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たったひとつのシンプルな攻略法  作者: 千代田ちとせ
第三章 妹(陽)編
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第25話 選択

 PT全員にメールが届いた。

『ボスを倒したからクエストクリアだね! おめでとう! ボスと言っても中ボスだけどね! 次のクエストも頑張ろうね! 地平線の向こうには、なんと、人間の村とか魔物の巣とか その他色々が普通にあるよ! さてそこで、君たちにはふたつの選択肢があるよ! 外の世界へ飛び出すか、学校に引き籠もるか。冒険か定住か。さあ選ぼう!』


 メールを閉じると画面に『冒険』と『定住』の二択が出てきた。

 選ばなければならないらしい。

 スマホを地面に叩き付けたい衝動を堪えるには努力が必要だった。


 舞が言った。

「なにしてんの?」

 俺にではなく つばさに言ったようだ。


「メール。試しに返信してみる」

「どうせ送信失敗ってなるだけでしょ」

「駄目で元々」

 言いながら つばさはスマホをポチポチやっている。


 俺は近寄って画面を覗いてみた。

『とりあえずのクエストを終えたことですし、家に帰してはもらえないでしょうか』


「これでどう?」

 つばさが聞いてきたので俺は「まあ良いんじゃないか?」と答えた。

 舞ではないが、どうせ送信失敗するだけだろう。


 委員長は言った。

「どうせこのままだと聞き入れられることはありませんし、譲歩案も示してみてはどうでしょう?」

「分かった。そうする」

 つばさは またポチポチやって、最後に送信した。


『とりあえずのクエストを終えたことですし、家に帰してはもらえないでしょうか。なんでしたら一時的でも構いません』


 他の生徒が返信した時は、『送信ミス』という文字が画面に出るだけだったが、今回は何故か『送信完了』と表示された。


「?」

 さすがのつばさもリアクションを取っていた。首を傾げているだけだが。


「どういうこと? どうなってんの?」

 スマホを奪い取りそうな勢いで舞が画面に顔を近付ける。

 若干テンパっているようだ。


 落ち着かせてやらなければ。俺が。俺の役目だ。

「舞、落ち着け! 早く落ち着くんだ! 早く! 早く舞! 落ち着けっつってんだろ!」

「いやいや……」

 舞は苦笑して つばさから離れた。

「まあ、今は様子見と言うか、相手の返信を待たなきゃね」


 すると委員長が言った。

「相手、ですか。このクエストの運営と言いますか仕掛け人と言いますか、とにかく首謀者は いったい何者なのでしょう」


 それが分かれば苦労はない。

 『冒険』か『定住』かの選択を迫っていることから、首謀者が何者であろうと、まだ俺たちを帰す気がないのは確かだろうな。

 なのに『家に帰せ』なんてメールを送ったりして大丈夫なのだろうか。どんな返信が来ることやら。


 委員長の言葉に誰かが答える前に、つばさのスマホが震えた。

 4人で顔を突き合わせながらメールを開封する。


『いいから選択しろよ』


 短くそれだけの内容だった。

 俺は思わず仰け反りそうになった。

「恐っ! これ絶対怒ってるだろ! 謝っといた方が良いんじゃないか!?」


 舞が不満そうに俺を見る。

「なんで謝る必要があるのよ。つばさは何も悪くないじゃないの」

「やべーって。相手が何者なのかは知らんけど、俺ら以外のPTを全員一度に殺すような奴だぞ。怒らせたら何されるか分かんねえって」

「確かに……」


 つばさは再びメール文を作成した。

『申し訳ありません。言われた通り私たちは冒険か定住かを選択しようと思います』


 そんなとこだろう。

 簡潔で良いと思う。

 あまり大袈裟な謝罪をしても嘘臭くなるしな。


 つばさがメールを送るとすぐに返信が来た。


『じゃあ早く選べよ』


 まだ怒ってる……。

 でも、俺たちの名前がデスノートに書かれることは当面なさそうだ。


「何様なのよ、こいつは!」

 舞はひとりでキレていた。


「意思疎通はできるようになった。これは大きい」

 つばさは冷静だ。


「つっても、しばらくは やめておいた方が良いだろうな。これ以上怒らせたら本当に殺されかねない」

 俺の言葉に舞が反応する。

「選択するって言うの? どっちを?」

「そりゃ決まってるだろ」

「……。仕方ないわね」


 相談する必要性は感じなかった。

 『冒険』か『定住』か。

 考えるまでもない。


 俺たちはとりあえず、校門を抜けて外へ出てみた。

 見渡す限り砂と岩しかない。

 改めて見ると絶望的な光景だ。

 遠くには人間の村もあるらしいが。


 村か……。

「もしかしたら人間の村に妹が居るかもなぁ」

 誰にともなく俺は言った。


「妹さんも消失に巻き込まれたのですか? でもそうなりますと――」

 委員長は途中で口を止めた。

 間を置いてから続ける。

「妹さんの名前は なんて言うのですか?」

「話が変わってないか?」

 言葉に繋がりが無いぞ。

 まあ良いけど。


「妹の名前はユイだ」

「どういう漢字なのですか?」

「結末の結と書いてユイと読む」

「そんな言い方は悪いですよ。きっと御両親は、人を結ぶという意味で名付けたのだと思います」

「たぶん そうだろうな」

 『結末』の方が現状に即しているとは思うが。


 舞は言った。

「あまり希望を持たない方が良いわ。翔太も分かってるはずよ」

「ゼロじゃないなら諦めることはないだろ。俺たちは0.01%の確率で生き残ったじゃないか」

「そりゃ100%じゃないけどさ」


「…………」

 つばさの視線を感じる。

 どうやら、舞と同じことを言いたいらしい。


 とにかく。

 『冒険』か『定住』かの選択を手早く済ませた俺は、3人の顔を順々に見て言った。

「よし行こう、みんなで。ひとりも欠かさず。このPTは運命共同体なんだからな」

 そして俺たちは歩き出すのだった。

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