第一章 銭湯での事件5
「僕はファイラさんを、解放することを願いいます。」
乙宮は、濃い青色の瞳で、ファイラの深い黒色の瞳を覗き込んでいった。
30秒ほど、見つめ合って沈黙が流れた。
そして、ファイラが、その沈黙を破った。
「それは・・お前と結婚するということか?。」
「はいぃ!?けっ結婚!!!!なぜどうして???」
乙宮は、驚きすぎてイスからずり落ちた。
「精霊が、人間界にとどまるためには、何かと契約しなければならない。
我がここに来た時は、われの分身紅蓮華の実と契約した。
魔術師の時は、魔術師が契約者となった。
このランプもある意味では、われをこちらにとどまらせるものである。
精霊界には、戻ることはできない。
必然的に、次の契約者は、お主となる。」
「わかりました・・だけどそれとこれがなぜ結婚になるんですか?」
話を聞いてちょっと、落ち着いた乙宮は、椅子に座りなおした。
ファイラが、少し居心地悪そうに、顔を赤らめて、戸惑ってから、一気にはなした。
「その契約というのが、その者とキスをせねばならんのだ。
キスをする者は結婚する者だと決まっておる。」
ちょっと乙宮はあっけにとられてから、ちょっと笑いながらいった。
「キス?!あぁそうゆうことかでも、僕結婚してませんし、恋人でもないけど
お爺ちゃんの実家に行くと幼馴染や、おばあちゃんにキスしますよ。
大丈夫です、それでファイラさんが自由になるならキスを友情のあかしとか思えばいいんですよ。
僕と結婚しなくても大丈夫です!!」
忘れがちだが、乙宮は、お爺ちゃんがフランス人である。
日本人は、友情の証でキスはしません。
「な!?そうなのか!!時代はそんなに変わったのか!!」
「ファイラさん、僕は、ファイラさんを解放することを願います。」
「本当にいいのか?そんな願いで・・。
われを解放するなど、結婚もしないのならおぬしに得はないぞ。」
「僕が決めたことです。かなえてください。」
乙宮は、ファイラの頬に手をあてた。
「目をつむってください。」
ファイラはそっと目を閉じた。そして呪文をとなえはじめた。
「ベルスランドレーボ、契約に基づき解放せしものの願いをかなえよ。」
ファイラが光を帯びはじめた。
ファイラの唇にそっと自分の唇を押しあてた。
ゆっくり唇が触れたかと思うと、すぐに離れた。
これで終わりかと、ファイラが目を開けかけ、喋ろうとすると、
また唇が落ちてきた。さっきよりも深くかいばむように