第04話 モンスター情報
しばらく無言でスマホを弄っていた俺たちだったが、やがて舞が、感想というか愚痴みたいなものを漏らし始めた。
「パッシブ系は、使えないスキルが多いのよね。特に『詠唱省略』と『無限魔力』。サブスキル的な位置付けのはずなのに、消費ポイントが多すぎるわ。他の強力なスキルが取れなかったら意味がないじゃないの。『多重詠唱』も何のためにあるのか分からないし」
「なになに、ちょっと待てよ」
舞が言及したスキルは3つだったな。
画面に表示させよう。
多重詠唱 5P(複数同時に魔法が使えるよ!無制限にね!)
詠唱省略 7P(0秒で攻撃魔法を撃てるよ!無詠唱だね!)
無限魔力 9P(MPが減った瞬間に全回復!無尽蔵だよ!)
俺たちは ひとり10ポイント分のスキルを取得できるわけだが、『詠唱省略』は7ポイントを消費し、『無限魔力』は9ポイントを消費する。
舞の言う通り、いくらなんでも多すぎる。
貴重なポイントを割いてまで こんなのを取るアホなんて居るのだろうか?
舞はさらに言う。
「『魔法強化』に至っては意味不明よ。魔法の威力を上げたいのなら、攻撃魔法のレベルを上げれば良いだけ。それなら2ポイント増で済む。5ポイントの『魔法強化』なんて取ったら、3ポイントの損になるでしょ」
魔法強化 5P(ワンランク上の魔法攻撃!威力がⅠレベル上がるよ!)
確かに。
スキルを確認しながら俺は納得する。
たとえば、爆裂魔法を取得する場合。
爆裂魔法Ⅰ 3P(人間の手足を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)
爆裂魔法Ⅱ 5P(人間の全身を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)
爆裂魔法Ⅲ 7P(人間数人分を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)
『爆裂魔法Ⅱ』と『魔法強化』を組み合わせれば、『爆裂魔法Ⅲ』の威力を得られるが、スキルポイント5+5で10を消費してしまう。
なら最初から『爆裂魔法Ⅲ』を選択すれば良いというわけだ。これだと7ポイントで済む。
いや待てよ?
「なあ。『爆裂魔法Ⅲ』と『魔法強化』を取得すれば威力はレベルⅣってことになるんじゃないか? 『魔法強化』はそのためのスキルなんだとしたら どうよ?」
この思い付きには自信があったんだけど、つばさに「それは難しい」と否定されてしまった。
「なんで難しいんだ?」
「スキルポイントが合計12も必要になる」
「だから、PTのレベルを上げれば良いんだよ」
言いながら俺はスマホを弄った。
事前にチェックしておいた『レベルアップについて』という項目を選択し、つばさと舞に画面を見せる。
・レベルは個人単位ではなくPT単位で設定されているよ!
・モンスターを900匹 倒すとレベル2になるよ!
・モンスターを9000匹 倒すとレベル3になるよ!
・レベルアップすると、3つの中から特典を選べるよ!
・一、PTメンバーをひとり増やせるよ!
・二、スキルポイントをひとりだけ1増やせるよ!
・三、スキルをひとりだけ再選択できるよ!
・レベルアップ特典は いつでも選べるよ! 後からでもいいよ!
舞が肩をすくめる。
「その辺はあたしも確認してるわ。けど、3人だけで9000匹も倒すとか無理があるでしょ」
「そこはなんとか頑張ってさぁ」
「非現実的よ。これを設定した人はあたしたちを 煽ってるつもりなんじゃないの。下3つのパッシブの説明文に『無』が縦に3つ並んでいるのも、なんかそんな感じがするじゃない?」
「そんなのあったか?」
確認のため画面を戻す。
多重詠唱 5P(複数同時に魔法が使えるよ!無制限にね!)
詠唱省略 7P(0秒で攻撃魔法を撃てるよ!無詠唱だね!)
無限魔力 9P(MPが減った瞬間に全回復!無尽蔵だよ!)
