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ゴブリン先生、荒野を行く  作者: 青背表紙
3/154

3 暗黒の森

家族に文が詰まりすぎて読みにくいとダメ出しされました。改行を増やしてみます。

 ここは暗黒の森と呼ばれる深い森だ。魔物の好む闇の気が満ちているため、多種多様な魔物が生息している。


 俺はこの森で生まれたゴブリンだ。名前などはない。ゴブリンは暗黒の森に住む魔物の中では最も弱い魔物だ。


 力も弱く、知能も低い。他の魔物に捕食されることも多く、単体で生活することはできないため、群れを作って移動しながら生活している。


 俺もそんな群れに属するゴブリンの一人だった。子供からやっと一人前に成りたてのオス。群れの長であるゴブリンリーダーに率いられ、森を進んでいるときに、運悪くオークに遭遇してしまった。


 オークは豚の顔を持ち、ゴブリンの数倍の体格と剛腕を誇る、ゴブリンの捕食者だ。


 ゴブリンリーダーは群れを守るため、群れのメスと子供たちを逃がし、オスを率いてオークに立ち向かった。


 しかし、正面からぶつかっても勝てる見込みのない相手だ。オスたちが必死に足止めをしながら、とにかく遠くに逃げるしかない。


 最弱のゴブリンだが、オークよりも優れている点がいくつかある。それは臆病ゆえの探知力の高さと闇の加護の力だ。


 ゴブリンは大きな耳を持ち、遠くの音や気配を正確に感じることができる。また闇の加護を受けているため、暗闇の中でもはっきりとものを見ることができる。その上、小さい体を生かして、闇の中に潜むことも得意だ。


 強力な魔物を避けて群れが移動しているとき、オークに出会ったのは、もうそろそろ夕闇が迫ろうとしている刻限だった。


 リーダーはメスや子供たちにオークが向かわないよう牽制しながら、オスたちに付かず離れず逃げ回るよう指示を出し、森の中を巧みに移動していた。


 だが、やはりオークを完全に離すことは難しい。そのため、オスの中でも力の弱いものが狙われることになる。


 それはたいていの場合、年老いて走る力の衰えたオスか、一人前に成りたての未熟なオスだ。


 このオークが狙ったのは未熟なオス、つまり俺だった。


 巨大な棍棒を振るいながら、俺を追いかけて走る。オークはその体型に似合わず、凄まじいスタミナを持ち、移動の速度も速い。


 障害物のない平地であったら、俺はあっという間に棍棒に潰され、オークにバリバリとかじられていたことだろう。


 幸いにして、障害物の多い森であったが故に、俺はオークの追撃を紙一重でかわし、逃げ回っていた。


 だがもともとのスペックの差は埋めようがなく、オークの振るった棍棒は俺の頭を掠めたのだ。その勢いだけで茂みに吹き飛ばされる俺。


 直撃していたら、頭が吹き飛んでいたであろう一撃が頭を掠めたとき、俺は唐突に人間だったころの記憶を取り戻したのだ。




 人間の記憶とゴブリンとしての記憶が一つになった俺がはじめに思ったことは、群れに帰らなくてはならないということだった。


 オークから必死に逃げ回るうちに、ずいぶんと森の奥へと入り込んでしまったようだった。森は深くなるほど闇の気が濃くなり、生息する魔物も強力なものになる。ゴブリンは森の外縁部を生息域にしているため、ここは俺にとっては危険地帯なのだ。


 ただ、メスや子供を連れた群れが移動できる場所はそれほど多くない。今から闇に紛れて移動すれば群れに帰ることは難しくはないだろう。そうと決まればさっそくこの穴から出なくては。


 そう思って、立ち上がってふと穴の隅に目をやると、黒光りする棒のようなものが見えた。


 何かと思って近づいてみると、それは先のとがった角だった。


 長さは大体60cm、太さは一番太い根本が直径4㎝くらいだろうか。日本刀のようにわずかに湾曲している。表面はつるつるしていて、磨いた黒曜石のように輝いていた。


 手に取ってみるとずっしりと重く、恐ろしく硬いように思う。魔獣の角だろうか?


 ゴブリンの俺ならば何の関心も持たなかったであろう角だが、人間の俺にはこれは身を守るために必要なものであると思えた。


 持っていきたいが、生憎ここは穴の底だ。持ったまま壁を上ることはできない。そこで口に咥えて上ることにした。

 

 ここで耳まで裂けた大きな口と4本の牙が大活躍だ。人間のアゴの力では到底できなかっただろう。


 また穴の壁は微妙にオーバーハングしていたが比較的傾斜の緩やかなところを探し、爪と腕力を使って何とか上ることができた。


 人間の知恵とゴブリンの力の合体パワーだ。うーん、オラ、ワクワクすっぞ。


 穴の外に出ると、鬱蒼とした木の枝の隙間から、青い月が出ているのが見えた。青い光に照らされた森は恐ろしくも美しかった。


 しかし、この光では持っている角が光を反射して目立ってしまうかもしれない。俺はあたりの土を掘り返し、角の表面を泥で汚した。


 月を見ればゴブリン時代の記憶から、大体の方角が分かる。俺は他の魔物に出会わないよう警戒しながら、森の外縁部を目指して移動を始めた。

 


個体名:なし(後藤 武)

種族名:ゴブリン

生息地:暗黒の森

装 備:魔獣の黒角

レベル:1

スキル:登攀L1

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