。その子の人生の選択に関わるわけでも、一生の仕事を決める技能を身につけさせるわけでもない。でもだからこそ子供たちの可能性を全力で応援できる立場でもあるの。」


 俺は知らず知らず涙を流し嗚咽していた。いい年こいた大人の男が先生に叱られた子供のようにしゃくりあげて泣いていた。校長先生は俺の肩をしっかりと掴んで言った。


「後藤先生、あなたは子供たちの痛みを理解できる人。できないことの苦しさ、理解されないことの痛みを分かってあげられる人だと私は思う。あなたにしかできないことで、子供たちをしっかり支えてあげなさい。それは『決して子供をあきらめない』ことよ。」




 その会話を思い出した後、おれはガウラの拳を顔面に受けながら、ガウラに向かって叫んでいた。


「俺はお前をあきらめねぇぞ!お前の憎しみも、苦しみも、全部俺のもんだ!!俺が全部飲み込んで、一緒にここから連れて行ってやる!!!」


 俺は折れた歯を再生させると焼けた鎖を両手で掴み、思い切り噛みちぎった。俺の歯と共に鎖が砕け散り、その瞬間ガウラが絶叫を上げてのたうち回った。


 ガウラはやがてぐったりと石の床に横たわったまま、動かなくなった。なんか安らかな顔して寝てやがる。俺は脱力しその場に座り込んだ。


 ガウラの体からすっと半透明の人影が現れた。ふんわりした髪のちょっと困った顔をしたような女性だった。光で出来たドレスみたいなものを着ている。彼女は俺に話しかけてきた。


「私を縛る定めを打ち破る人がいるとは思いませんでした。さあ、私を滅ぼしなさい。そしてこの憎しみの輪を断ち切るのです。」


 いきなり出てきて何言ってんだこの人。この人が憎しみの精霊なのかな?


「私は慈しみの精霊ウカーティア。かつては慈しみと恵みを司っていましたが、多くの憎しみを取り込んでしまい今は力を失っています。私を滅ぼせばこの空間は消え去るでしょう。さあ、私を滅ぼしなさい。」


「えーと、お断りします。」


「な、なぜ!?」


 なぜって話聞いてなかったのか・・・。俺は全部一緒に連れていくってさっき言ったのに。俺は安らかな顔で寝ているガウラを起こす。


 俺とガウラは目を合わせて頷くと、肩を組んでウカーティアに手を差し出す。さすが両方とも俺だ。息ぴったりじゃん。戸惑うウカーティアに俺たちは同時に話しかける。


「「憎しみを救ってあげられなくて長い時間苦しんでたんでしょ。だったら一緒に帰ろう。俺たちと一緒にこれから一杯救って歩こう。」」


 ウカーティアは困ったようにしていたが、やがてゆっくりと頷くと俺たちの手を取った。


「私を縛る定めが無くなったことで、私の中に囚われた憎しみは少しずつ消えていくでしょう。ですがそれには長い時間がかかります。本当にいいのですか?」


「「ああ、俺に出来ることなんてたかが知れてるけど、その中で出来る範囲で良ければあんたのために力を貸すよ。ただ途中で俺たちが死んだらどうなるんだ?」」


「その時はあなたたちから離れて出来るだけ人や魔物に近寄らないようにします。私を縛る定めが無くなったので時間をかけて少しづつ憎しみを昇華していきます。」


「「じゃあ、残りはここを出てからゆっくり聞かせてくれ。皆が心配してくれてる。俺たちの居場所に戻ろう。」」


 俺とガウラの額に半月型の傷が浮かび上がる。それが緑に輝いて俺とガウラの頭上に二つの半月が現れた。やがて二つの光が一つになり満月となると、緑の満月に向かって空間を満たしていた赤い光の渦が吸い込まれていった。


 その後、満月の光は一層強さを増し俺たちの姿を包み込んだ。俺たちは光の中を上へ上へと昇って行った。




「ガウラさん!ガウラさん!!大丈夫ですか!?」


 アリスに揺り動かされて、俺は目を覚ました。アリスはゴブリン語をかなり流暢に話していた。すごいな。


 俺はどうやら眠ってしまっていたらしい。今、太陽は昼を少し過ぎたくらいの位置だ。白仮面と戦い始めてからほとんど時間は経っていない。


 俺の周りには白い砂のようなものが一杯あり、俺はその中に横たわっていた。手のすぐそばに曲刀と短剣が落ちていた。俺は暴走する前とほとんど同じ姿だった。違うのは体の表面にあった黒い鎖の紋様が完全に消えてしまったことだ。


 俺が自分の胸の奥に意識を向けると、黒と赤の二つの魔力の炎があるのが分かった。赤い方にはぼんやりとウカーティアの姿が見える。俺は起き上がりアリスを安心させるために話しかけた。


「心配かけてごめん、アリス。助けてくれてありがとう。アリスのおかげで戻って来られたよ。どこにもケガしてないか?」


「私は大丈夫です。でもシュリちゃんが・・・。」


 アリスは涙目で俺の傍らに横たわるシュリを指さす。俺は慌ててシュリの様子を確認した。


 シュリの胸には鋭い刃物で刺し貫いたような傷が残っていた。口からは大量に血を吐いた跡があった。血の跡はまだほとんど乾いていない。


 シュリの体を触ると温かかった。呼吸を確認する。息をしていなかった。俺は祈るような気持ちでシュリの胸に耳を押し当てた。


 シュリの胸からは何の音も聞こえてこなかった。シュリの心臓は動いていなかった。


 シュリは呆然とする俺の腕の中で、夢見る様な表情のままぐったりと横たわっていた。


 


個体名:ガウラ(後藤 武)

種族名:ゴブリンウォーリア

生息地:暗黒の森

装 備:魔獣の黒角

レベル:1(51)

スキル:突撃L10 格闘L10 短弓術L2 棍棒術L5 登攀L2 潜伏L5 武器防御L6 魔力操作L6 魔力感知L5

魔 法:影隠L5 点火L4 瞬光L3 自己回復L6 身体強化L6 魔力武器創造L6

言 語:ゴブリン語

称 号:真の名を持つもの

状 態:狂戦士の呪縛→狂戦士の魂


「狂戦士の魂」の効果

 狂戦士の呪縛が解けることによって、狂戦士の力を自在に操ることが可能になった状態。任意によって発動・解除が可能だが、呪いの力による魔力回復がないため、長時間の発動はできない。

読んでくださった方、ありがとうございます。

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