表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第16話

「はぁン、っちゅ……」


 何かが口の中に入り込んでくる。

 舌でそれを押しのけようとすると、逆に絡め取られてしまう。

 強く吸い上げられる。

 体の力が抜ける。


 さて、どうしたものかと思いながら、一先ずされるがままになる。

 散々、俺の唇と魔力を貪ったララは、十分ほどしてからようやく唇を離した。


 つい先程まで魔力欠乏により、蒼白だった顔は血色のよい肌色へと変わっていた。

 青を通り越し、もはや赤い。

 そしてとろんと目を蕩けさせている。


 魔力と体力は回復した様子だが、しかし様子がおかしい。


「ララ。回復が済んだら、俺の上から退いてもらえると……」

「まだ、足りないです」


 ララはそう言いながら、自分の胸元に手を伸ばした。

 そしてボタンを一つ一つ、外していく。

 ピンクの下着と、年相応の控えめな胸が姿を現した。


「えっと……何をするつもりなのかな?」

「こ、この方が、効率がいいはずです」

「俺は何をするつもりなのかと……」


 カチャっと音を立て、ララのスカートのホックが外れた。

 ストンっとスカートが落ちる。

 下着だけになったララが俺の顔を覗き込む。


「し、失礼します」

「いや、待て! 失礼するな! さすがにこれ以上は……」


 俺はララを両手で押しのけようとする。

 しかし彼女は俺の両手を強い力で握りしめると、そのままの勢いで俺の唇を奪った。


「はむっ……っちゅ、ん!」


 ば、馬鹿な……。

 俺が抵抗できない、だと!?

 どこにそんな力が……いや、違う!


 俺が弱体化しているんだ!!


「エルミカ様……もっと、もっとください……!!」

「い、いや、もう十分だろう。そろそろ退いて……」

「こ、これは、修業のため、修業のためですから!」


 ララはそう言いながら俺の服に手をかける。

 肌をはだけさせ、俺の胸板に指を這わせる。

 それから俺の胸板に柔らかい胸を押し当てる。

 小さめでもおっぱいはおっぱい。

 押し付けられると、「おぉ……」となる。

 むしろ小さい胸を必死に押し付けようとしているので、体の密着具合が凄い。

 ……いや、そうじゃない。


「ララ、落ち着こう。これ以上はよくない。お互い、まだ十代だ。避妊具もない。そういう行為をするには早いだろう」


 勇者が不純異性交遊はダメだろう。

 俺はそんな正論を目の前の少女に説くが……。


「ご、ご安心、ください。初めてですが……母と父の情事は、盗み見たことがあります。私は人より、器用なので。一度、見たものは、ほとんど再現できます!」

「そんなことで才能を発揮しなくていいから! 退きなさい!」

「そ、そんなことを言って……エルミカ様も、興奮していますよね? わかります。だって、そうじゃなかったら、吸えませんから」


 しかしいくら口で説得しようとしても、ララが止まる気配はない。

 挙げ句の果てにララに再び、口を塞がれてしまう。


 果物を少しずつ囓るように、小さな口で何度も啄むようにキスをする。

 飴を舐めるように、チロチロと舌で舌をを転がす。

 ストローでジュースを飲むように、俺の魔力と体力を吸い上げる。


 ま、不味い。

 体に上手く力が入らなくなってきた。

 このままでは本当に薄い本みたいになってしまう。


 ……いや、まあ俺が今世の貞操を失う分はどうだってよいのだが。

 ララが妊娠するのはよくない。

 この世界の医療水準では、低年齢での出産はハイリスクだ。


 何より、今のララはどう考えても正気ではない。

 薬やアルコールでアッパーになるのと似た状態であると考えてよいだろう。


 一般論として貞操というものはそれなりに大事な物だ。

 このような形で失うのは、彼女の今後の人生を考えるとよくない。


「ララ、こ、これ以上は、よくない。だ。ダメだから……」


 口が自由になったタイミングで最後の説得を試みるが、呂律が回らない。

 もう指も動かせない。


 しかし俺の言葉はララに届いたらしい。

 俺の胸板や首筋、耳に吸精(キス)を繰り返していたララの動きが止まる。


「ダメってことは……良いってことですよね!?」


 どういう理屈!?


「母が父に言っていました。こ。こういう時のダメってのは、良いって意味だって……だ、だから、そういうことですよね!?」


 それはそういうプレイだろ!? 合意の上だろ!?

 俺は合意していないんだが!?


