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第07話 教室でスキル考察

 委員長が扉を閉めた途端、教室内が一気に騒がしくなった。

 戦うのか、逃げるのか。自分たちのPTはどうすべきか、教室のあちこちで大激論が繰り広げられている。


 そんな中、俺たち3人はスキル編成に頭を悩ませていた。

 PTの方針自体は、話し合いをするまでもなく最初から決まっている。他人に運命を委ねられるほど俺たちは図太くない。

 こういう自然な意思統一は幼馴染みPTの強みだろう。


 舞が言った。

「残り3ポイントしかない翔太が攻撃手段を得るには、『火炎魔法Ⅰ』か『爆裂魔法Ⅰ』のどちらかを取得するしかないわけよね」


 やっぱりそういう話になるか……。

 無駄とは知りつつ俺は自己弁護を試みる。

「それはあれだ。俺には『詠唱省略』があるからさ、威力はレベルⅠでも連射ができるだろ。これ、実は結構 強くないか?」

「3発でMPが足りなくなるじゃないの。魔力供給を受けても6発で終わり。『火炎魔法Ⅰ』の説明を見ると、6発でも威力はレベルⅢ1発分に及ばないわ。『爆裂魔法Ⅰ』も同じ」

「そ、そうか?」

 改めて攻撃魔法ふたつを確認してみる。


射程重視タイプ(射程30メートル・詠唱30秒)

爆裂魔法Ⅰ 3P(人間の手足を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)

爆裂魔法Ⅱ 5P(人間の全身を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)

爆裂魔法Ⅲ 7P(人間数人分を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)


威力重視タイプ(射程9メートル・詠唱30秒)

火炎魔法Ⅰ 3P(人間の全身くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)

火炎魔法Ⅱ 5P(人間数人分くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)

火炎魔法Ⅲ 7P(学校の教室くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)


「んー、爆裂魔法はⅠとⅢでも そこまで大きな差はないような気もするけどな」

「『爆裂魔法Ⅰ』と『火炎魔法Ⅲ』の威力を比べたら桁違いでしょ。こんなんじゃ、まともな戦力にはならない。まあ、『爆裂魔法Ⅰ』でも手足が吹き飛ぶほどの威力なんだから、頭や胴体に命中すれば1発で倒せる確率も低くはないでしょうけど、1匹ずつではね。普通に考えれば、まとめて焼き払える『火炎魔法Ⅲ』の方が遙かに使えるわ。なにしろ敵は一万匹なんだから」


「つばさか舞のどっちかが『無限魔力』を取った上で『魔力供給』も取ればMPの問題は解決だけど、必要なスキルポイントが9+2で合計11になるからギリギリ不可能なんだよな」

「レベルアップすれば ひとりで11ポイント分のスキルを取得できるから、一応 可能にはなるけど、それまでが問題ね。翔太というお荷物を抱えている上に、もうひとり無力なパーティーメンバーを作ることになるから、残りのひとりで900匹分の経験値を稼ぐ必要がある。非現実的よ」


「つばさと舞がふたりでそれぞれ『爆裂魔法Ⅲ』と『火炎魔法Ⅲ』を取得して、んでもって頑張ってレベルアップして、俺のスキルを再選択するとか、どうだ?」

「レベルアップしたらスキルポイントを増やすべきよ。再選択なんて勿体ないわ」

「…………」


 却下されるのも当然だな。

 自分で言っておいてなんだが、レベルアップすることでようやく他のPTと同じになれるだなんて、まったくアホらしい話だ。


 そもそも、俺たちのPTがレベルアップできるとも限らないし。

 レベルアップ込みで考えるのはやめるべきか。


 ずっとスマホを弄っていたつばさが唐突に顔を上げた。

「『詠唱省略』にも使い道はあるかもしれない」

「と言うと?」

 俺は期待を込めて促す。


「モンスターも1000匹目からはスキルを使えるのだから、『火炎魔法Ⅲ』を撃ってくることもあるはず。この時、翔太くんが無詠唱で『爆裂魔法Ⅰ』を撃てば、モンスターの『火炎魔法Ⅲ』を阻止できる。火炎魔法の詠唱は30秒。モンスターの詠唱を目で確認してからでも充分に間に合う」

「そうか! たとえるなら、手榴弾を投げようとした敵兵を狙撃して味方を救う役ってことだな!」

 にわか軍事オタクの俺は中途半端な例を出して喜ぶのだった。


「ちょっと待って」

 舞が口を挟む。

「あたしもひとつ、思い付いたことがあるわ」


「まさか舞。お前も、俺を最強にするための案があるってのか?」

「最強かどうかは知らないけど、聞きたい?」

「聞きたい!」

 直球を投げ返すと舞は一瞬だけ怯んだ。


 しかしすぐドヤ顔になる。

「しょうがないから教えてあげるわ。あたしが注目したのは身体強化スキルよ」

「ふんふん」

 さっそく確認する。


身体強化Ⅰ 3P(身体能力が上がるよ!)

