天久鷹央の日常
(画面の中で天城が「いいよ。思いつく限りの死に方、試したらいい。全部救ってやるよ。あんた、もう死ねないんだよ」とキメ顔で言い放つ)
鷹央: (無言でリモコンを手に取り、画面をブチッと消す)
小鳥: 「えっ、鷹央先生!? これからいいところじゃないですか!」
鷹央: 「……ふん。 観る価値もない。時間の無駄だ」
小鳥: 「えっ…ちょっと待ってくださ」
鷹央: 「もし木崎が盆の窪にメスを突きつけていたらどうする? たった4センチメスが刺されば、延髄は物理的に破壊され、呼吸も心拍も一瞬で停止する。救うも救わないもない。そこにあるのは、不可逆的な生命活動の停止……ただの事象に過ぎないんだ。感情が知性を上回ると、人間はこうも簡単に『物理法則』を忘れるのか……? 恥ずかしくないのか?そんなのは医学以前の問題だ。」
小鳥: 「いや…でも天城先生ってすごいじゃないですか。どんな手術も成功させるし」
鷹央: 「成功率100%?そんな統計は現実には存在しない。もしあるなら、母集団が1だ。亅
小鳥: 「まあ……それに…視聴率とか、希望とか……」
鷹央: 「希望?病は希望で治るほど甘くない。データだ、統計だ、再現性だ。脚本を書いた人間は医学部の前を通ったことすらないだろうな」
小鳥: 「………はいはい」
鷹央: 「だからアイスだ。糖分は脳のエネルギーになる。つまり合理的だ」
鷹央: 「小鳥、思いつく限りのアイスを全部買ってこい」
小鳥: 「全部ですか!?」
鷹央: 「全部食べ尽くしてやる」
小鳥: 「……それ、さっきのドラマの影響ですよね亅
鷹央: 「は? 違う。私はただ糖分を補給するだけだ」
小鳥: (小声で)「絶対意識してるじゃないですか……亅
鷹央: 「あと、勘違いするな。これは単なる嗜好品の摂取ではない。ドラマの非論理的な展開を視聴したことによる脳のストレスを、グルコースの強制投与によって中和するための『治療』だ。よって、全種類を揃えるのは臨床的な必要性に基づいた判断だ。……わかったらさっさと行け、小鳥!」
鴻ノ池:(医局のドアを勢いよく開けて入ってくる)
「えーっ! 先生、ブラックペアン観てたんですか? 私も天城先生みたいなイケメンにオペされたいなー! シャンス・サンプルとか言われて、全財産の半分賭けちゃうかも!」
鷹央:「ああ、鴻ノ池。その『シャンス・サンプル』とやらは、ただのギャンブルだ。医学的根拠が皆無な上に、全財産の半分を要求するなんて、医師法以前に説明義務違反だ。それに奴は脅迫罪も該当する発言もしている。そんな犯罪者予備軍に執刀を任せるなんて、脳のどこかに腫瘍でもあるんじゃないか?」
小鳥: 「……絶対、日曜9時はテレビの前で待機してたくせに」
鷹央:「黙って早く買いに行け!1秒経つごとにお前のボーナスも1%減ってくぞ?」




