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第03話 スキル一覧

 ばん、と舞が手の平で机を叩いた。

「なんでアンタが仕切ってんのよ!」


「ええ?」

 スキルを確認しよう的なことを言っただけなのに、こんなリアクションが来るなんて思わなかった。

 元から舞はこういう奴なんだけど、この期に及んでそれを曲げないとはな。


 しょうがないから こっちが折れることにする。

「こりゃすいませんねえ。代わりに舞さんが仕切ってくれますかい?」

「なによその言い方は!?」

 と怒鳴りながらも舞は嬉々として仕切り始める。

「まずは『スキル獲得手順』を見ていくからね」

「はいはい」

 いちいち反発していたら話が進まない。ここは大人しく従おう。


 自分のスマホを弄り、『スキル獲得手順』という項目を選択すると、例のハイテンションな文章が表示された。


・まず3人でパーティー(PT)を作ってね!

・PTを設定したらスキル一覧が見られるよ!

・3人PTであることは必須だよ! 2人とか4人とかは駄目だよ!


「このパーティーメンバーという欄に3人分の名前を入力すればPTが出来るわけね」

 舞はそう言って俺とつばさをチラ見した。


「じゃ、さっさと入力しとこうや」

 お互いの意思を確認するまでもなく俺はこの場の3人の名前を入れていく。

 こいつら、他に組む奴なんて居ないだろうからな。舞はこんな性格だし、つばさは寡黙だし。

 俺も他にアテなんか無いんだけど。


 それにしても、3人必須というのは なかなか厳しい条件だな。

 あぶれる奴も出てくるんじゃないか?

 多いと駄目なのは分かるけど、2人以下も駄目ってのはどうなんだ。少ない人数で編成する分にはこっちの勝手で良いと思うんだが。

 融通の利かない設定だ。


「お?」

 入力の最中、いきなりスマホが震えた。

 と同時に、空欄が自動的に全部埋まった。ちゃんと3人の名前が入っている。その下には『PT作成完了!』という文字表示。

 スマホの振動は数秒で止まった。


「まだ途中だったのに、なんかもう出来てるんだけど……」

 と、舞。

 俺と同じ状態のようだ。


 つばさが言った。

「たぶん、私が設定を終えたから」

「ああ、誰かひとりが自分のスマホに入力するだけで良かったのか」


 俺は単純に納得しただけだったが、舞は別の感想を持ったようだった。

「これだとさ、全員の同意が無くても勝手にPTを作れちゃうよね」

「そうかもしれんけど、別に良いだろ。このメンバーで決まったんだから」

「あたしたちは良いとしても、他の人はどうなのかってこと。事前の合意形成は大事でしょうよ」

「お前が言うのか、それ」

「なによ!」


 なんて言い合いながら次のページに進む。

 『スキル一覧』という項目が出てきた。

 それを選択する前に、添え書きがあるので目を通しておこう。


・PT内で重複が無いようにスキルを選んでね!

・各スキルには取得ポイントが設定されているよ!

・スキルは ひとり10ポイント分まで選べるよ!


 あれか。

 ゲームとかで、好きに割り振れるポイントを最初に与えられるようなもんか。

 こういうのって、自由度が高いように見えても、実用的なスキルは限られていたりするんだよな。戦闘バランスを考えると仕方ないけど。

 重複禁止という条件からして、これにもそういう匂いがする。


 『スキル一覧』を選択したら画面が切り替わった。

 22個のスキルがずらりと並ぶ。


 説明文によると、スキルは2種類あるらしい。

 ひとつめはパッシブスキル。取得すれば常に効果がある。

 ふたつめはアクティブスキル。使った時だけ効果がある。


 パッシブスキルから見ていこう。

 左から順に、スキル名・取得ポイント・スキル内容が記載されているようだ。


身体強化Ⅰ 3P(身体能力が上がるよ!)

身体強化Ⅱ 5P(身体能力がとても上がるよ!)

身体強化Ⅲ 7P(身体能力がとてもとても上がるよ!)

