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第17話

 ララの鍛錬が始まってから、一週間。

 筋力も魔力も伸びてきている。


 着実に強くなっている。

 ……が、しかしそれを実感できているわけではないだろう。


 できれば適当な相手と戦わせて自信を付けさせたいところだが……。

 ララは元から強かったし、下手な相手と戦わせても自信には繋がらないだろう。


 どうしたものかと考えていたのだが、しかしララのお節介は減ってきている。

 修業で疲れているだけかと思っていたが、そういうわけではないらしい。

 最近は怖い夢を見る回数も減ったとか。


 知らないうちにメンタルが回復していた。

 何が何だか……女の子の機嫌なんてそんなものだから、気にしても仕方がないか。


 なお、「じゃあ、もう添い寝はいらないか」と言ったら拗ねられてしまった。

 結果として、数日に一回は添い寝を続けている。


 おかげで、屋敷の内部では「ララはエルミカ様の寵愛を受けている」と認識されてしまった。

 もっとも、俺の家臣たちの中には、外部に情報を漏らすような口が軽い物はいない(リリはうっかりで漏らしそうなので少し心配だが)。


 外に漏れなければ醜聞にはならないし、問題あるまい。

 政略結婚を引き延ばす口実にも使えそうだし、決して悪いことばかりではない。


 問題があるとしたらララの名誉であり、彼女が嫌がらないかどうかだが……。

 しかし満更でもなさそうだった。


 もっとも、だからといって俺のことが好きだと勘違いするほど、俺は馬鹿じゃない。

 俺の愛人と認識されることが、自分と妹の地位の向上に繋がると考えてのことだろう。


 したたかな子だ。


 一先ず、ララの問題も片付いた。

 書類仕事も一段落しそうなので、そろそろ外回りの仕事をしなければ。


 ということで俺は久しぶりにファルティナのところを訪れたのだが……。


「何の御用ですか?」


 ファルティナは拗ねていた。

 どうにも彼女は寂しがり屋のようで、しばらく顔を見せないと拗ねる。

 慣れない異国の地で寂しいのは分かるが……。


「デートの誘いをしに」

「ふーん、デートですか」


 機嫌を直してもらうためのリップサービスだったが、ファルティナの声音は冷たかった。

 おかしいな。

 前はこれで機嫌が治ったのだが。


「それで今回はどこですか? 墓場ですか? 廃村ですか?」


 ファルティナの神聖魔法が王水並みに最強であることが分かった。

そこで一か月前、今まで放置してきたアンデット系の案件を解決しに、ファルティナを「デート」と称して連れ回した。

そのことを根に持っているらしい。


「この前は悪かった。……俺が無神経だった」

「本当に悪かったと思っている人は、また同じような嘘は言わないです」

「今回は本当にデートだ」

「そんなことを言って。どうせ、仕事でしょう?」

「あぁ、いや、まあ……それはそうだが」


 デートではあるが、本当に遊びに行くわけではない。

 あくまで仕事の一環である。


「ご安心ください。仕事の依頼であれば、喜んでお引き受けしますよ」

「そう言ってもらえると、ありがたい」

「そもそも、あなたのような女誑しとデートなんて、行きたくありませんから。何をされるか、分かりませんし」


 プイっとファルティナは頬を背けてみせた。

 本気で怒っているわけではないようだ。

 彼女はその気になれば大人の対応ができる女性だ。

 こういう態度を見せてくれるのは、むしろ俺に気を許しているからこそだろう。

 ……もっとも、拗ねているのも本当だろうけど。


「それでどんな仕事ですか?」

「ダンスパーティー」

「え?」


 俺の回答にファルティナは驚いた様子で目を見開いた。

 それから少し考え込んでから、不機嫌そうな表情で俺を睨む。


「魔王軍と戦うという意味ですか? 紛らわしい、女性を弄ぶような表現はやめてくださいと言ったはずですが?」

「いや、一般的な意味のダンスパーティーだけど」

「……どういうことですか?」

「都市連合の貴族が集まる社交が開かれるから。俺のパートナーとして、ダンスパーティーに一緒に出席して欲しいなと」


 ネクロス討伐の祝賀会も兼ねているので、できればファルティナには出席して欲しい。

 都市連合の貴族たちと顔つなぎもできるし、ファルティナにとってもメリットは大きいだろうと思っていたのだが。


「え……と、ということは、それって、つまり……本当にデートということですか!?」

「だから最初からそう言っているが」


 ダンスパーティーでは、男女一組で出席するのが決まりだ。

 多くの貴族は夫婦や婚約者同士でやってくる。

 もっとも、パートナーは異性であればよく、妹や従姉妹のような親戚でも全く問題ない。

 デートという表現は、中らずと雖も遠からずである。


「でも、俺とデートが嫌ならいいよ。別の人を誘うから」


 ダンスパーティーに出席するのは今回が初めてではない。

 パートナーとして誘えそうな女性の候補は何人もいるし、俺と一緒に出席したいという女性は少なくない。

 それでもファルティナを誘ったのは、彼女が仲間であり、信用できる人だからだ。


 俺は“勇者”として政治的中立性を保たなければならない。

 特定の貴族に借りを作るような真似は、できれば避けたいのだ。


「行きます!」

「いや、でも嫌なら……」

「嫌なんて言ってないです!」

 

 いや、でもさっきデートは嫌って……。

 仕事としての側面もあるから、引き受けてくれるということだろうか?


「ところでドレスは持っているか?」

「いえ、持っていません。……司祭服ではダメですか?」

「あまりよくないな」


 それでは「神聖教国」カラーが全面に出てしまう。

 俺が連れて行きたいのは、神聖教国の司祭ファルティナではなく、(偽)勇者パーティーの聖女ファルティナだ。


「それじゃあ、ドレスを仕立てるところから始めよう。装飾品とかも揃えないとな」


 今後、何度も必要になってくるだろうし、無駄にはなるまい。

 俺がそう提案すると……。

 ファルティナは両手を頬に当てた。


「そ、それってつまり……ほ、本当にデートじゃないですか!」


 だから最初からデートって言ってるだろう。



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…日頃の行い、かな?(・ω・`)
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