第22話 回想の続き
黙考していた つばさが口を開く。
「翔太くんを瞬殺するというのはどう?」
「……と言うと?」
俺は少しだけ戸惑いながら聞いた。
「ボスのスキルポイントは10。私たち人間と同じ。だったら、翔太くんと同じスキル振りで、『詠唱省略』と『爆裂魔法Ⅰ』を取得すれば、速射も可能になる。これでちょうど10ポイント」
「でも無限連射はできないだろ?」
「できない。無限どころか、モンスターはアクティブスキルを1回しか使えない。それに、立ち止まっていないと魔法は使えないから、待ち構えている側である翔太くんの方が速く撃てるはず」
「だったら良いんじゃないか? 何が問題なんだ?」
「翔太くんの方が速く撃てると言っても、ほぼ同時のタイミングなら、両方とも発動する恐れがある。お互いの『爆裂魔法Ⅰ』が直撃した場合、『身体強化Ⅲ』で生命力が増しているボスは高い確率で生存する。結果、ボスは生き残り、翔太くんは爆死する」
「で、でもさ、俺の『爆裂魔法Ⅰ』でボスは少なからずダメージを受けるだろ? そうなると、『身体強化Ⅱ』の委員長に勝てなくなるんじゃないか? それだとボスとしてはマズイんじゃ?」
自分が殺されるという想定のせいか必死に反論してしまう。
つばさは無慈悲に断言した。
「PTのひとりが死ねば全員が死ぬルールだから、翔太くんが爆死した時点で私たちは全滅ということになる。つまりボスの勝ち」
「…………」
そういや、そんなルールもあったな。運命共同体ってやつだ。
舞は言った。
「だからこそ、ランク2までのモンスターには、スキルポイントが9までしか与えられていなかったんでしょうね。プレイヤーがちゃんとクリアできるように」
とにかく、ボスのスキル振りは看破できた。
あとは対策のみ。
無限連射破りを破る。すなわち無限連射破り破りを編み出すのだ。
「あの」
と委員長が手を挙げた。
「私が前へ出て、ボスに『爆裂魔法Ⅰ』を撃たせてそれを躱す、というのはどうでしょう?」
「駄目だ」
俺は即座に反対する。
「ランク2のモンスターとの戦いを思い返してくれ。『危険感知』スキルを持っているモンスターだろうと俺は だいたい直撃させてたろ。無詠唱の速射は、たとえ先読みしても確実に回避はできないんだ」
「翔太くん……」
俺の気持ちが伝わったのか委員長は引き下がってくれた。
ただの肉弾戦なら委員長は数十秒の足止めを果たせるに違いない。
しかし、『身体強化Ⅲ』のボスが速射能力まで持っているとしたら、コンマ数秒で殺されてしまう可能性もある。
ボスの物理攻撃を避けるなりバットで受け止めるなりした瞬間に速射で撃たれたら どうしようもないだろう。
危険すぎる。
「他のPTが生き残っていたら、『魔法防御』スキルでボスの速射に対応できるんだけど」
と言うと舞は大きく息を吸った。そしてゆっくりと吐き出す。
「そっか、ここで繋がるというわけね」
なんかひとりで納得している。
魔法防御 3P(火炎魔法Ⅰと爆裂魔法Ⅰを1秒間だけ完全無効化するバリアを出せるよ!詠唱0秒!)
「どういうことだ?」
俺が尋ねると舞はドヤった。
「ボスの対策が決まったわ」
「いきなりだな」
「レベルアップ特典でスキル再取得を選んで、『魔法防御』を取れば良いのよ。これで、『レベルアップ特典抜きには勝てないようになっているはず』という問題もクリア。でしょ?」
視線を向けられた つばさが同調する。
「『魔法防御』は詠唱0秒。無詠唱と同じ。『詠唱省略』を持っていなくても速射に対応できる。もちろん偶然そうなっているのではなく、このために設定されていると見るべき」
舞は「決まりね」と言った。
委員長も こくりと頷く。納得しているようだ。
「ってことは……」
全員に確認してから俺はスマホを操作した。
『レベルアップ特典』でスキルを再選択する。
まず『魔法防御』を取得。
俺が前面に立ってボスを迎え撃つ。
ボスの『爆裂魔法Ⅰ』を『魔法防御』で防ぐのだ。
速射の脅威を排除したら、委員長がボスの足止めをする。
この時に委員長を援護するため、俺はさらに『火炎魔法Ⅲ』を取得した。『魔法防御』は3ポイントなので、7ポイントの『火炎魔法Ⅲ』は当然 取得できる。
連射はできないため、『身体強化Ⅲ』持ちのボスに攻撃魔法を当てるには、効果範囲の広い『火炎魔法Ⅲ』が最適だろう。
ただしこの作戦は、ボスが無詠唱で『爆裂魔法Ⅰ』を撃ってくるという前提の話だ。
ほぼそう考えて良いだろうけど、しかし、ボスが違うスキル振りにしている可能性もゼロではないため、一応 考慮しなくてはならない。
一瞬でボスのスキルを見切って対応策を繰り出すわけだが、委員長の『危険感知』のおかげで、物理攻撃か魔法攻撃か、どちらが来るのかは分かる。
そこで事前に合図を決めておくことにした。
ボスが攻撃魔法を使うのなら、委員長は俺の名前を呼ぶ。
魔法攻撃の場合、専用の対応策が必要なのは、『火炎魔法Ⅲ』か『無詠唱の攻撃魔法Ⅰ』しかない。
そして、俺から30メートルの距離に白線を引いておけば、ふたつのうち どちらなのかも絞れる。ラインの内側に入らない限り『無詠唱の攻撃魔法Ⅰ』は俺に届かないからな。
逆に、もしボスがラインの手前で止まったなら、『火炎魔法Ⅲ』を撃ってくると考えた方が良いだろう。それしか届かないんだから。
俺が想定すべきパターンは3つだ。
パターン1。
委員長が俺の名前を呼ばなかった場合。
ボスは魔法攻撃をしないのだから、そのまま突進してくるということになる。
なので、委員長がボスを止める。俺も『火炎魔法Ⅲ』で援護する。
パターン2。
委員長が俺の名前を呼び、かつ、ボスが白線を越える前に立ち止まった場合。
ボスはおそらく『火炎魔法Ⅲ』を撃ってくる。
つまり、ボスに『詠唱省略』は無いと考えられる。『無詠唱の火炎魔法Ⅲ』は合計14ポイントが必要になるから有り得ない。
なので、ボスが詠唱に入ったら委員長が突撃して、詠唱が終わる前にボコれば良い。
パターン3。
委員長が俺の名前を呼び、かつ、ボスが白線を越えた場合。
ボスは『無詠唱の攻撃魔法Ⅰ』を撃ってくるだろう。
なので、俺が『魔法防御』を使って防ぐ。モンスターのアクティブスキルは1回きりだから、これで速射の脅威は消える。
直後に委員長が突撃。俺も『火炎魔法Ⅲ』で援護する。
このように取り決めておけば、俺が即時判断すべきことは半減し、早撃ちに集中できる。
これが俺たちの結論だった。