魔法耐性  3P(敵の魔法が直撃してもダメージは70%カットされるよ!)

肉体修復  3P(手足が千切れ飛んでも大丈夫!1秒で生えてくるよ!)

危険感知  5P(不意打ち対策は万全!PT全員の危険を数秒前に察知できるよ!)

魔法強化  5P(ワンランク上の魔法攻撃!威力がⅠレベル上がるよ!)

多重詠唱  5P(複数同時に魔法が使えるよ!無制限にね!)

詠唱省略  7P(0秒で攻撃魔法を撃てるよ!無詠唱だね!)

無限魔力  9P(MPが減った瞬間に全回復!無尽蔵だよ!)


 うーん……。

 ひとり10ポイント分までしか選べないのに、各スキルの取得ポイントがずいぶん多いな。

 これだと、2つか3つのスキルを取ったら終わりじゃないか。

 パッシブスキルだからなのか? 常に効果があるから、その分だけポイントが必要とか?


 アクティブスキルの方も見てみよう。

 こっちは4種類のタイプに分けられている。


射程重視タイプ(射程30メートル・詠唱30秒)

爆裂魔法Ⅰ 3P(人間の手足を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)

爆裂魔法Ⅱ 5P(人間の全身を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)

爆裂魔法Ⅲ 7P(人間数人分を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)


威力重視タイプ(射程9メートル・詠唱30秒)

火炎魔法Ⅰ 3P(人間の全身くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)

火炎魔法Ⅱ 5P(人間数人分くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)

火炎魔法Ⅲ 7P(学校の教室くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)


高速防御タイプ(射程9メートル・詠唱9秒)

氷結魔法Ⅰ 3P(氷の板を作れるよ!10秒で溶けるよ!重ね掛けできるよ!)

氷結魔法Ⅱ 5P(氷の盾を作れるよ!20秒で溶けるよ!重ね掛けできるよ!)

氷結魔法Ⅲ 7P(氷の壁を作れるよ!30秒で溶けるよ!重ね掛けできるよ!)


戦闘補助タイプ(射程9メートル)

魔力供給  2P(自分が空になるまでPTメンバーに秒間100のMPを譲るよ!余りは消滅!詠唱30秒!)

魔力吸収  2P(相手が空になるまでPTメンバーに秒間100のMPを貰うよ!余りは消滅!詠唱30秒!)

魔法防御  3P(火炎魔法Ⅰと爆裂魔法Ⅰを1秒間だけ完全無効化するバリアを出せるよ!詠唱0秒!)


 うん、アクティブスキルのポイント消費も大概だ。

 取得できるスキルの数は かなり限られてくるだろうな。


 でも、これをゲームとして考ると まあこんなもんか?

 PT内で重複選択はできないんだから、あんまりたくさん取得できるようだと みんな同じようなスキル振りになってしまうし。


 アクティブスキルには補足説明があった。

 どうやらMPも設定されているようだ。MPというのは、魔法を使うためのエネルギー残量と言うか、要するに例のアレだ。

 最大MPはひとり10ポイントで、各スキルの取得ポイントがそのまま消費MPになっているんだとか。


 MPは1分で1ポイント回復するだけ。

 たとえば、『氷結魔法Ⅲ』を使ったとしたら、消費MPは7だから、自分のMPが最大の10に戻るまで7分も掛かることになる。

 魔力供給や魔力吸収を使えば また別だけど。


 ん?

 最下部に但し書きがあるな。

 見落とすところだった。


・取得したアクティブスキルは頭の中にイメージするだけで使えるよ!

・アクティブスキルを使った後の硬直時間とかそういうのは無いよ!

・PTは運命共同体だよ! PTメンバーがひとりでも死ぬとPT全員が死ぬよ!


 最後のは なんだ?

 死ぬって言っても、どうやって死ぬんだ? 心臓麻痺か?


 まあとにかく、細かいことは後で考えるとしよう。

 最初にリストを見た時から気になっていたスキルがある。

 特にこれ。


詠唱省略  7P(0秒で攻撃魔法を撃てるよ!無詠唱だね!)


