第11話 タンポン
俺はスマホを操作して『爆裂魔法Ⅰ』を取得した。スキルポイントの消費は3。
すでに『詠唱省略』で7ポイントを使っているから、これで10ポイントを使い果たしたことになる。
所持スキルはこのふたつだけ。
詠唱省略 7P(0秒で攻撃魔法を撃てるよ!無詠唱だね!)
爆裂魔法Ⅰ 3P(人間の手足を吹っ飛ばす程度の爆発が起きるよ!)
舞とつばさも各自それぞれのスキルを取得した。
もう後戻りはできない。
俺たちは前へ進んだ。
後衛部隊の先頭に立つと、前方に居るのは戦闘中のバットマンのみになった。
「翔太!」
正門から少し外れた方向を舞が指差した。
見ると、モンスター数匹がこっちに向かっていた。
バットマンたちに群がる数が多すぎて溢れ出してしまい、あの数匹だけが標的を後衛部隊に変えたらしい。
「任せろ」
迎撃が可能なのは俺だけだ。
つばさと舞は攻撃手段を持ってないし、指揮に徹していた委員長はまだPTに入ってないだろうし。
後衛部隊の中には身体強化スキルの所持者が居るかもしれないけど、数匹を一度に止めるのは無理だろう。
俺は息を大きく吐いてから、先頭のモンスターに狙いを定めた。
スキルを使うために必要な動作は無い。念じるだけで良い。そうスマホに書いてあった。
とはいえ一応、俺は右腕を前に突き出した。肘を真っ直ぐ伸ばし、モンスターに手の平を向ける。
この方がイメージしやすいからな。
そして頭の中に、先頭のオークもどきが爆散する様を思い描く。
その瞬間、爆裂が起こった。
さすが『詠唱省略』スキル。間が全く無い。
ただし爆発の規模は小さかった。オークもどきの首から上を吹き飛ばした程度だ。
『火炎魔法Ⅲ』に比べると心許ないが、『爆裂魔法Ⅰ』だとこんなものだろう。
突進中のオークもどきは、派手に すっ転んだ直後、それまでのモンスターと同じように一瞬で全身が消失した。
倒したらしい……。
だが安心している暇はない。
こっちに向かってくるモンスターはまだ3匹も居る。
俺は左端のモンスターに照準を合わせた。
突き出している右腕に左手を添え、爆裂をイメージ。
確実性を増すために二連射だ。
左端のモンスターは頭部と胸部に爆裂を受けて倒れた。
これで3発を撃った。MP消費は9。
残りMPは1しかない。
しかし。
俺はさらに連射した。
真ん中のモンスターに連続2発。右端のモンスターには、勢い余って3連発。
モンスター共は左から順に消滅していった。
合計8発の『爆裂魔法Ⅰ』を放ったわけで、消費MPは24にもなる。
俺は後ろを振り返って言った。
「いけそうだな」
幼馴染みふたりは同時に頷いた。
俺のスキルは『詠唱省略』と『爆裂魔法Ⅰ』。
すぐに魔法を撃てるし、連発もできる。ただし、MPが尽きるまで。
つまり、MPの問題さえなんとかすれば、『爆裂魔法Ⅰ』を好きなだけ撃ちまくれる。
この発想にはスキル相談中に早い段階で到達していたし、『爆裂魔法Ⅰ』の連射が強いってことは俺たちの中で共通認識としてあり、何度も言及してきた。
しかし、MP問題の解決策が見付からず、結局、狙撃や散弾など一時的な活躍に限られるだろうという扱いになっていた。少なくとも俺は、MPを供給し続けるなんて不可能だと思い、そのことについては諦めていた。
けど違った。方法はあった。
PTのスキル編成を少し工夫するだけで良かったのだ。
つばさのスキルは『無限魔力』のみ。
無限魔力 9P(MPが全く減らなくなるよ!無尽蔵だよ!)
つばさの残りスキルポイントは1しか無いから、彼女自身が供給することはできない。
だったら、つばさはタンクの役割に徹すれば良い。
ポンプの役目を担うのは舞だ。
舞のスキルは、『魔力吸収』と『魔力供給』、そして『多重詠唱』。合計9ポイント。
つばさの『無限魔力』を吸収しつつ俺に供給する。
多重詠唱 5P(複数同時に魔法が使えるよ!無制限にね!)
