第55話 脱出方法募集するわ
「申し訳ないけど、視聴者の人たち……精神系の攻撃とか毒とか使ってくるモンスターを調べてくれないか? 特に姿が見えないやつとか」
“あいよ”
“言われなくても今調べてる”
“深層だからAからSランクくらいだよな”
“なんか、おもろくなってきたな”
せっかく、配信しているなら視聴者に調べてもらおうという魂胆だ。
俺はしばらく、周りを索敵しながら視聴者の回答を待つ。
試しに〈魔力索敵〉でもしてみるか。
「〈魔力索敵〉」
しかし、半径100m以内には俺とクリスタルホーンラビット以外、なんの反応もなかった。
いや、そういうとちょっと語弊があるんだけどな。
実は何故か、ダンジョンの地面や設置物にも少しだけ魔力反応があるのだ。
「どうだ? 見つかったか?」
“Sランクモンスターで精神異常とか、毒を使うモンスターはたくさん、居るんだけど姿が見えない奴は全然見つからん”
“そもそも姿が見えないモンスター自体、少なすぎてデータが全然ないぞ”
“これが幻覚とか幻聴って可能性は?”
「これが幻覚とか幻聴だったら、配信見てるお前らも精神異常になってるってことだぞ?」
“確かに”
“かなり調べてきたけど、見つからんかった”
眞白“大丈夫?”
コメント欄に『眞白』と青色で書かれた名前が現れた。
ま、眞白ちゃん?!
「あ……ま、眞白さんじゃないですか〜、ひ、久しぶりですね〜」
“眞白ちゃんや!”
“文字だけで可愛い”
眞白“呼び方、さん付けになってて草”
ギクッ……。
クランの件から俺は彼女に対して苦手意識を持っていた。
いやさ、まさか、眞白ちゃんのお父さんの大翔さんと俺が膝枕兄弟だったんだよ?
「あ〜、ごめんね、眞白ちゃん。しばらく話してないうちにどうやって呼んでたか忘れちゃった……それはそうと、眞白ちゃん、精神攻撃とか毒とか使う姿の見えないモンスターって知らない?」
俺は話を逸らすために、咄嗟に眞白ちゃんに質問する。
流石に眞白ちゃんが知っているはずがないか。
俺は急に無理なことを言ってしまったことが申し訳なくなり、謝ろうと口を開く。
眞白“知ってるかも”
「え? マジで?!」
俺の口から謝罪ではなく、驚きの言葉が飛び出した。
“眞白ちゃん有能で草”
“俺らより使えるやんけ”
眞白“とはいっても完全に姿が見えないモンスターではないんやけど”
眞白“モンスターの名前は『テレポーター・フォレスト』。《《森》》に擬態するモンスターらしい”
「森に……?」
聞いたことのない名前だ。
それに森に擬態するってどういうことだ?
眞白“そのままの意味やで。モンスターが普通の森と同じ見た目になるらしい”
眞白“その上、テレポーター・フォレストは森の中に入ったモンスターや人が森の出口に近づいた時、森の中心に転移させるらしいんや”
“初耳のモンスターなんだが?”
“マジで眞白ちゃん有能だな、おい”
“眞白ちゃん、ネットに侵食されてて草”
“あれ? でもここって平原じゃん”
「なるほど……なぁ」
森に擬態するモンスターか。
しかし、俺はもうすでに森から脱出できているため、そのモンスターのせいでは無さそうだ。
……いや、待てよ。
もしも、テレポーター・フォレストと同じ種類で平原に擬態するモンスターが居たとしたら――
「〈魔力探知〉」
俺は地面に手をつけて今度は地面に集中して魔力探知で索敵してみると
「なんだこれ……?」
平原は普通のダンジョンの床の何倍も濃い赤色に染まっていたのだ。
言わずもがな、わかると思うが、この赤色とは魔力のことであり、強いモンスターほど濃い色になる。
ここまで濃い色になるのはSランクモンスターくらいだろうか?
つまり、この平原は――
「Sランクモンスターの平原ってこと……?」
俺は絶句した。
俺は今、モンスターの上に立っている……そう考えるだけで恐ろしくなってくる。
“え、マジでこの平原モンスターなの?”
“流石にないだろって思ってたんだけど、柊の反応的にガチそう”
“デ、デカすぎるだろ”
“これ、モンスターの概念ぶっ壊れるぞ”
眞白“え、嘘でしょ、マジで合ってたの?!”
「うん、どうやらこの平原自体がモンスターらしい……」
しかし、どうしようか。
あのクリスタルホーンラビットを見た感じだと、この平原のモンスターは生命力を吸収する能力とか持っていそうだから早めに脱出したい。
だが、何度も転移させて閉じ込めてくるこのモンスター相手にどうやって脱出すればいいんだ?
よし、こういう時は――(2回目)
「一旦、コメントで脱出方法募集するわ」
“ショックブラスト撃って破壊しよう”
“ドリルで穴開けるとか?”
“殴ってみたら?”
“とりまショックブラストしよ?”
「ここには脳筋しかいないのか……? まあいいや、じゃあ一旦、ショックブラスト撃ってみるわ」
俺は地面に狙いを定め
「〈ショックブラスト〉」
手から空気の塊が放たれるとすぐに地面に着弾し、爆発した。
風圧で俺の体は宙高くに投げ出され、草木は激しく揺れる。
「うおっと……」
俺は着地すると変化がないか、地面を観察した。
が――
「明らかに効いてないな」
さっきと何にも変わっていなかった。
「じゃあ次!」
“コメントで脱出方法募集するとかイカれてて草”
“殴ろうぜ?”
“放火”
“一旦、殴ってみる?”
「おっけー、殴ってみるわ」
俺は拳を大きく振りかぶると思いっきり、地面に振り下ろした。
「――痛ぁぁぁぁぁ!!!」
俺は右拳を左手でさする。
わかってはいたが、予想の何倍も硬かった……。
しかし、苦労の甲斐あってか、殴った時に一瞬だけ地面が大きく揺れたような気がした。
「つ、次……なるべく俺が痛くないやつにしてくれ」
“ちょっと地面揺れた?”
“ショックブラストよりは手応えあったな”
“放火”
“草原だし、火放ってみたら?”
“やっぱ、炎かぁ”
「火か……やってみるか」
しかし、もしも燃え広がって俺が巻き込まれたらどうしよう。
……まあ、ショックブラスト使って逃げればいっか!
俺はカバンからマッチを取り出すと、火をつけて、それを地面に放り投げる。
すると、案の定、草原の草に火が燃え移った。
「こ、これ……大丈夫だよな?」
“多分”
“大丈夫大丈夫”
“俺らを信じろよ、ブラザー”
“何かあった時はちゃんと、仏壇作ってやるよ……この前みたいに”
おい、ふざけんな。この視聴者、勝手に仏壇作ってやがった。
俺は一抹の不安を感じながらも、さらに火が燃え広がるのを待っていると
――ゴゴゴゴゴ
地面がバランスを崩しそうになる程激しく揺れた。
「こ、これ、本当に大丈夫か?!」
俺がそう思っていると突然、地面に大きな穴が開き
「え……?」
俺の身長の2倍くらいの大きさの土で作られた手が生えてきた。