身体強化Ⅱ 5P(身体能力がとても上がるよ!)

身体強化Ⅲ 7P(身体能力がとてもとても上がるよ!)


「それでそれで?」

「どの程度まで身体能力が上がるのかは不明だけど、攻撃魔法を回避できるくらい速く動けるとしたら、どう? モンスターが『身体能力Ⅲ』を取得してたら厄介じゃない?」

「厄介だな!」


「普通なら、次の攻撃魔法を撃つまでに30秒 掛かるし、次もまた外れるかもしれないでしょ。そこであんたが無詠唱の『爆裂魔法Ⅰ』を連発するわけよ。『魔力供給』を込みで考えれば6連発。目標とその周りに散らして連射すれば、モンスターがいくら速く動けたって、どれかは当たる」

「そうか! たとえるなら、威力の高い単発銃よりも、たくさんの弾をバラ撒く散弾銃の方が命中させやすいってことだな!」

「その例えが必要なのかどうかは分からないけど、まあそんなとこね」


「なんだよなんだよ、『詠唱省略』も結構 使えるじゃないか」

「とはいえ、『魔力供給』は詠唱が長いから、6連射とするには無理があるわ。3連射+3連射と考えるべきかもね」

「詠唱が長いって言うけど、何秒だっけ? 多少なら状況に合わせて先に詠唱を開始するという手も――」

「30秒よ」

「長すぎるだろ……」

「それくらい自分で確認しなさいよ」


魔力供給  2P(自分が空になるまでPTメンバーに秒間100のMPを譲るよ!余りは消滅!詠唱30秒!)


「3連射×2でも、一万匹目のボスと戦う時は主力になれるんじゃないか? 『詠唱省略』と『爆裂魔法Ⅰ』の組み合わせはタイマンだと最強のような気がするぞ。狙撃銃と散弾銃の役割を兼ねてるんだからな」

「最強は言い過ぎ。瞬間的には強くても、9999匹を倒すまでの段階では完全に火力不足だし。さっきの狙撃とか、撃ち漏らしの緊急処理とか、そういうサブ的な役割なら担えるけどさ」

「それってサブ的か? 俺には、いざという時の切り札的存在に思えるけど」

「あ、そ。勝手に思っておけば?」


「俺が取るのは『爆裂魔法Ⅰ』で決まりか? 『火炎魔法Ⅰ』の方は考えなくても良いのか?」

「あんた馬鹿なの? つばさの言っていた狙撃の役目を果たすには、射程距離が重要でしょ。火炎魔法は9メートル。爆裂魔法は30メートル。どちらを取得すべきかは明らかよ」

 舞はつばさに視線を送った。同意を求めているらしい。

 つばさは無言で軽く頷いた。同意したらしい。


「あとは、舞とつばさのスキルだな」

 俺の単純火力が不足している以上、ふたりのうちのどちらかには『火炎魔法Ⅲ』を取ってもらった方が良いんだろうな。

 そうなると選択肢が かなり限られてしまうけど。


 舞は言った。

「いずれにしろ、ちゃんとした使い方が判明していないスキルがまだ あるかもしれないわ。『詠唱省略』の狙撃や散弾みたいにね。そっちを考えるのが先じゃない?」

「じゃあ もういちどスキル一覧を見直してみるか……って、ん?」


 操作の最中、振動と共に画面が勝手に切り替わり、『メール着信!』と表示された。


 次の瞬間には、騒がしかった教室から話し声が途切れ、バイブの振動音が聞こえてくるだけになった。

 全員のスマホが震えているようだ。


 メール内容は極単純だった。

『襲撃5分前だよ!』


 これが予鈴のような効果を生み、クラスメイトの大半は教室を出て、それぞれの目的地へ向かった。

 戦うPTは正門へ。封鎖するPTは裏門へ。どちらも拒否するPTは屋上へ。


 教室に残り続ける奴らも居たが、泣いたり頭を抱えたりしていて、ほぼ戦力外のメンツと言えた。

 好きにすると良いさ。屋上へ避難しようが教室に篭もっていようが、あまり違いはないだろう。


「あたしたちも行くよ」

 リーダー気取りの舞に先導されて俺たちは教室を後にした。

 まだ3人分のスキル編成は決まっていないが、とりあえず校舎の出口に向かう。

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