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たったひとつのシンプルな攻略法  作者: 千代田ちとせ
第四章 妹(陰)編
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第26話 迅速行動

 中学校ごと異世界に転移したことが分かっても私は冷静だった。

 女子中学生らしからぬ精神性は この異常事態においても健在のようだ。

 そう自己分析するくらいには落ち着いている。


 クエスト。スキル。モンスター。

 大変な事態ではあるが、まあ何とかなるだろう。

 9999匹が相手という一見 無茶な設定も、スキル一覧を見れば攻略可能であることが分かる。


 問題は一切ない。

 後世に多大な影響を与えるべく生まれてきた私が こんなところで無意味に死ぬはずないんだし。


 クラスメイトが困惑する中、スマホの説明を素早く読み終えた私は さっそく行動を開始した。


 まずはPT編成。

 親友ふたりの名前を打ち込む。

 くーちゃん。初美。


 すると、すぐに『PT作成完了!』という表示が出た。

 勝手にPTを作れてしまったのは少し意外だった。


 遠く前方の席から くーちゃんと初美が私を見ている。

 無視。話す時間が惜しい。


 私は席を離れ、教壇に立った。

 途中で初美が話し掛けてきそうになったが、手で制して黙らせた。


「はい注目!」

 ばんばん、と黒板を叩く。


 うるさかった教室が静かになった。

 よろしい。実によろしい。

 私の手足となって動く兵隊たちは忠実でなければならない。

 この調子なら扱いやすそうだ。

 先生が居ないのも助かった。教師だからという理由で余計なことをされては かなわない。


 とりあえず説明を始める。

 現状を受け入れる必要があること。生き残るためには迅速な行動が重要であること。そして、私に従えば何も心配しなくて良いということ。その他諸々。


「ちょっと待ってよ」

 口を挟んできたのは由美子だ。


 私をクラスのボスとするなら由美子はナンバー2と言える。

 しかし側近というわけではない。

 私が最大派閥を率いていて、由美子が次に大きな勢力を率いている。それだけのことに過ぎず、あまり友好的な関係だとは言えない。


 敵対しているわけでもないけど。

 衝突したって互いの利益を削り合うだけだという認識を双方が持っていたため、多少 張り合う程度の問題しか起きなかったのである。

 今までは。


 命が懸かったこの状況だと由美子も大人しくして いられないようだ。

 けど彼女の好きには させられない。

 私は由美子の言葉を待たず先制した。

「スマホの情報を信じられないからって、教室で縮こまっている方が良いとでも?」


 由美子は少し黙ってから再び口を開こうとした。

 それも遮らせてもらう。

「スキルの存在が疑わしいのなら、実演してみようじゃないの。それなら話が早いでしょ」

 反論に対しては常に先回りして封じ込める。私の得意技だ。

 霊感じみた先読みが あってこそだけど。


 さて。

 『火炎魔法Ⅲ』を取得して7ポイントを消費。

 廊下に向かって歩きながらパパッとスキル選択を済ませる。

 教室を出たら詠唱開始。廊下の窓からグラウンドを狙う。


 もし何も起こらなかったら赤っ恥だが、その時はその時だ。仕方ない。

 人心掌握のため、ここは率先してスキルを披露すべき場面だろう。

 どちらにしろ試し撃ちはしたいし。


 幸い、足元に魔法陣が現れてくれた。

 教室の窓から見ているクラスメイトたちが声を上げて驚いている。


 私も内心では驚いたが、表情には出さなかった。終始 平静を装う。

 有象無象は外見にすぐ騙されるから、これを利用しない手はない。演技を貫くだけで信頼度が上がるなら安いものだ。


 30秒後、グラウンドに向かって火炎の波が放たれた。

 私から離れた位置で熱波がスタートしたけれど、これはつまり、射程9メートルを目一杯に使うようイメージしたからか。

 そして、そこから教室ひとつ分の範囲を焼いてくれる、と。


 だったら、射程は9メートルでも、教室分の効果範囲を合わせれば、実質的には爆裂魔法の30メートルより遠くまで届くってことになる。


射程重視タイプ(射程30メートル・詠唱30秒)

爆裂魔法Ⅰ 3P(人間の手足を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)

爆裂魔法Ⅱ 5P(人間の全身を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)

爆裂魔法Ⅲ 7P(人間数人分を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)


威力重視タイプ(射程9メートル・詠唱30秒)

火炎魔法Ⅰ 3P(人間の全身くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)

火炎魔法Ⅱ 5P(人間数人分くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)

火炎魔法Ⅲ 7P(学校の教室くらいが範囲だよ!長々と標的を焼き続けるよ!)


 射程と範囲が区別されて記述されていることから意図的な罠だと判断できるけど、この違いが重要になる局面もあるのだろうか。


 まあとにかく、『火炎魔法Ⅲ』をメイン火力にするつもりの私からすれば朗報だ。

 『火炎魔法Ⅲ』の範囲外からモンスターに爆裂魔法を撃たれたら困るが それは不可能ということなんだから。


 私の放った熱波により、外の植木が少しだけ燃えた。

 少しだけ。

 そしてすぐ消えた。


 うん?

 ずいぶんと拍子抜けの威力だ。

 どう受け止めれば良いのだろう。火炎魔法は威力重視のはずだけど。


 ……今は置いておくか。

 スマホの情報通りなら、範囲内にモンスターが居ればもっと燃えるはず。

 現状では そう判断するしかない。


 多少の不安を押し隠しつつ教室に戻る。

「これで分かったでしょう。スキルは実在する。したがって、モンスターも実在する。ってことは、戦わないと生き残れない」


 由美子がまた何か言いたそうだったので私は言葉を続けた。

「最適なスキル振りを教えてあげる」

 『火炎魔法Ⅲ』で押し切る。それしかない。

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