魔力供給 2P(自分が空になるまでPTMに秒間100のMPを譲るよ!余りは消滅!詠唱30秒!)
魔力吸収 2P(相手が空になるまでPTMに秒間100のMPを貰うよ!余りは消滅!詠唱30秒!)
つばさのMPは無尽蔵なので、秒間100のMPを吸収しても尽きることはない。
よって、MP吸収のスキル説明に『相手が空になるまで』と書いてあるからには、延々と吸収することができる。
その結果、舞自身のMPも尽きることがなくなるので、同じ理屈により、俺に延々と供給することもできるというわけだ。
吸収と供給のたびにいちいち詠唱していたら供給能力なんて知れているが、多重詠唱スキルで同時に使用し続ければ、詠唱は最初の一度だけで済み、供給を途切れさせることはない。
これで俺は無詠唱で無限に撃てる。
実際は秒間100のMPが供給されているに過ぎないが、1秒で33発の連射が可能となるため、事実上の無限状態と言えるだろう。
散弾銃どころの話じゃない。こうなると もはや機関銃だ。
昔の戦争では、相手の数を大きく上回ってさえいれば、単純な正面突撃でもそれなりの戦果を期待できた。
しかし、機関銃の登場により その前提は一変した。突撃してくる敵兵を一方的に薙ぎ倒せる機関銃は、陸上戦闘において圧倒的な防衛有利を確立したのだ。
そして俺は、機関銃にも等しい能力を手に入れた。
現実の機関銃だと、たった一挺で防衛拠点を守り切るのはさすがに難しいかもしれない。
けど、無限の銃弾が有り、自動かつ瞬時に弾倉が入れ替わり、そのうえ、銃身が焼け付くこともなかったとしたら、どうか。
敵はひたすら正面突撃を続け、しかも侵入ルートがひとつに限定されていて、挙げ句の果てに、敵の方だけ銃を撃つのに30秒も掛かるとしたら、どうか。
倒された敵はすぐに消滅して、死体が盾の役割を果たすこともなかったとしたら、どうか。
『爆裂魔法Ⅰ』をひたすら撃ちまくるというシンプルな攻撃だけで一万の軍勢を退けることも決して不可能じゃないはずだ。
「翔太くん、一体どうやったのですか?」
委員長が事態を呑み込めず目を丸くしていた。
「それは……」
説明したいところだが、そっちは幼馴染みに任せることにする。
正門付近の戦況が危うい。
すでに相当数のモンスターが校内に侵入しているが、問題なのは、今も新手が続々と正門を突破していることだ。
新たな侵入さえ完全に遮断できれば戦線は まだ立て直せる。
委員長はそれができないから絶望していたわけだが、俺たちのPTならできる。
俺は、正門を抜けようとするモンスターに『爆裂魔法Ⅰ』を連射した。
我先にと突撃してくるモンスター共は、互いの肩がぶつかりそうなくらい密集しているから、細かく狙いを付ける必要はない。
群れに向かって撃てば勝手に当たる。
モンスターは次々に爆散していった。
その間、正門の内側では、バットマン5人を囲んでいるモンスター共が、後衛部隊の『火炎魔法Ⅲ』で着実に片付けられていく。
俺のおかげで そっちに参戦するモンスターは皆無だから、遠慮がちで効果の薄い『火炎魔法Ⅲ』でも、撃てば撃つだけ磨り減らすことができた。
俺も正門を制圧しながら たまに『爆裂魔法Ⅰ』で援護射撃をした。
ただ、バットマンに当てないよう気を付けながら撃つのは想像以上に神経を使うので、援護は最小限にしておいた。
それでも俺の殲滅力は際立っていたけど。
やがて校内のモンスターが一掃されると、バットマンたちには後衛部隊の位置まで下がってもらった。
後は単純だ。
正門をデッドラインに設定して、踏み越えてきたモンスターを爆破するだけで良い。
何も知らない奴からすれば、モンスターが正門に到達した直後に自動的に弾け飛んでいるように見えるだろう。
俺は思った。
よし、勝ったな!




