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狂人バーサーカー系ダンジョン配信者だったのですが、美少女ダンジョン配信者を助けて丁寧な対応したら実はまともなことがバレました  作者: わいん。


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第45話 もしかして俺のこと好きか?




「えっと……どういう状況?」


 もしかして、俺もう死んでるのか?

 今見ているのは夢か何かなのか?


 多分、そうだ。

 目が覚めたら、あんなに敵対してきたエルフ女がエプロンまで着て、お盆を持っているなんてエロゲみたいな展開あるはずがない。

 俺エロゲやったことないけど。


「丁度いいタイミングで起きたわね……とりあえず、これを飲みなさい」


「これは……?」


 彼女はお盆に乗っていたコップを俺の目の前におく。


 ナニコレ、めっちゃ茶色なんだけど。

 え、これ絶対に飲んでいい色じゃないよね?


「それは色々混ぜたジュースよ」


 いや、色々ってなんだよ、色々って!

 俺はその色々が知りてえんだよ!


 もしかして、このエルフ女……俺を仕留めきれなから今、毒殺しようとしているのか?


 いや、だとしたら俺が気を失っている隙にトドメを刺せばいいし、何より俺を治療する意味がわからない。


 ……信じてみるか。


「んぐっ?!」


 その液体を口に入れた瞬間、襲ってきたのは強烈な苦みだった。

 その次にはミルキーな何かと仄かな酸味が襲ってくる。


 つまり、なにが言いたいって?

 クソ不味い。


「うぇ……マジでこれ何が入ってるんだよ」


 俺は吐き出す前に気合いで飲み込むと、顔を歪める。


「だから言ってるじゃない、色々って」


「その色々の詳細を知りたいんですけど?!」


「そうね……カカオと豆乳と果物だわ、本当は猪のレバーもジュースに入れたかったのだけど持ってなかったから諦めたわ」


 いや、絶対に果物いらなかっただろ。


 しかし、なぜにカカオと豆乳?


「……! そうか、貧血対策か?」


 治癒スキルやポーションには一つ、弱点がある。

 それは失った血までは取り戻せないことだ。


 そのため、大量出血した場合は鉄分を補給して自然に体が血を作るのを待つしかない。

 確か、持ち物に余裕がある大型パーティなどではココアや豆乳などの鉄分が取れる飲み物を持ち歩いていたはずだ。


「正解、治癒魔法でも失った血は増やせないのよ」


「……ありがとう。けど、どうしてそこまで? この治療もお前がやったんだろ?」


「ええ、そうよ……本当はあの時、殺したかったのだけれどね。でも、あなたが気を失った後、ポケットからこの家の鍵が落ちてきたのだもの。違和感を感じて念話でゼロ爺さんに確認したら、間違えて私の家の鍵を渡しちゃったって言うのだもの」


「あ〜……」


 つまり、俺は風呂上がりを覗きにきた変態だと思われてたってことか。

 それは……まあ、殺されても仕方がないのか?


「だから、急いであなたを治療したわけ。相手が憎い人間だとしても、相手に非がないのに殺すほど私も落ちぶれてはないから」


 確かに、最初に戦った時も俺がエルフのことを陰険種族と侮辱するまで敵意は感じていたが、殺意は感じなかった。


 少しわかったぞ、彼女がどういう人間なのか。


「とりあえず、私はなぜかうちの鍵を持っていた上に、あなたにそれを渡したあのクソジジイをぶん殴りに行くけど……一緒にくる? 一応、あなたも死にかけたという意味では被害者でしょうから」


 彼女はエプロンを脱ぐとクローゼットの中から服を取りながらそう聞いてくる。


「い、いやぁ……大丈夫です」


「そう……あなた、クソジジイイから隣の家の鍵を受け取らなくて大丈夫なのね。野宿するつもりなんて流石だわ」


「へ?」


「ちなみに、ここは夜は氷点下を下回るし、吸血蝙蝠っていう蚊の上位互換みたいなモンスターが常に襲ってくるけど野宿するのね」


「つ、付いて行きます!」


 蚊の上位互換ってなんだよ!

 それにこんなに疲れてる状態で野宿なんて絶対にしたくない!


 俺はふらつく足取りで持ち物を取ると彼女の背中を追いかける。


「寒ッ!?」


 彼女の言った通り、外はめちゃくちゃ寒かった。

 こんな中で野宿とか絶対したくねえ……。


 そう思いながら階段を降りていると


「あっ……」


 貧血のせいか、俺の不注意のせいか、俺は足を踏み外してしまう。

 周りには掴める手すりなんてなく、俺はそのまま地面に向かって倒れていく。


 〈ショックブラスト〉を使うか?……いや、ダメだ、こんな至近距離で打ったら俺にも被害が出る。


 俺は痛みを覚悟して、目を瞑る。


「〈氷創造アイスクリエイト〉!」


 しかし、いつまで経っても痛みはやってこなかった。

 

 地面から蔓のように伸びてきた細い氷が巻き付いて俺の体を支えたのだ。

 蔓はそのまま俺の体を持ち上げ、俺は無事に地面に足をつくことができた。

 

「はあ、本当に手がかかるわね」


 彼女が指を鳴らすと、蔓のような氷が砕け散る。

 また、助けられたのか。


「す、すまん」


「〈氷創造アイスクリエイト〉」


 彼女がまた魔法を唱えると、今度は氷のステッキのようなものが生まれる。


「ほら、これを使いなさい。ちょっとはマシになるでしょう?」


「おおっ……ありがとう」


 俺は彼女から投げられたステッキを受け取る。

 不思議とそのステッキは氷で作られているのに冷たくなかった。


「ほら、寒いから早く行くわよ」


 あれ……?

 このエルフ女……ツンツンしてるけど意外と優しい?


 え、もしかして俺のこと好きか?好きなのか?


 そう思っていると正面から今にでも〈氷柱〉を撃ってきそうな鋭くて冷たい視線を感じた。


 やっぱりちょっと怖いかも……。


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― 新着の感想 ―
根はお人好しなんじゃろうね デレるのが楽しみです
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