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ゴブリン先生、異世界を行く  作者: 青背表紙
27/154

27 ヤミリンゴ

またモノづくり回です。いろいろ矛盾があるかもしれません。教えていただけるとありがたいです。

 翌日、俺たち5人は俺のねぐらの周りに集まっていた。シュリなんか一番にやってきて、他の3人を待っていたくらいだ。可愛い奴め。


「ねえねえ、今日は何して遊ぶの?」


 別に遊んでるわけじゃないんだけど。いや、遊びみたいなものかな?皆でこうしてるのは楽しいし。


「今日はヤミリンゴの美味しい食べ方を皆で考えようと思う。」


 土器が焼きあがるまでは、酒造りの具体的な作業はできない。だから、まずは栄養満点だが、味はいまいちのヤミリンゴをどんなふうに加工できるのか試してみる。


 性質が分かれば醸造の参考になるかもしれないしな。


 途端に嫌そうな顔をするシュリ。テンションもダダ下がりのご様子。何だよその顔は。


「だって、あれ苦いし美味しくないでしょう?」

「だから、美味しくする方法を見つけようってことさ。巫女姫様たちは何か知らないのか?」

「私たち、あの実は食べないもの。」


 そうだった。巫女姫たちは闇の気を直接体内に取り込むから、食事をしないってグァン様が言ってたっけ。いろいろ規格外の存在である。


 じゃあ、トイレとかも行かないのかな。シュリに聞いたら「バカぁ!」って怒られた。いや、だってすごくいい肥料とかになるかもしれないじゃん?


 ちなみに普通のゴブリンは森の中のいろんなところで用を足す。終わったら柔らかい木の枝や葉っぱで拭いてきれいにする。近くに水辺があれば洗い落とすこともある。ゴブリンは意外ときれい好きなのだ。


 用を足した後は、軽く穴を掘って埋めておく。するとそこからは闇の気を好む植物などが生えてくる。ゴブリンの体には濃い闇の気が満ちているからだ。


 草むらなどで用を足しているゴブリンがいるときは近寄らないのがエチケットとされている。ゴブリンは気配察知が得意なので用足し中、急に草むらや木陰で鉢合わせるなんてことはない。


 きちんとしたトイレを作らないのは、オーク避けのためだ。鼻のいいオークは匂いでゴブリンの居場所を見つけることがあるからな。


 安心して、清潔な環境で用を足せるというのはそれだけ文明度が高いと言えるのかもしれない。


 さて巫女姫たちの知識が当てにならないとすると、いろいろ試してみるしかない。まずは渋さをなんとかしたい。


 渋を抜いて食べる定番の果物と言えば、干し柿だ。干し柿は下宿の大家さんだった富さんが毎年作っていたので、俺も一緒に手伝ったことがある。


 でもあれって、柿を煮沸しないとカビが生えてくるんだよね。土器が出来上がるまではお湯も沸かせないので、今日はパス。


 まずは食べ方をいろいろ試してみようと思う。


 骨で作った小さなナイフを使って、ヤミリンゴの皮をむいていく。俺がリンゴをクルクル回しながら皮をむく様子を、他の4人は面白そうに見ていた。


「へー、器用なものね。意外だわ。」

「こいつ、いろんなもの作るのがうまいんですよ。このナイフもこいつが作ったんですよ。」


 何故か自慢げに言うハヤアシ。まあ、そう言われるのはうれしいけどね。皮をむいたヤミリンゴは、本当に洋梨みたいな感じだ。


 試しに一口かじってみる。ん、あんまり渋くないぞ?水で薄めすぎたスポーツドリンクみたいな味だ。


 むいた皮の方を拾って食べると、ものすごく渋かった。渋みがあるのは皮の方なのか。一つ発見である。皆にも食べてもらう。


「これは渋みがなくて食べやすいね!」

「でもあんまり美味しくはないわね・・・。」


 加工するときは皮を取り除いたほうがよさそうだ。


 次に皮をむいたヤミリンゴを手で絞って、果汁を大きな木の実の殻で作った小さなボウルくらいの器にためる。水気タップリなので、一つ絞っただけで器半分くらい果汁が取れた。


 これも飲んでみた。まずい。スイカの搾り汁を水で薄めたような味だ。これを酒の原料にしようと思ってたんだけど、大丈夫かな?皆にも勧めてみた。


「・・・実のままの方がうまいかな。」

「私は、遠慮しとくわ。」


 せっかくなので、果汁を絞った器をいくつか準備しておくことにした。このままでも発酵が進むか実験するためだ。


 今度は実を火で焼いてみることにする。焼きリンゴって定番だよね。ただオーブンとかはないので、焚き火で焼くしかない。


 俺が石を使って簡単な囲いを作り焚き火を始めると、シュリがものすごく驚いた。やっぱり巫女姫も火は使わないみたいだ。木を守る巫女姫の前で、火を使うのは大丈夫なのかと心配したが、そういう決まりは特にないらしい。


