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煙草吸えないから クーデターしてみました

自衛隊○○駐屯所の医務室には、増田と田中という二人の自衛官が、

いつもカウンセリングを受けに来ていた。

国を守るという重圧は、プレッシャーがかかる・・・だから不思議なことではない。


増田はある日を境にますます物忘れがひどくなっていた。

仕事場にあった他人のコートを着たまま帰るし、昨日約束した打ち合わせは来なかったし

最後は、土曜日に出社してきて平日と間違っているらしい。


周りは増田を徹底的にボケと決めつけていた。

確かに10個言った指示の半分は、翌日に忘れいてる。が。目の前にいるこいつよりましなのは、悪意がないこと…うそつきではないことだ。

単に、メモれば、大半の物忘れは間に合う。


「そんな憐れむものじゃないよ。人間なんて、20代を境に一日10万個の神経細胞が

 死滅していくんだから、遅かれ早かれ君もそんなに変わらなくなる」


忘れる奴は、怪物でもある。

次々忘れるから、あまりストレスもたまらない。


それに対し、すべてに細かく覚えているA型の同僚・田中の方が問題なのだ。

彼は、言った命令はすべて覚え、それに対する調査も全てメモり

だれに何を聞かれても、すぐに的確な答えを出していた。


この自衛隊には、欠かせない人材であった。


ただ、ボケの増田も、神経質な田中も、しばらくして自衛隊をやめてしまった。

それぞれが、うつと健忘症という思い病気をかかえてしまったからだ。


そして、その彼らががある日、事件を起こすのだ。


その日、○○○駐屯地は、いつもと変わらない朝を迎えていた。


「おはようございます」


午前5時15分頃、一台のリネン業者のバンが、所内に入って行ったときは、

平穏な朝の風景であった。

バンで乗り込んだ業者は二人、そして、そのまま戦車の車庫へ向かっていった。


さらに20分後、通称TK=Xと呼ばれる10式戦車が、倉庫のシャッターを轟音とともにちぎり捨て、

そのまま所内を闊歩し、ゲートを乗り越え、町になだれ込むと、この一大事に、

○○市は、喧騒に包まれた。


これは立派なクーデターである。


テレビは緊急放送を繰り返している。


「この戦車に積まれている、DM53弾は、2000メートルの○○を持ち、

 その破壊力は・・・


強力な破壊力を持ち合わせた戦車は、有無も言わせず、邪魔するパトカーを踏みつぶし、

じわじわと時速60㎞で、南西へ進路を撮り続けていた。


そこにあったのは、地元の名所○○城であった。


天守閣に立てこもったのは、6名の男性であった。

その首謀者が、元陸軍自衛隊の田中啓二である。

その傍で、銃を構え、城への侵入者を威嚇しているのは、カウンセリング仲間の増田だ。


「主犯の田中啓二は、もともとこの自衛隊に所属していたみたいです。

 一年前、訓練中、脱水で倒れ入院、そこで心療内科にかかるように言われ、問診の結果

 鬱と判断され、休職・・・・・1ケ月後、退職しております。

 そして増田のほうも同じく健忘症にかかり、退職。」


警察は、田中は、鬱で退職に追い込まれたと見た方がよさそうだ。

増田も健忘症では務まらい・・・・と判断した。


その通りだった。

だが、田中にとっても、増田にとっても、唯一のストレス解消が「たばこ」だったのだ。

彼らが、心療内科に通い始めたのは、まさに隊内が禁煙になってからなのである。


「国を守ると言う事が、どれほど心理的に緊張感を与えるのか・・・・

 それが、国民には判っていない」


「俺が鬱になったのは、禁煙が原因なんだよ」


彼の要求は、実に簡単であった。

市内の路上喫煙の解放であった。


「彼が、鬱の原因を禁煙だと主張する根拠はない」


「たばこの効用など認めてはいけない」


しかし、禁煙がテロ行為を誘発したという事だけは、現実なのだ。


この事件、他の喫煙者にとっては、迷惑でしかなかった。

なぜなら、その後、起きたのは、さらに徹底的なたばこ撲滅運動だったのだ。


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