第23話 早撃ち対決
ブルマ幼女は『身体強化Ⅲ』のためメチャクチャ速い。超高速で裏門を抜ける。
「翔太くん!」
叫ぶような委員長の声。
『危険感知』を持つ彼女が伝えたいことは つまり……。
ブルマ幼女が白いラインを越えた。
直後に足が止まる。
しかし運動エネルギーを すぐには殺し切れず、1メートル近く滑走状態になった。小さな運動靴が砂埃を巻き上げる。
完全停止の寸前、ブルマ幼女は こっちに向けて手を伸ばした。
今だ。
俺は『魔法防御』を発動させた。
――――
他のPTメンバーが『魔法防御』を取得することは可能だったし、検討もした。
3人の合わせ技である機関銃を捨てるのなら、つばさも舞も、所持スキルは もはや不要となる。
一方、俺のスキルは単体でも使える。
PT全体のスキル構成だけを見れば、つばさか舞がスキルの再取得を行った方が良かったかもしれない。
だが結局は俺が取得した。
理由は、経験という一点のみ。
多くのモンスターを葬ってきた俺の方が早撃ち対決も上手く行く確率は高いという当たり前の結論に至ったのだ。
後々を考えてつばさか舞にやらせるのも ひとつの手ではあるが、局面ごとに最善手のみを打つことで今まで生き残ってこられたという事実があるからには、今さらそこを曲げたら敗北するように設定されている可能性がある。
具体的には、早撃ち対決でシビアなタイミングを要求される、という事態が考えられる。
だから俺が再取得した。
思い切りの良さが勝利の鍵。
――――
『魔法防御』は無事 発動し、半透明の赤い壁が目の前に出現した。
爆裂は発生しない。
防いだのではなく、ブルマ幼女が『爆裂魔法Ⅰ』を撃っていないからだった。
俺に手の平を向けたのはフェイクだったらしい。
けど、委員長の『危険感知』が反応した以上、数秒以内に魔法攻撃が来るのは確実だ。
『魔法防御』は1秒間だけ展開される。つまり、1秒後ならブルマ幼女の『爆裂魔法Ⅰ』が通ってしまう。
これを防ぐには、『爆裂魔法Ⅰ』よりも速く『魔法防御』を再度発動させるしかない。
立ち止まった状態じゃないと魔法を撃てないという性質上、待ち構える側の俺の方が当初は有利だったが、ここに至ってその優位性は無くなった。
それどころか、本来ならば、フェイクで意表を突かれたことにより、むしろこっちの方が不利になっていたところだ。
しかし俺はフェイクを読んでいた。
モンスター情報には、ボスの知能は人間並みだとわざわざ記載してある。
なら、人間相応の策を駆使してくると考えるべき。フェイクを想定するのは当然。
『身体強化Ⅲ』を持つブルマ幼女は反応速度も増しているだろうが、それでも俺の方が速く撃てるはずだ。
なぜなら。
俺にはいくつもの根拠がある。
幼馴染みは言っていた。
読み切られたフェイクほど無駄なものはない、と。
余分な動作をした分だけボスが不利になるに違いないのだ。
幼馴染みはこうも言っていた。
ボスは1発で確実に俺を殺す必要がある、と。
だから頭に狙いを定めなければならない。
対する俺は、正面に『魔法防御』を展開させるだけ。位置調整は必要ない。
この違いは発動時間に大きな差を生む。
幼馴染みはさらに言っていた。
そもそも、ボスからすれば、フェイクを見破られるのは想定外のはずだ、と。
こちらが動じなければ、ボスの方が動じることになる。
動揺は反射神経に悪影響を与える。人間並みの知能がここでむしろ不利に働く。
そしてなにより、俺はアホだ。そんな俺だからこそ、余計なことを考えず幼馴染みを盲目的に信じられる。
信じるのは良いことだ。自信を持てば運動能力を十全に発揮できる。最速で魔法を撃てる。
だから、勝てる。
心理的優位に立つための根拠を事前にいくつも用意してくれた幼馴染みが間違っているはずがない。
絶対に勝てる。
赤いバリアが消えた瞬間、俺は『魔法防御』を再発動させた。
ほぼ同時にブルマ幼女も『爆裂魔法Ⅰ』を撃ってきた。
その差は ほんのわずかだった。




