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狂人バーサーカー系ダンジョン配信者だったのですが、美少女ダンジョン配信者を助けて丁寧な対応したら実はまともなことがバレました  作者: わいん。


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第3話 なんでも



「ハイシンって……え、ライブ配信の配信じゃないよね」


 きっと、配信ではなく同じ読み方をする別の熟語だ。

 それか俺の知らない隠語に決まっている。


「いえ、その配信です……」


 終わったァァァァァァァ!!!

 俺の配信人生……いや、人生自体終わったかもしれない。


 ……いや、まだだ。

 1人ぼっちでアシスタントも付けずに、配信している辺りきっとこの子は視聴者が殆どいない底辺配信者だろう。


 丁重にお願いしてアーカイブを消してもえば隠蔽できるはず!


「あ、あの、せめてアーカイブは消して貰えませんか?」


「全然、いいですよ……でも、もしかしたらもう、保存とかしちゃった人がいるかもしれないです」


「あー……ちなみに同接を伺っても?」


 100人よりも少なかったら何とかなるはずだ。

 全員の家に突撃し、丁重にお願いして消してもらえばいい。


「同接は……今は2万人ですね。」


「は?」


 思わずそんな言葉が口から漏れてしまう。


 同接2万人?

 まさかの俺の200倍だ。

 俺の配信を見にきてくれる人たちの200倍……その人たちに俺のあの狂った姿が広まったのだ。


 どうやって全員の家に突撃しようかな。


 俺は悲しみに暮れながら彼女の顔を見る。

 思い出した、このよく似合っている白色のペレー帽に絹のような艶やかで綺麗な黒色の髪に吸い込まれるような瞳。


 登録者150万越えのダンジョン配信者の眞白ちゃんだ。


 彼女は類まれぬ魔法系スキルの力を持っており、中層くらいであれば一人でダンジョンに潜れるくらい強かった。


 そして、その強さと見た目のギャップから一躍有名になった著名人でもあった。


 そんな人の配信に俺の奇行が映ったのだ……俺の絶望は加速していく。

 いや、もしかしたら――


「ちなみに、俺ってどこから配信に乗ってましたか?」


 ギリギリ、あの奇行が配信に乗っていない可能性があるかもしれないのだ。


「視聴者さんに聞いてみますね……視聴者さん、この人ってどこから配信に映っちゃってましたか?」


 彼女がミュートを外し、視聴者にそう聞く。

 すると、すぐに彼女が持つスマホには大量のコメントが表示されていく。


 俺はそのスマホを少し覗いてみた。


“魔石を地面に並べてスキルでぶっ飛ばすところ”

“多分、映っちゃいけないところ全部映ってる”

“あの奇行、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね”

“てか、こいつ、界隈で有名な配信者の柊じゃね?”


 うん、バッチリ映ってるじゃん。

 てか、地面に並ばせるところからってまるっきり最初っからじゃねえか。

 それどころか、俺がダンジョン配信者であることもバレているし……。


「これからどうしよ……」


 俺がそう呟くと


「え、えっと……ごめんなさい。私の使ってる配信用のドローンが急に暴走し始めちゃって事故でそちらを映してしまいまったみたいです。一応、こちらから視聴者さんにはあなたのことをなるべく広めないように言っておきます」


 彼女はこちらにそう気を遣ってくれた。

 ありがとう……わざとそんなことをするような子には見えないし、本当に言葉通りなんだろうな。


 彼女は視聴者に広めないようにお願いすると言っているが、俺がダンジョン探索者の柊だとバレている以上、今後の俺の活動に影響することは避けられないだろうな。


「どうも……」


 俺が全てを諦めてその場を立ち去ろうとした時だった。

 彼女が俺の手をガシッと掴む。


「わ、私、ダンジョン探索者としてもそこそこ強い自信はあります! ですから今回のお詫びと言ったらなんですが、私のできる限りだったらなんでもします! 何か困ったことがあったら……」


「え、マジで?! なんでもやってくれるのか?!」


「え、ええ……そうです。私のできる範囲ならなんでもしますよ……?」


「それなら……」


 一瞬、よからぬことが脳裏をよぎる。

 くっ、こんなの男に対して『なんでも』なんて魔法の言葉を使ってくるのが悪いだろ。

 だが、俺は紳士な日本男児。


 そんなやましいことは決して――


「それなら膝枕もう一回してください、お願いします!」


 膝枕は……やましくないよな?


「え……ひ、膝枕ですか? そんなものでいいんですか?」


「ええ!!! 10分くらい膝枕して欲しいです。できれば耳かきも欲しいけど!」


「ふ、不思議な人ですね……じゃあ、ここに頭をお願いします」


 彼女は正座になるとポンポンと膝を叩く。


 ワンワン!

 膝枕されるワン!


「へっへっへ……!」


 人懐っこい犬もびっくりの勢いで俺は彼女の膝に頭を置く。

 すると、太ももの柔らかい感触を感じ、さらに女の子特有のいい匂いが鼻孔をくすぐる。


 ……やばい、溶けるぅ

 美少女の膝枕最高


 俺がそう思っていると俺の頭に彼女の手が触れた。

 そして、その手は俺の髪に触れながら前後に動く。

 これはまさか……ナデナデ?!


「どうですか? 耳かきがないので代わりにこうしてみたんですけど……嫌、じゃないですか?」


「ぜんっぜん嫌じゃないです、めっちゃ嬉しいです。もう配信に俺の奇行が映ったことなんてどうでもよくなるくらいには!」


 彼女に膝枕されてナデナデされていると本当に全部がどうでもよくなってくる。

 配信に奇行が映った?

 いいじゃないか、元々俺は狂人系配信者じゃい。


 全て開き直ろう。もういっそのこと一生、狂人系配信者として生きていこう。

 俺がそう決意して立ち上がった時、赤いライトがついたカメラが視界に入った。




 翌日。

 エゴサして見かけたネット記事のタイトルは『狂人ダンジョン配信者、柊氏。本当にバーサーカーであった上に150万人越えダンジョン配信者に膝枕ナデナデして貰う』であった。


 そうあの時、彼女の持っていたカメラの電源がまだ付いていたのだ。

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