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第57話 起死回生






 ……今この状況は詰みなのか?

 死……その言葉が脳裏をよぎる。

 今まで何回もギリギリを経験してきたがここまでのは初めてだな。

 やっぱり、深層攻略なんて諦めて逃げ出すべきだったか?


 ……いや、今更だな。

 ああしていれば、こうしていれば、なんて妄想ほど無駄なものはない。


“おい、これ大丈夫か?”

“え、やばそうじゃね?”

“柊だから大丈夫……ってわけにはいかなさそうだな”

“死ぬんじゃね?”

“おもろ”

“キタァァァ! イキりイカれ野郎なんてとっとと氏んじまえ!”


 俺は沼を睨みつける。


 この沼から抜け出せさえすればどうにでもなるのに……。

 俺はヤケクソで足に力を込め――


「〈ショック〉〈ショック〉〈ショック〉」


 足から短縮詠唱によって沼に向かって高速で三連続ショックブラストを放ってみる。


「うおっ!?」


 すると、泥と共に俺は土の手が小さく見えるほど空高くに上げられる。

 このまま、着地してすぐに土の手に向かって走れば……!


「〈ショック〉」


 俺は地面に向かってショックブラストを撃って減速しながら着地する。

 しかし、地面に足がつく寸前に地面はドロっとしたものに変化する。


「しょ、〈ショック〉!」


 俺は慌ててもう一度、ショックブラストを放って飛び上がる。


 クソがっ……こんなすぐに地面を沼に変えられてしまったら着地なんて到底できそうにない。

 かといって、空中にいたままだと狙いを定められないため遠距離魔法やショックブラストでの攻撃ができない。


 それならいっそのこと突っ込んでやろうか?


“意外となんとかなりそう?”

“柊、空中戦慣れしてなさそうで怖いな”

“こいつならやってくれると信じてる”

“頼むから、いつもみたいに良い意味で期待を裏切ってくれ……!”


「〈ショックブラスト〉」


 俺は後方にショックブラストを放ち、ジェットエンジンのように土の手に向かって一気に加速していく。


 姿勢を調整する。

 拳を大きく振り上げる。

 土の手はもう、目と鼻の先。


 ここで、決める。


「〈ショックブラスト〉ォォォ!!!」


 拳が土の手に当たると同時に俺はそう唱えた。

 叫ぶように、願うように。


 ――パァァァン


 土の手に俺のショックブラストは命中し、砂埃とともに土の手のものだったと思われる土が飛び散っていく。


「や、やったぞ……!」


 いつの間にかに地面は泥じゃなくちゃんとした土に変わっており、ロックゴーレムたちも力を失ったように倒れていた。


 確実にショックブラストは命中させたという手応え。

 砂埃の中で俺が見た土の手が砕け散る瞬間。


 俺はあいつを倒したのだ。


 そう確信した時、急にスキルを短縮詠唱で連発したせいか、安堵のせいか、急に俺の体にどっと疲労が押し寄せてくる。


 俺は地面に倒れ込むように座る。


“うぉぉぉぉぉ!!!”

“よくやった!”

“ナイス!”

“ナイスすぎる!”

“柊の配信は心臓何個あっても足りねえなww”

“天才すぎる”

“勝ったな、風呂入ってくる”


 俺はスマホでコメント欄をチラリと見る。


 一気に大量のコメントが流れてきていた。


「さてと……じゃあ、とっととこの平原からおさらばさせてもら――」


 薄くなってきた砂埃の中から何かのシルエットが見えたような気がした。


 それは人型だった……それも俺の何倍もの身長の。


 俺は慌てて身構えるが――


「あれ……?」


 砂埃が晴れた瞬間、目に入ったのはだだっ広い平原だけだった。


 さっき見えた巨人の姿はどこにも無かったのだ。


「き、消えた?!」


 もしかして、隠れているのかも……と思ったが、どこからも殺気らしきものは感じなかった。

 それどころか、俺がさっきまでずっとこの平原に感じていた嫌な感じが無くなっているのだ。


「な、なあ……さっき何か見えなかったか?」


“どうした?”

“なんかあったか?”

“見えなかったけど”

“疲れてんじゃない?”

“あんな大変な戦いしたんだから休めー”


 どうやら、コメント欄のみんなには見えていなかったようだった。


 じゃあ、本当にただの気のせいだったのだろうか。


「気のせいか……?」


 しかし、何だか俺は腑に落ちずにいた。


“大丈夫かよw”

“マジで休んだ方がいいよ”

“疲れてんだって”

“早めに寝床探して寝た方がいいぞ、知らんけど”


 ……確かに視聴者の言うとおりかもしれない。

 今日のところはとっとと寝床を探して寝るとしよう。


 俺はそう思って静かになった平原を歩き出す。


「うん……?」


 俺が一歩、踏み出した瞬間……どこからか、ゴゴゴゴゴという漫画の効果音のような音が聞こえてきた。


 モンスターの咆哮か何かだろうか。

 いや、違う、この揺れは――


「ちょ、ちょっと待て……」


 この地震のような揺れ。

 そして、徐々にひび割れていく地面と徐々に陥没していく地面。


 違う、これはモンスターの咆哮なんかじゃない。

 ――この平原が崩れ落ちる音だ。


「嘘だろォォォ?!?!」


 疲れ切っていた俺に出来たのは大人しく地面と共に自由落下することだけだった。



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