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第50話 魔法道具





「まず、ここがどういう場所かわかるか?」


「商店街じゃないのか?」


「そうだ。ここは妖精族の町唯一の商店街。ピクシーたちは基本的にここで必要な物の全てを買う……俺たち市民にとっては最も大切な場所とも言えるだろう」


 ガイルは周りを見渡しながらそう言う。


「ちなみに、具体的に何があるんだ?」


「八百屋、教会、武器屋、防具屋……それと魔法道具屋なんかだな」


「魔法道具?」


 聞きなれない単語だ。

 もしかして、魔石をエネルギーとする道具のことだろうか。

 それなら俺も知っているが……。


「魔法の力を込めたり、魔石で動く道具とかだな……そうだな、実際に見てみた方がわかりやすいだろうから行ってみるか?」


「頼む」


「よし、付いてこい」


 歩くこと30秒、商店街の目立つ場所に魔法道具屋はあった。

 どうやら、結構需要がある店みたいだな。


「おーい、ヘイル爺さん! 今いいか?」


「なんじゃ……ほう」


 ヘイル爺さんと呼ばれた白髭を生やして小さな丸眼鏡をかけたピクシーが店の奥から出てくる。

 師匠と同じような見た目をしているが、ヘイル爺さんの方が気難しそうな感じがする。


 ヘイル爺さんは俺の存在に気付くと、興味深そうに俺とガイルの顔を交互に見始めた。


「まさか、友達のいないガイルが噂の人間と仲良くしておるとは……今日は槍でも降るのかのう?」


 へ? ガイル君ってまさかの友達いないの?!

 ……急に親近感湧いてきたかもしれない。


「お、おい……ヘイル爺さん、頼むからそれは言わないでおいてくれよ……」


「おっと失礼、歳を取ってから口も軽くなってしまったようじゃな」


「はぁ……そんなことより、今日はこいつに魔法道具がなんなのか教えてやろうと思ってきたんだよ。ヘイル爺さん、見せてやってくれないか?」


「ふむ……」


 ヘイル爺さんは顎に手を当てて考えると


「嫌じゃ」


 平然と拒否してきた。

 え?


「だって、この人間、すでに魔法道具を持っておるでは無いか」


「な、なに?! お前まさか俺の事を騙したのか?!」


 ガイル君は俺と距離を取ると今にでも攻撃してきそうな目で睨んでくる。


「待て待て待て、そんなの本当に俺は持っていないぞ?」


「……そうかのう、胸に手を当ててじっくり考えて見るとよい。特に左手を……な。」


 左手……あっ、そういうことか。


「もしかして、この指輪のことか?」


 俺は指輪を嵌めた指をヘイル爺さんの目の前に掲げる。


「そうじゃ、それじゃよ……なんじゃ、そんな希少な魔法道具を持っておきながら本当に知らなかったのか?」


「まあ師匠……えっと、ゼロ爺さん?に貰ったので」


「ほう、あの魔法オタクが……そうか、その指輪は勇者から……」


 ヘイル爺さんはボソボソと何かを呟くと、納得したように頷いた。


「いいじゃろう。魔法道具がなんなのか、教え欲しいんじゃったな?」


「そうだな」


「魔法道具とは鍛冶魔法や錬金魔法などで作った特殊な道具のことじゃ。他の道具との大きな違いはその道具に特殊な力が宿るということじゃ」


「……どういうことだ?」


 そもそも鍛冶魔法と錬金魔法ってなんだ?


「ふむ……例えばこれだ」


 ヘイル爺さんが棚から取り出したのは皮で作られた水袋だった。


「これは自動水袋というものじゃ……これに魔力を注ぐと勝手に飲水が生まれる……こんな感じにのう」


 ヘイル爺さんが魔力を注ぐと水袋は淡く光り、パンパンに膨らんだ。

 確かダンジョンの宝箱から出てくるアイテムで似たようなものがあった気がする。


 ピクシーはそれを自ら作り出せるのか。


「まあ、簡単に言うと魔力を注ぐと効果が発動する道具ってことだな」


 ガイル君が補足してくれた。

 あれ、それなら俺の指輪は……?


「大体の魔法道具はそうじゃ。しかし、あんたの指輪のようなものは例外じゃ……その指輪のような魔法道具は何故か、魔力や魔石がなくても動くんじゃ」


「なにそれ凄い」


「……ちなみに魔力無しで動く魔法道具はピクシーでも作ることが出来ぬから、アーティファクトと呼ばれておる……つまり、超希少じゃ」


「え……」


 アーティファクト……その言葉は地上でも使われてる。

 深層でしか手に入らないアイテムのことを指し、確か最低でも億以上の値が付いたはず。


 ……いや、師匠、そんな希少なもの軽々しく渡しちゃダメでしょ。


「しかし、あの魔法オタクがあんたに贈り物をしたとなればワシからも何かを贈るのが筋じゃな……そうじゃ、この水袋をやろう」


「え? いいのか!?」


「ああ、その指輪と比べれば少し見劣りするがな」


「ありがとうございます!!!」


 ちなみに滅茶苦茶嬉しい。

 水は食料よりも重要度が高く、長期探索の時はいつもバックに大量に水を入れていくから重かったのだ。

 カバンが軽くなればそれだけ戦闘がしやすくなる……探索者からしたら喉から手が出るほど欲しい道具だ。


 多分、これも売ったら凄い値段がするんだろうな……。


「……」


 そんなことを考えていたら無言でヘイル爺さんに悲しそうに見つめられた。


「も、勿論! 売らないからな?! 大事に使わせてもらうよ」


「そうか、あんたに使われるならこの魔法道具も喜ぶじゃろう……期待しておるぞ? 《《妖精族の英雄様》》」


「ははっ……」


 意味深にそう言うヘイル爺さんに俺は苦笑いを返して退店した。


 やってやるよ。

 Sランク探索者でも出来なかったこのダンジョンの完全攻略。

 今の俺なら……!


 俺はぎゅっと拳を握り締めた。


「……流石だな、あのヘイル爺さんにも認められるなんて」


 バタンと、魔法道具店の扉が閉まると当時にガイル君は独り言のように呟く。


「どういうことだ?」


「見ての通り、ヘイル爺さんはとても気難しい人だからな……人によっては商品すら売らないのに、物を貰えるなんて凄いことだよ」


「まあ……師匠への対抗心だったぽいけどな」


「だとしてもだよ」


 ガイル君は複雑な表情をしていた。

 ……もしかしてこれは嫉妬というやつだろうか。


「変な空気にしてしまってすまない、次はどこに行きたい?」


「おすすめは何かあるか?」


「そうだな……教会なんかはどうだ?」


 ガイル君は魔法道具店の向かいの建物を指差す。


 青のステンドグラスに入り口に飾られた赤い旗、そして神聖な雰囲気を醸し出す真っ白に塗られた壁……確かにそれは教会だった。



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