無制限と無詠唱と無尽蔵のとこだな。
作った奴の遊び心が表れているに過ぎないようにも思えるが、どうなんだろう。煽られてるのか、俺たち。
つばさが言った。
「あるいはただの数合わせかもしれない」
「数合わせ? どういうことだ?」
「スキルの数が増えれば、スキル一覧の見栄えが良くなる。そのために用意されただけで まともに使えないスキルなんてゲームには珍しくない。パッシブスキルの大半はその類の可能性がある」
「ああ、それな」
いかにも ありそうだ。
舞が話を戻す。
「スキル効果だけを見れば、どれも使い道はあると思うけど、ポイントが見合ってないのよね。スキルポイントもそうだし、MPもそう。消費MPがこんなにも激しいのに最大MPが10しかないって、ちょっと酷すぎない? これを考えた人はバランス感覚が欠如しているとしか思えないわ」
「んー」
俺は ふたつのスキルを画面に表示させた。
魔力供給 2P(自分が空になるまでPTメンバーに秒間100のMPを譲るよ!余りは消滅!詠唱30秒!)
魔力吸収 2P(相手が空になるまでPTメンバーに秒間100のMPを貰うよ!余りは消滅!詠唱30秒!)
「一応、『魔力吸収』と『魔力供給』というスキルがあるぞ」
「そんなことは分かってるわ。でも、吸われた方はMPがゼロになっちゃうでしょ。それに、『余りは消滅』ってことは、自分の最大MPを超えた分は吸収しても意味がないってことじゃない? 吸った分は消える、と。なら、かなり損が出るでしょうね」
「とすると、秒間100って設定は、その辺りを強調してる意味があるのか? 一方は即座に満タンで もう一方も即カラッケツとか言われるとさ、途中で止めて調整するのは無理だってことが誰でも分かるよな」
「それもあるでしょうし、詠唱の30秒さえ終わればMPの受け渡しは一瞬で済むっていう意味も含んでるんじゃないの。その辺の余計な心配はしなくても良いって言いたいんだと思う」
「そういうことか」
「とにかく、『魔力吸収』と『魔力供給』だけじゃMP不足の根本的な解決にはならないわ」
「うーん……」
やっぱり、さっき つばさが言っていたように、PT同士の連携が鍵を握るのだろうか?
とはいえ、いくら上手いこと連携しても、相手が一万匹では どうにもならんような気がする。
『モンスター情報』を確認してみるか。
モンスターランク1(1匹目~999匹目)
・身体能力は人間と同じくらいだよ!
・PT機能もスキルも使えないよ!
・全員 素手だよ!
・正面突撃で人間を倒すことしか考えてないよ!
・言葉は通じないよ!
・倒されると消滅するよ!
・モンスター同士で連携を取ったりはしないよ!
モンスターランク2(1000匹目~9999匹目)
・ランク1との主な相違点のみ言及するよ!
・剣とか槍とか弓とか武器を持っているよ!
・弓持ちは各自一回だけ遠距離から矢を放ってくるよ!
・撃った後は他のモンスターと同じく正面突撃するよ!
・ランク2以降は人間と同じスキルを取得しているよ!
・取得しているスキルはモンスター次第だよ!
・スキルポイントは9Pしかないよ!
・スキルの射程をモンスターは正確に把握しているよ!
・アクティブスキルは消費MPに関係なく1回しか使えないよ!
・使った後は他のモンスターと同じく正面突撃するよ!
モンスターランク3(10000匹目)
・ボスだよ!
・ランク2との主な相違点のみ言及するよ!
・スキル『身体強化Ⅲ』を標準装備しているよ!
・それとは別に10ポイント分のスキルを取得しているよ!
・知能は人間並みだよ!
「…………」
目を通しているうちに溜息が出そうになった。
いやー、武器はヤバイだろ。
俺ら普通の高校生なのに。
ランク1のモンスターは素手オンリーだから、一応の配慮はされてるのかもしれんが。
しかし、あれだな。
色々な設定を見ているうちに、なんか、本当にモンスターが攻めてくるような気がしてきた。
仮に攻め込まれたりしたら、俺たちは何もできず一方的に虐殺されてしまうんじゃないか?
もしそうなったら、学校中が生徒の死体で埋め尽くされたりするわけか……。
気分が悪くなってきた。
これ以上は考えない方が良さそうだ。