「そ、それでは……せ、精一杯、ご奉仕させていただいます」


 ララはそう言いながら俺のズボンに手をかけた。

 これは回避できなさそうだな。


 仕方がない。切り替えて、この後のことを考えよう。

 貴族が使用人に手を出して、非嫡出の子供を作ってしまうというのは、よくあることだ。

 俺の死んだ父もその手のやらかしをしているので、良くも悪くも対処のノウハウはある。

 致命的な醜聞にはならないだろう。


 しかし勇者のイメージ的にそれはありなのだろうか。

 今後の活動に支障が出なければよいのだが、


 それに子供の将来やララの名誉を含め、公開した方が良いのか、非公開が良いのか……。


 などと考えていた、その時だった。

 ガチャ。

 ドアノブを回す音がした。


「あ、あれ……?」


 開かれたドアの向こう側には、掃除道具一式を手に持った青い髪の少女――リリが立っていた。

 どうやら無人だと思っていたらしい。

 きょとんとした顔で首を傾げ、それから大きく目を見開き、口元に手を当てた。


「え、エルミカ様!? お、お姉様!? ……あ、いえ! 私は何も見ていません!!」


 リリは顔を真っ赤に染めると、慌てた様子でドアを閉めた。

 廊下で盛大に転ぶ音がする。


「リリ!? そんなに慌てて、どうしたの?」

「どうもしていないです。な、何も……何も見ていません!! お、お姉様とエルミカ様の情事なんて、見ていないです!」

「え? 情事!? それはつまり、どういうこと?」


 廊下で使用人たちが盛り上がっている声が聞こえる。

 しかしこれで屋敷中には知られることになったな。

 幸いにも外に漏らすような使用人はいないが。


「……」


 視線をドアから正面――ララへと戻す。

 彼女は顔を真っ赤にし、俺のズボンを脱がそうとする姿勢のまま固まっていた。


「ララ。大丈夫か?」


 気づくと自然に声が出せるようになっていた。

 力が体に戻っている。

 力を奪うというよりは、麻痺させるというのが正解だったのかもしれない。

 俺はゆっくりと体を起こし、呆然としているララの肩をつかむ。


「ひゃん!」


 ララは声を上げ、それから初めて自分が下着であることに気づいたような様子で、恥ずかしそうに両手で胸元を隠した。

 俺は毛布を彼女に掛けてあげながら、再び訪ねる。


「魔力は回復したか?」

「あ、はい……」

「続きはするか?」

「え? あ、そ、それは、その……」


 どうやら正気に戻った様子のララは、気まずそうに目を伏せた。

 それからほんのりと赤らんだ顔を上げ、潤んだ瞳で俺を見つめる。


「え、エルミカ様が、し、シたければ……」

「冗談だ。本気にするな」


 一時的に催淫状態になっていたからこその暴走であって、平常時の今はそんなことはしたくないだろう。

 俺はララを安心させるために、笑い飛ばす。

 彼女もどこか安心した様子で、小さくため息をついた。

 ……残念そうに落ち込んでいるようにも見えたが、それはきっと気のせいだろう。


「ひとまず、服を着たらどうだ?」

「は、はい!」


 ララはベッドから飛び退くように降り、いそいそとメイド服を着直した。

 俺もララに脱がされた服を着直す。


「さ、先ほどは……失礼いたしました。ど、どう、お詫びしたらよいか……」


 着衣を正したララは、顔を青ざめさせながら俺に向き直った。

 今更ながら、自分がやりかけたことの重大性に気づいたようだ。


「俺は気にしていない。……自分でもああなるとは、思っていなかったんだろう?」

「い、いえ……催淫効果があることは知っていたので、予期できることでした……」

「しかしあれほど理性がなくなるとは思っていなかった。そうだろう?」

「そ、それは……は、はい」

「誰にでも失敗はある。俺も内容を聞いてからにするべきだったしな」


 俺の方が年上なのだから、その辺りはしっかりするべきだった。

 俺のガバガバ危機管理のせいである。


「だから俺は気にしていない」


 俺は再度、そう伝えてからララの頭を撫でる。

 一先ず、俺が怒るつもりは全くないことはしっかりと伝わったらしい。

 ララは安堵の表情を浮かべた。




 一先ず、ララの魔力と体力は回復したということで、彼女は業務へと戻っていった。

 しかし彼女なりに反省したらしい。

 昨日のように風呂場の中まで押しかけて来ることはなかった。


 もっとも、これは「エルミカ様に嫌われたくないから」であって、「エルミカ様の役に立たなければ」という強迫観念がなくなったわけではあるまい。


 むしろ悪化しているかもしれない。


「どうしたものか」


 就寝の時刻になり、俺は一人悩む。

 昨晩、ララとは「添い寝」の約束をした。

 彼女のメンタルケアのためである。


 しかし今日のやらかしの後に、添い寝に来るとは思えない。

 だが俺の方から誘うというのも、どうなのかという話である。

 

 ……一応、様子だけ見に行くか。

 悩んだ俺はドアを開け、廊下に出る。


「あ」

「おっと」


 そしてドアの目の前でララと鉢合わせした。

 薄いネグリジェと毛布を身に纏っている。


「あ、あの……その……」


 ララは俺の顔を見るなり、不安そうな表情をした。

 視線を泳がせ、何か言いたそうにしている。

 きっと俺のところに添い寝に行っていいか、迷っていたのだろう。


「入って」

「……はい」


 ララは頬を緩ませながら、小さく頷いた。






 体が少しずつ冷たくなっていく。

 体の感覚が溶けていく。

 どうしようもない恐怖と寂しさ。


 ……どうやら私はまた、“死ぬ夢”を見ているらしい。


 ――タスケテヤロウカ?


 助けは……要らないわ。

 私はいつの間にか、戻っていた手の感覚を辿る。

 そこには仄かな人肌の温もり、エルミカ様の存在を感じられた。


 エルミカ様がきっと、助けてくれるから。

 

 ――ソンナ……。


 がっかりしたような声だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