ホワイトポインセチア(回想5)
それから、半年が過ぎ
深澤は23歳、私は22歳
ある秋晴れの休日、突然に深澤から電話があった。
「蓉子ちゃん、会いたいんだ!!」
何だか、深澤のその声は 何時もになく妙に沈んでいた。
私は深澤に指示されるまま、深夜に自宅を抜け出した。
深澤は私を車に乗せ走り出した。
深澤に何か良からぬことがあったのは確かだが、私は一言も問い質さなかった。
なぜだか、聞かない方が深澤自身が救われるのだと感じたからだ。
「いいよ。抱いても」
「本当にいいのか!」
「本当にいいよ!」
深澤は、それ以上何も言わず、
車はラブホテルに着いた。
深澤は私の体に武者振りつき 何かを忘れてしまいたい様な荒々しい行為だった。
それには、たぶん愛など存在していなかったと思う。
明くる日、深澤から電話があった。
「蓉子ちゃん、ありがとう」
深澤は心の奥から御礼を言っている‥そう思えた。
余計なことは言わないし私も聞かない。
あれほどまでに深澤との関係に拘り続けていた私が‥どうして このような真似をしてしまったのだろう。
そう、深澤の心の叫びを感じたから!!
そう答えることしか出来ない。
深澤に対する気持ちは消えてなかったのだ。
そして、この出来事は私の中で嵐のように過ぎ去った。
何もなかったかのように
あれは、OLになって一年目の春
付き合っていた彼から借金を頼まれた。
マンションを借りる頭金が少し足りないのだと言った。
金額は20万。
そんな大金、働き出して一年目の私に貯蓄などあるはずがない。
彼の本音を確める術もないほど私は、彼にのめり込み貢ぐ女になってしまっていたのだ。
勿論、周りも全く見えておらず
「恋は盲目…」
それとは少し異なった自分勝手な一途な恋をしていた。
そして、そのお金をなんと深澤に借りたのだ。
何も聞かずに20万貸して欲しいと言うと〜
深澤は、本当に何も聞かずに私に20万のお金を貸してくれた。
深澤が私のお願いを聞き入れ私の為だと用意してくれたこと…
そんな深澤の気持ちを踏みにじっている。
訳を謂えば、そんなバカな話は聞いたことがない!
この時は、借りることに夢中で深澤の気持ちなど微塵にも思いやっていない私だったと思う。
私は、2ヵ月分のお給料を待ってもらい全額返金した時も、深澤は何も聞かなかった。
そのことに調子に乗った私は、彼とスキーへ行きたくて雪道に常備している深澤の車をも借りたりした。
その彼とは、それから2年の月日が流れないとバカな私は騙されていることに気づけなかったのだ。
恋人だと思っていた彼は、二股も三股も掛けていたのだ。
やっと見切ることが出来たのだ。
体も精神的にも傷心しきっていた私に友人が、一人の男性を紹介してくれた。
私の大嫌いなヤンキーだったが、背が高く とても綺麗な顔立ちに胸がキュンとした。
しかし、縁とは解らないもので…
道端で会っても通り過ぎる目も合わすこともなく出来れば関わりたくないヤンキー
この男性と結婚する話しが進んでしまった。
妹も3年前に嫁に行き、俗にいう適齢期とやらに差し掛かった私を両親は攻め続ける!
その煩さ、回りの目、そんな煩わしさから逃げ出したかったのかもしれない。
交際しているといっても、一月に1~2度しか会わないヤンキー彼氏と結婚することになってしまった。
余りにも呆気なく人生の節目って訪れてくるものなんだと
「人生ってこんなものなのかもしれない」
私は能天気で安易な考えをしていたもんだ。
挙式を一週間前に控えたある日
突然、深澤から電話があり呼び出された。