ホワイトポインセチア(回想2)
そして、一年が過ぎ私は美大に進み、家を出た。
ある日、名古屋にいる深澤から手紙が届いた。
『蓉子ちゃん、大学の文化祭があるんだ。よかったら遊びにおいで…』
私は嬉しくって近鉄特急に飛び乗った。
深澤は、文化祭には行かず、私を次々に大学の友人たち紹介した。
気が付いた時にはラウンジで2人っきりになってしまっていた。
その上、深澤は足も立てないほど酔いつぶれてしまった。
右も左も判らない名古屋の繁華街。
時間は刻々と過ぎ、日付が変わりそうである。
私は、仕方なく深澤を抱えタクシーに乗り込んだ。
タクシーの運転手さんは 申し訳なさそうに私に言った。
「ごめんね、この時間だと、こんな所しか…、見れば、まだ年若い娘さんをこんな処に降ろすには申し訳ないね」
「いえっ、大丈夫です。ありがとうございました」
私は、そう言って深澤を引き摺り降ろしネオンが耀く入口へと入っていった。
当時、関西の学生たちはアイビールックやハマトラルック。
また、変わったところではハウスマヌカン調のルーズルックが流行していた。
私は、ポロシャツに膝上のミニタイトにハイソックスを履いていた。
名古屋の女子大生のようなブランド品をキラキラ身に付けていた訳ではなく、高校生だと思われたのかもしれない。
まぁ、そんなことは、どうでもいいこと。
私は生まれて初めてラブホテルに入った。
どうにか、こうにか深澤と部屋に辿り着いたのでした。
部屋に倒れ込んだ深澤は寝てしまった。
大阪を発つ時、私はバージンを失う覚悟は出来ていた。
しかし、目の前で起きた想定外の出来事に戸惑いを隠せなかった。
眠いが眠るわけにも行かず~
すると、一時間ほどが過ぎただろうか!?
深澤は徐に立ち上がり洗面所へと消えた。
暫くして戻ってきた深澤は胃の中の物を吐き出したのか、顔色が悪そうに見えた。
そして、私に こう言った。
「ごめんよ、蓉子ちゃん!!こんな醜態をさらけ出して…本当にごめん。
疲れたろう~お風呂にでも入っておいで~」
私は深澤に言われるまま、お風呂に入った。
そして‥
次に深澤が言ったことは
「蓉子ちゃん、心配しなくていいよ。何もしないから、ゆっくり寝るといいよ」
ショックだった!!
『何もしないから…』
その言葉が私の頭の中をグルグルグルグル回り一睡も出来ずに朝を迎えた。
そう、深澤との一夜は指一本触れられることなく終わったのだ。
私に魅力がないのだ!
名古屋になんて来るんじゃなかった!
私が馬鹿だった。
私たちは、地下街で朝食を摂った。
私が沈んでいることを察したのか深澤は妙に明るく私を元気づけようとしている。でも、私の心は閉ざされ後悔の念に駆られていた。
近鉄特急に乗り込む私に深澤は追い撃ちをかけた。
「蓉子ちゃんは、僕の大切な妹だよ」
い・も・う・と
深澤は私を恋愛対象と見ていないことを理解しなければならない。
そう思えば思うほど~深澤への気持ちが募るのです。