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第34話 下層へ生還RTA




“深層ってマジ?”

“変なことし始めるから……”

“最近の子は知らないかも知れないけど奥多摩の深層って日本のSランク探索者が3人も死んだ『帰らずの深層』だぞ?!”

“3人ってマジかよ……”

“今回に限っては笑えない”

“死んだなこいつ”

“これが調子に乗った奴の末路だわ”


 コメントを見ているわけではないが、なんだかボロクソに言われている気がする。


 例えSランク探索者が3人も死んだ場所であったとしても、俺はここでのたれ死ぬつもりはない。

 恐らく、Sランク探索者でもない俺がここから五体満足で生還するのは極めて難しい。

 けど、俺はここで諦めて死ぬわけにはいかなかった。


 濃霧がなんだ、〈ショックブラスト〉で吹き飛ばしてしまえ。


「〈ショックブラスト〉」


 一瞬だけ霧が吹き飛び、前方20mくらいは見えるようになる。

 周りを見渡してみるが、やはりジャングルというより森だった。


「これからどうしよ――うッ」


 突然、胸にズキズキと強烈な痛みを感じた。

 それだけでない、なんだか息もしづらいような……。


 俺はいつの間にかに地面に膝から崩れ落ちていた。


 どうしてだ……!? モンスターの気配は感じないし、攻撃されたとしても何の音も聞こえなかったぞ?!


“なんだなんだ?!”

“急にどうしたんだよ”

“撃たれた?”

“これ、ガチで助け呼んだ方がいいよな?!”

“馬鹿言え、奥多摩ジャングルの深層まで助けに行けるやつが日本のどこにいるんだよ”


 俺が死を覚悟したその時だった。


 突然、どこかからか霧が現れ、吹き飛した前のような濃霧に俺は包まれ――


「あ、あれ?」


 同時に急に呼吸が楽になった。

 胸の痛みも嘘だったかのように消えていた。


 俺は恐る恐る立ち上がる。

 もしかして――


「……この霧がないと俺は生きていけねえのか」


 さっきはまるで、毒ガスを吸ったかのような感覚だった。

 もしかして、この霧は何らかの有害物質を浄化してくれているのか?


“どういうこと?”

“霧を吹き飛ばしたから死にかけたってことか”

“つまり、今からこの霧の中を進んでいかないといけないのかよ……”

“柊の死亡配信はここですか?”

“↑不謹慎すぎて草”


 視聴者の誰かが拡散したのか、いつの間にかに同接は8万人まで増えていた。

 てか、俺の死亡配信って何だよ。

 俺の配信スケジュールに勝手に死亡を追加するんじゃねえよ。


 俺がそう思っているとコメント欄に見知った名前を見つける。


 緋色ルリ“柊さん大丈夫ですか?”

 白野眞白“ここが深層ってマ?”


 それは緋色さんと白野さんであった。

 ていうか、白野さんってコメント欄だとちょっとキャラ変わるんだな。


 俺は心配している二人に説明する。


「ここが深層であるかはまだ確定してないですけど、10年前のニュースから推測するに今のところ深層だと思ってます」


 緋色ルリ“救助依頼出しましょう!”


「本当ならそうしたいんですけど……奥多摩ダンジョンの深層は10年前にSランクパーティを壊滅に追いやった場所ですから救助に来てくれる人なんてそうそう居ないでしょう。居たとしても霧が濃すぎてここが深層のどこなのか、わかりませんし」


 正義のヒーローがいるなら助けて欲しいよ。

 けど現実は残酷で、正義のヒーローなんて都合良く居らず、結局自分でなんとかしないといけないのだ。


“確かにな”

“Sランクパーティの中でも強いところじゃないと無理だな”

“てか、みんなスルーしてるけど柊ってルリルリと会話してる時、敬語だし、なんだかんだで、”

“ほんとだ”

“今、思い返してみるとめっちゃ丁寧に説明してて草”


 やべっ……うっかり配信外のノリで敬語になってしまっていた。


「とにかく、何とか自力でここを脱出しないと」


 今、俺がいるのは崖のすぐそば――恐らく、階層の端だろう。

 リスクはあるが〈ショックブラスト〉を駆使して崖を登るのも一つの手だ。


 そこで俺は、崖の近くを歩くことにした。

 崖から離れなければ脱出の糸口が見つからなくても、最終手段として崖上に登れるからだ。

 ……まあ、崖上が果たしてどうなっているのか、俺もわからないためあまりやりたくないが。


 そうやって数分、崖の近くを歩き回っていると


「あれって……」


 俺は目を細くし、見覚えのあるとあるものに近づいていく。

 間違いない、これは――


「桃、桃だ!」


 それはよく熟れた桃であった。

 良かった、元々の予定ではそこまで長くダンジョンに潜るつもりはなかったため、食糧が見つかったのは大きい。

 すぐ近くに他の桃の木があるようだし、当分は一安心だ。


 俺は少しジャンプすると、桃を枝からもぎ取り、齧りつく。


「美味い!」


 その桃はとにかく甘かった。

 それだけでない、どこからか力が湧いているような感覚もする。


 これはとんでもない収穫を得てしまったかもしれないな。


 俺がそう思い、もう一つの桃に齧りつこうとした瞬間だった。


「ドロボーッ!!!」


 そんな声と共に頭に強い衝撃を受けた。




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