 無詠唱。なんて響きの良い言葉だろう。

 7Pという大きなポイント消費が必要だけど、これほどまでに男を引き付けるスキルが他にあるだろうか?


 よし決めた。

 取得しよう。

 相談すれば反対されるに決まっているから、先手を打たなければならない。


 舞とつばさの様子を俺はこっそり窺った。

 ふたりとも自分のスマホを黙って見ている。

 各スキルに考えを巡らせているようだ。


 今しかない。

「無詠唱は男の夢!」

 言いながら両手をパンッと合わせる。手合わせ錬成だ。

 そして、すぐさまスマホを操作し、『詠唱省略』を選択する。


「ちょ、なにしてんの!?」

 舞がようやく反応した。

 遅い。すでに画面には『取得完了』と表示されている。


「ふざけないでよ! あたしに黙って勝手なことしないで!」

 完全にブチギレ状態だ。


 こうなることは分かっていたので、一応、言い訳は考えてある。

「別に良いだろ。俺個人のスキル振りに口出しするなよ」

「3人でひとつのPTなんだから、PT全体でスキル構成を考えるべきでしょうが!」

 即座に論破されてしまった。


 仕方ないから話を逸らそう。

「そもそもさぁ、スキルってなんだよ。冷静に考えたら おかしくね? 仮にここが異世界なんだとしても、だからって、スキルだのモンスターだのが実在するとは限らないだろ。お前は本当に信じちゃってんの?」

「それは……」


 この反応からすると、半信半疑って感じか。

 俺もだけど。


「翔太くん」

 つばさが真っ直ぐに俺を見た。

 さすがに黙っていられなくなったようだ。

「この異様な状況だと何が起こっても不思議ではないのだから、念のため、スキル振りも慎重に考えるべきだと思う」

 正論だった。


「そ、そうだな!」

 無詠唱は惜しいけど、こうなったら折れるしかない。

「さて、おふざけはここまでにして、さっさとスキルをキャンセルするかぁ」

 俺は泣く泣くスマホを弄るのだった。


「キャンセルってあんた、そんなことできんの?」

「おいおい、舞さんは知らないのかい? こういうのはそういうもんなんだよ。間違いない。ちょっと待ってろ」

「あ、そ」

 自信満々に断言されると舞もこうして引き下がるしかない。

 やったぜ。


 さて……。

 どうやってキャンセルすれば良いんだ?

 画面のどこを弄くってもキャンセルボタンが出てこないぞ?


「…………」

 ああ、まずい。

 なんで俺は、キャンセル可能だなんて思ってしまったんだ。

 現実逃避というやつだろうか。


「早くしなさいよ」

 舞がイライラしている。

 そんな彼女に対して、どうやら俺は、非常に言い辛いことを言わなければならないようだった。


 意を決して口を開く。

「なんか無理みたいです、すいません」

「はあ?」

「キャンセルは、できない……」

「どうすんのよ!?」

「いや、どうしようもないです、はい」


 舞は大きく息を吐いた。

「もうさ、あんた死んでくれない?」

「おいおい、そりゃないだろ。状況を考えろ。今はシャレにならないぞ?」

「シャレにならないことをしたのは あんたでしょうよ」

「あ、はい、そうすね」

 無闇に反論しない方が良さそうだ。


 つばさは言った。

「『詠唱省略』は7ポイントの消費だから、翔太くんは残り3ポイントになる」

「それなんだけどさ」

 と舞が反応する。

「やっぱり、ひとり10ポイントは少なすぎるわ。3人で組んでも、PT単体じゃ、ろくなことができないじゃない?」

「PT間の連携が重要なのかもしれない」


 俺はふたりの会話を聞きながら安堵していた。

 話題が切り替わって助かった。

 つばさがそう仕向けてくれたわけだが、舞の方も、なんだかんだ言いながら結局はそれほど深刻に考えていないのだろう。


 スマホの説明によると、30分後に一万匹のモンスターが襲撃してくるということらしいが、俺たちは まだ完全に信じたわけではないため、心底から焦る必要を感じていないのだった。

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