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第01話 異世界スマホ

 いつの間にか俺は机に突っ伏していた。

 さっきまで数学の授業を受けていたはずだけど、どうやら寝てしまったみたいだ。

 顔を起こして周りを見てみる。


 …………。

 異様な光景だった。

 クラスメイトが ひとり残らず寝入っている。

 先生の姿は見当たらない。


 なんだこれ?

 何かの用事で先生が教室から出て行ったのを良いことに、全員でお昼寝タイムに突入したのか?

 超真面目な委員長(美少女)まで一緒になって?


 俺が戸惑っている間に みんな次々と起き始めた。

 あくびをしたり伸びをしたり。

 本当に眠り込んでいたらしい。


 クラスメイトのひとりが机からスマホを取り出すと、周りに向かって言った。

「これ誰のだ?」

 本人が元々持っていた機種とは違うようだ。


 ひょっとしたら。

 俺も屈んで自分の机の中を確かめてみた。

 思った通り、同じようなスマホが入っていた。

 中にあるはずの教科書やノートは無くなっている。


 スマホの画面にはハイテンションな文章が表示されていた。


・君たちは学校ごと異世界に転移したよ!

・30分後に一万匹のモンスターが襲撃してくるよ!

・戦うためのスキルをこのスマホで獲得できるよ!


 うん……。

 異世界ってなんだよ。

 しかもモンスターって。

 襲撃?


 まだ続きがあるから一応 読んでおこう。


・モンスターが学校の塀を乗り越えることはないよ!

・この学校は塀に囲まれているから、侵入経路は正門と裏門の二箇所だけだよ!

・門は閉められなくなってるよ!


・似たようなクエストは何度も行われてきたよ!

・けど99.99%はクリアできなかったよ!

・思い切りの良さが勝利の鍵!


 最後の『思い切りの良さが勝利の鍵!』という文字だけが太字で強調されてるけど、そこ重要か?


 スマホを弄っていたら、『スキル獲得手順』とか『モンスター情報』とか『レベルアップについて』とか、なんか色々な項目が出てきた。

 選択すれば詳細が分かるんだろう、たぶん。

 インターネットには繋がらないようだ。


「翔太くん」

 呼ばれて振り返ると、後ろの席の小野寺つばさが俺を じっと見つめた。


 つばさは俺の幼馴染みだ。そして美少女だ。

 控え目な性格だが、物怖じするわけじゃない。口数が少ないだけで、何事にも動じずクールビューティーを貫く。

 現に今も、表情だけで判断すると、この状況に対して何の感情も抱いていないかのように見える。

 実際は色々考えてるんだろうけど。


「ちょっと待ってくれ」

 俺は席を立った。

 話をする前に異世界とやらを見てみたかった。

 スマホの説明を信じたわけじゃない。でも、万一 本当だとしたら。

 そう思うと座っていられなかった。


 窓に近寄り、校外の景色を確認する。

 空は快晴だ。青空に僅かな雲が浮かんでいる。

 問題なのは地表だった。何も無い。いや正確には岩とか砂とかがあるんだけど、見渡す限りそれしか無い。

 街はどこへ行った?


 って言うか、よく見たら空もおかしいぞ。

 太陽がふたつある。

 絶対におかしい……。


 俺は自分の席に戻り、横向きで座った。そして片方の手を後ろの机に置き、顔もそっちへ向ける。

 つばさと話す時のいつもの半身姿勢だ。

 ただし今は俯いていた。つばさの机に視線を落としている。

 なんとなくだが、視線を合わせる気には なれなかった。


 俺はそのまま呟くように言った。

「本当にここは異世界なのかもしれない」


 つばさは無反応だった。

 その代わり、隣の席に座っている窓際の男子が「え?」と言いながら外を見た。

 すぐにそいつは周囲に向かって大声を上げた。

「おい! 見ろ! おい!」

 それからは教室中が大騒ぎだ。


 俺も動揺していたと言わざるを得ない。

 つばさの机に置いた手が震えていた。

 強く握っても震えが止まることはなかった。


 不意に、つばさの手が俺の拳を覆った。

 顔を上げると目が合った。

 見慣れた瞳なのに なぜか見入ってしまった。黒目って本当に真ん丸なんだな、なんて場違いなことを思ったりもした。

 気付いたら震えは止まっていた。

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