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第17話 PTメンバー

 小さな影が後ろから俺を抜いて、跳躍した。


 女子だった。

 そいつは金属バットを振り抜き、綺麗に矢を叩き落とした。


 体の回転を上手く利用しての手慣れたスイング。そして、揺れるポニーテール。

 後ろ姿だけで誰なのかは分かった。

 間違いない。委員長だ。


 しかし、いくら女子ソフトボール部のキャプテンだとはいえ、素で あんな動きはできない。

 『身体強化』スキルを取得しているのだ。


 隣のバットマンより速く迎撃できたのは、事前に動き始めていたからだろう。

 バットマンが矢に気付いた時点で、委員長はもうこっちに向かって走り出しており、俺を抜き去る時にはすでに超高速に達していた、と。

 これから動こうとしていたバットマンより速いのも当然だ。


 そうなると、なぜ いち早く動き出せたのかという疑問が出てくるが、もちろんそれは、『危険感知』スキルのおかげに違いない。


危険感知  5P(不意打ち対策は万全!PT全員の危険を数秒前に察知できるよ!)


 ここまで分かれば俺にも全貌が掴めた。

 『危険感知』の効果はPTメンバーにも及ぶ。つまり委員長は、俺と同じPTに入ったのだ。


 俺たちのPTはすでにレベルアップを果たしており、いつでもレベルアップ特典を選べる状態だった。


・レベルは個人単位ではなくPT単位で設定されているよ!

・モンスターを900匹 倒すとレベル2になるよ!

・モンスターを9000匹 倒すとレベル3になるよ!

・レベルアップすると、3つの中から特典を選べるよ!

・一、PTメンバーをひとり増やせるよ!

・二、スキルポイントをひとりだけ1増やせるよ!

・三、スキルをひとりだけ再選択できるよ!

・レベルアップ特典は いつでも選べるよ! 後からでもいいよ!


 保留にしてあった この特典を、つばさか舞が使ったのだろう。


 PTの編成に全員の了承は必要ない。誰かひとりが入力するだけで決定となる。

 そのことはPT作成時に判明している。

 俺の知らない間に委員長がPTに加入することは可能なのだ。


 直前に感じたスマホの振動もおそらく……。

 俺は素早く確認した。


『PTメンバー増員完了!』


 やっぱり。

 状況を把握した俺は、委員長と頷き合った。

 そして無限連射を再開する。


 もはや矢の心配は無用だ。

 委員長が『危険感知』で5ポイントを消費しているのなら、もうひとつのスキルは、7ポイントの『身体強化Ⅲ』ではなく、5ポイントの『身体強化Ⅱ』ということになるが、特に問題はないだろう。

 『身体強化Ⅱ』でも楽に打ち落とせるのはギャル子が証明済みだし、今の委員長なら、俺に矢が迫るタイミングを『危険感知』で読めるのだから、さらに楽勝で対処できる。


 しかも、事前に察知できるのであれば、極稀にヒットする矢のためにずっと神経を張り詰めている必要もない。

 これなら集中力も持続する。

 と言うか、委員長の場合、集中しているとか いないとか関係なく『危険感知』で矢に気付くことができる。


 さらに言えば、俺の『爆裂魔法Ⅰ』で委員長が爆死する心配もない。

 同じPTならダメージを受けないことは教室炎上事件で明らかになっている。

 委員長は俺の前方に出ても問題ないし、俺も委員長を気にしなくて良い。

 目の前でウロチョロされたら多少は目障りかもしれないが、それだけだ。構わず撃ちまくれば火力が落ちることはない。


 レベルアップ特典によって 複数の懸念が一挙に解決したわけだが、これもまた、あらかじめ用意された正当な攻略法ってやつだろうか。


 俺は一瞬だけ舞とつばさを振り返った。


 事前に手を打っていた『火炎魔法Ⅲ』の対策と比べると、弓矢の対策にはずいぶん手間取ったようだけど、まあそれは、『身体強化Ⅱ』でも矢を打ち落とせるという情報が足りなかったせいだろう。

 ギャル子ちゃんがしっかり迎撃したのを見て、ようやく委員長のスキル振りを決められたってところだろうな。


 ギャル子ちゃんは『身体強化Ⅱ』に加えて『危険感知』を取得していたから、幼馴染みにとっては、それもまた思考の助けになったんじゃないだろうか。ヒントっつうかそのままだし。

 『危険感知』がPT全員をカバーしてるから、というギャル子ちゃんの取得の言い訳も、ヒントっつうかそのままだし。


 後衛部隊の方へ飛んでいった矢にギャル子ちゃんが対処できたのもそうだ。

 それまでは後衛部隊に届かなかった矢が例外的に飛んでいったというのに、それで虚を突かれることなく打ち落とせたのは、『危険感知』があればこそだろう。

 あの時にギャル子ちゃんは『危険感知』の有用さを証明していたのだ。


 もちろん、幼馴染みと委員長はそこまで気付いていたんだろうな。

 俺は気付かなかったけども。


 それにしたって よく決断できたもんだ、と思う。

 貴重なレベルアップ特典を、『スキルポイント増』ではなく、『PTメンバー増員』に使うなんて。


 ひょっとしたら多少の躊躇はあったかもしれない。

 でもまあ、他に選択肢がないってことは3人も分かっていただろう。


 モンスターのランク2が出てくるのは1000匹目から。

 PTがレベルアップするのは900匹で。

 両者の数字は似通っている。

 だったら、そこに何らかの関係性があるはず。

 すべてのスキルに意味があると気付いている幼馴染みなら そう考える。


 無限連射を取得したPTが経験値を荒稼ぎするのは必然。

 と同時に、他のPTも存在するからには、いくらかの経験値を他のPTに持って行かれるのも また必然。

 1000匹目の出現と900匹でレベルアップという数字は、その分を考慮して設定されたのだろう。


 レベルアップ特典が敵スキルの対策に繋がるのは明白であり、そこから逆算すれば自ずと答えが見付かる。


 最初のスマホ画面にあった『思い切りの良さが勝利の鍵』という文言を思い出せば、迷う理由はない。

 あえて『スキルポイント増』を捨てる『思い切りの良さ』こそが求められているのだ。


 そもそもこれは、スキル取得の心理障壁と同じだろう。

 それを乗り越えてきたつばさや舞が今さらそんな罠に嵌るはずはない。


 防御の不安がなくなった俺はひたすら攻撃に徹した。

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