片恋彼女
『キミがすき』
そんな届かない言葉、口に出せない言葉。
カリカリとペンを動かす。
心臓の仕組み、と書かれたノートを見てため息が出る。
「胸が苦しい」
一旦止めた手を再度動かす。
独り言だったのだが隣の君はそれに反応して問いかけてくる。
病気かと問われれば迷う。
もう一度手を止め宙を仰ぐ。
んー…、と軽くうなってから「そうかも……」とため息。
「いっそ心臓ごと取り除きたい」
ポン、とペンを放り投げた。
隣の君は首を傾げる。
「え?死ぬの?」
笑顔で聞いてくるからタチが悪い。
というか死んで欲しいのか。
ぎゅむっ、と彼の頬をつまむ。
「そういう意味じゃないっ!」
語尾を強めて言い切る。
ぎゅーっ、と頬を抓ることも忘れずに。
何なんだ、まったく。
「いたいっ!抓らないで?!」
悲鳴を上げる彼。
それでも私はお構いなしに力を込める。
彼の手が私の手に触れた。
「でも…よかった」
ホッとしたような声。
何が良かったのだと私は横目で彼を見る。
目が合った彼は笑いながら私の腕を掴み、頬から離した。
ニコッという効果音がつきそうな笑顔。
「君に死なれたら困るから」
それはどう言う意味ですか。