 まあ、たぶん俺が初めてのケースだろうから、これから決まりができるかもしれないけど。使用禁止にならないように気を付けようと思う。


 焼き方も色々変えてみる。皮をむいたものとむかないものをそれぞれ、枝に刺してあぶる。あと葉にくるんで土に埋め蒸し焼き。さらに焼けた石の上で焼く。


 俺が説明しながら準備を進めていると、皆が興味深そうに見ている。時々質問なんかもしてくれて、教室で理科の実験をしてるみたいだ。


 実験の結果、ヤミリンゴは熱を加えると、ねっとりした食感になることが分かった。皮を付けたまま焼くのは大失敗。渋みが実全体に広がり酷い状態になる。


 皮をむいたヤミリンゴは味気ないサトイモみたいだった。でも生で食べるよりはちょっと旨味があるような気がする。そのままだと物足りなくて、塩が欲しくなる味だ。


「あ、これ、私好きかも!」


 シュリは皮をむいて蒸し焼きにしたヤミリンゴが気に入ったみたいだ。石焼き芋っぽいもんな。女の子って芋好きだよなー。その日はみんなでヤミリンゴを食べ、そのままお開きになった。


 片付けしてるときになんか甘い匂いがするのに気づいて周りを探してみたら、最初にむいたヤミリンゴの皮が匂いのもとだった。


 ほんのり甘い匂いがするが、口に含んだらやっぱり渋かった。このまま乾燥したら、甘くなるのでは?俺は皮を集めて、枝に吊るしておくことにする。


 それから4,5日は作業を進められなかったので、5人で集まって組手をしたり、都市の中を探検したりした。


 ハヤミミたちは最初、シュリに気を遣っているようだったが、今ではもうすっかり俺の群れの仲間みたいに馴染んでる。


 そうこうするうちに土器が乾燥してきたので形を整え、焚き火で素焼きする。ハヤアシとカケミミが作ったものはこの時点で半分くらいひび割れてしまった。粘土の継ぎ目に空気や水分が残っていたみたいだ。野焼きだから火加減が難しいんだよね。オオグチが作ったものは一つもひび割れなかった。オオグチの意外な特技を発見した。


 素焼きの鍋ができたので、簡単な煮炊きができるようになった。ヤミリンゴを煮沸し、干し柿みたいに木の皮で作った紐でつないで、枝に吊るす。ついでに実も茹でてみたが、やっぱりサトイモみたいになった。塩とダシがあれば芋汁が出来そうなんだけどなー。ダシ用に干し魚とか作ってみようかな。


 素焼きができたので、今度は木灰を水で溶いた液を内側につけて、もう一度高い温度で焼く。内側から液体が漏れないようにするためだ。素焼きの土器だとどうしても中の水が沁みてしまう。今回は保存用の甕や壺が必要なので、内側だけでも漏れないようにしたかったんだ。


 ほんとは焼き窯を作るほうがいいんだろうけど、この都市遺跡内では無理なので、石を積み重ねて作った簡易のかまどで焼く。


 それでもなかなか温度が上げられずに困っていたら、シュリが《闇の壁》を応用した結界魔法で周囲を囲ってくれた。おかげで何とか高温を出すことができ、内側をガラス質にすることができた。


 すごく苦労したけど、皆で頑張って準備は整ってきた。特にシュリにはすごく助けられている。もう完全に頭上がんないな。でもこれでいよいよ酒造りを始めることができる。


 頑張ってくれた皆のためにも、美味しいものをいっぱい作って、群れの皆を喜ばせてあげたい。土器の完成を喜び合う友達の笑顔を見ながら、俺はそう決意したのだった。




個体名:ガウラ(後藤 武)

種族名:ゴブリンカースドソルジャー

生息地:暗黒の森

装 備:魔獣の黒角

レベル:4(34)

スキル:突撃L7 格闘L8 短弓術L1 登攀L2 潜伏L3 武器防御L5 魔力操作L5 魔力感知L3

魔 法:影隠L3 点火L3 瞬光L1 自己回復L5 身体強化L5 魔力武器創造L5

言 語:ゴブリン語

称 号:真の名を持つもの

状 態:狂戦士の呪縛(封印)

読んでくださった方、本当にありがとうございます。

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