第24話 結
目の前で爆裂が発生し、轟音が体の芯まで響く。
幸いにも被害はそれだけだった。他の女子も無傷だ。
眼前には、さっきと同じ半透明の赤いバリアが展開されている。
「…………!」
『魔法防御』越しにブルマ幼女と目が合った。
俺は思わず固まってしまったが、気を取り直して『火炎魔法Ⅲ』の詠唱に入った。
『魔法防御』の連発で消費したMPは合計6ポイント。
だが問題はない。
舞から供給を受けて俺のMPは満タンになっている。
ブルマ幼女は驚いた顔をした後、再び突進してきた。
「行きます!」
委員長が飛び出して金属バットを振るう。
ブルマ幼女が刀で受け止めると、ふたりはそのまま打ち合いを始めた。
金切り音が何度も鳴り、俺の耳に不快感を植え付けてくる。
ブルマ幼女の方が優勢だが、委員長は防御に徹して なんとか耐え忍んでいた。
ここまでは予定通りだ。
しかしどうだろう、この光景。
日本刀を持った金髪ツインテールのブルマ幼女 vs 金属バットを持った黒髪ポニーテールの制服女子高生
夢のコラボに俺は見惚れた。
舞もガン見している。190センチ越えのマッチョマンの筋肉美に目を奪われているのだろう……。
つばさも珍しく見入っている様子。
なんつーか、つばさはともかく、舞が見ている幻影は どう考えても俺とは言い難いよな。
理想の異性像なんて個人の勝手だけど。
ブルマ幼女は俺の詠唱を気にしているのか、委員長と打ち合いながらも しきりにこっちを見てきた。
つばさと舞も、釣られるように俺を見る。
「翔太」
舞は何か言いたそうに口を開くが、結局は黙り込んでしまった。
なんだよ、マッチョマンを消滅させるのがそんなにも惜しいのか?
呆れるしかない。
と思ったが、どうやら つばさも同じようだった。
言いたくても言えないことが ある感じ。
……どうも気になる。
俺は今、取り返しの付かないことをしようとしているのかもしれない。
倒す前に会話を試みるべきなんじゃないだろうか?
つばさと舞の様子を見ていたら そう思えてきた。
いやまあ、モンスターランク1に『言葉は通じないよ!』と明記してあり、ランク2でも3でも それを否定する記述が無い以上、ボスとの会話は不可能と考えるべきか。
でも知能は人間並みなわけだから、試してみる価値はあるか? ひと声だけでも掛けてみるべきか?
迷った末に俺は詠唱を続行した。
もし、ブルマ幼女が少しでも こっちの言葉に反応したら、もう俺は『火炎魔法Ⅲ』を撃てなくなるだろう。その状態で戦闘続行になれば、バットと日本刀の打ち合いは長期化し、いずれ委員長が押し負けてしまう。
リスクが大きすぎる。倒せる時に倒すべきだ。
たとえ、どんな懸念があろうと。
危険に晒すのが自分の命だけなら会話を試みていたかもしれないが、俺が死ねばPT全員が死ぬし、その設定が無かったとしても、俺が欠けた状態でボスに勝つのは無理がある。
あやふやな希望のためにリスクは冒せない。
PTの生存に万全を期したいなら、他の いかなる犠牲も覚悟するべきだろう。
詠唱を完了した俺は、それ以上 何も考えず『火炎魔法Ⅲ』を放った。
高速の熱波はブルマ幼女と委員長の両方に当たり、すぐに消えた。
直後、どこからか膨れ上がった火炎が渦となりブルマ幼女を覆う。
PTメンバーの委員長は無事だ。
数秒後に火炎が収まると、ブルマ幼女の居た場所は砂地だけになっていた。
「…………」
本当にこれで良かったのだろうか。どうしても そんな風に考えてしまう。
けど選択肢は最初から存在しなかった。だから間違ってはいない。俺は心の中で何度も自分にそう言い聞かせた。




