原発でタバコを吸うと 怒られました1
俺は、シガレットバーのVIPルームで、今成というオーナーに紹介された。
「井原さんと話してましたね」
それがどうしたというのだ。
「彼があなたを気に入ってるというのが、興味ひきましてね…」
す
今成は、俺に切り出した。
それよりびっくりしたのは、隣にいる男だ。
そいつは、昨日まで世間をにぎわしていたあの禁煙クーデターの張本人だ。
「あっ・・・この人の事は気にしないでくださいね」
そんな事を言われても、気になるのは仕方ないだろう。
今成は続けた。
「あなたの事は調べましたよ。」
俺は一介のサラリーマンだ。
こいつに調べられる所以などない。
にも関わらず、俺の住所年齢本籍など、スラスラ披露し、
勤務先や仕事内容、さらに収入、そして、評価まで。
「タバコで睨まれてますね。」
さらに彼は続けた。
「いえいえ、私は味方です。タバコで睨まれるなんて道理は許せない。そもそも嗜好品で、人格まで烙印を押すなんて暴力ですから」
だから、このバーを作ったということ。
「でね、ここでチームを組んでるんですよ。タバコ反逆団!」
こいつが、禁煙クーデターの黒幕?
「単刀直入に言います。あなたに、協力して欲しい」
俺が返事に困っていると、
「ただとは言いません。月75万、活動費出します」
いまの手取りの3倍だ。
喫煙傭兵の誕生となった。
「当面、今の仕事も続けて下さい。カモフラージュです。
いつものように、さぼりで!」
肺がん男山本村原発のそばで育った井原が、隣で怒りをぶちまけ始めた。
「明日、5月31日は世界禁煙デーなんだよ。
だからこの日の取締りはかなり強化される。
でだ、俺はこの日にやろうと思う」
となりで、クーデター男が聞き返す
「今度は原発でタバコを一服ですか」
何を言ってるんだ、こいつらは?
原発?
今成が続ける。
「政治は、国民の健康を冒涜している。
いい例が、2014年に、政府は高血圧の基準値を変えたろ!
140が147でOKになった。どうしてかわかるか?」
そういう研究結果がでたのだろうな~
「だまされちゃいけない。逆から見ろ!
この変更で患者はへるから、国の医療費もへる。
要は、国民の為ではない。国の財政問題!」
そんなことで、健康と不健康の基準が変わるらしい。
だから、国の言う事など信じるなってロジックらしい。
おかげで、俺は山本村の原発の前に来ることになった。
最後の一服をしていると、井原が話しかけてきた。
「君は帰ってもいいよ、独身だし若いし、まだ未来はある」
「いや、いいんです。どうせ退屈な毎日ですし、
なんか楽しそうだし、原発嫌いだし」
「そうか?しかし軽いな~」
原発でタバコを吸うなんて、なかなかない経験。
しかも、今成がくれた台本には、帰還率50%とある。
今回は、前回のクーデターと違い、反原発組織も協力してくれているので、内部にも協力者が複数いて、逃走は簡単らしい。
そもそも山本村の原発は、老朽化が激しく、稼働率も低下し、
多くの職員は、リストラされ、最低人数で動かしているらしい、
俺たちは、リネン業者を拉致し、車を乗っ取り、後は、突入。
「そろそろ行くよ」