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見えない牙

 フランス・パリにあるフランス軍統合本部のオフィスに、アランとデスカがいた。

 アランが『ナチュレ』を名乗る刺客キャルに襲撃された次の日、『ナチュレ』を称する団体からの予告状が届く。

 その内容はー



 フランス軍諸君に告げる


 我々は、古より地球に住まう『ナチュレ』である。

 諸君らが手にした機動兵器、機械人形を保有する私設武装組織である。

 諸君らは驕った。

 諸君ら人類は故郷、地球に居住する『ナチュレ』の民を迫害し、1000年以上も積み上げた文明を破壊したのだ。

 諸君らは海を汚し、空を汚し、大地まで汚し、挙げ句に軍拡の道に進んだ。

 これは容認できない暴挙である。

 我ら『ナチュレ』は驕り高ぶる人類、フランス政府・フランス軍に対し、報復攻撃を予告する。

 諸君らにおいては、『ナチュレ』の民の生存権などの権利保証と軍縮を確約願いたい。

 そうすれば、我ら『ナチュレ』はフランス人、人類と共存の道を歩むことを約束する。

 どうか諸君らの賢明なる早期の回答を期待したい。


 予告状を見たアランは怒りに震えながら、疑問に思う。

 「迫害されたというのは疑問だけど、だからって、なんで機械人形を奪うんだよ!」

 デスカは「正確には取り返したという見解だろうね」と返す。

 「あの機械人形は、人類の技術だけでなく、鉱山で発掘された未知の技術だったんだ。恐らく、部品の多くは『ナチュレ』の連中の物だろう」

 アランは真実を知り、顔を青くする。

 「嘘だろう・・・・・・」

 「機械人形のシステム、僕も政府のお偉い様たちですら知らないんだからね」

 「『ナチュレ』の民か、ラムジンやキャルみたいな怪人たちが地球に住んでいたということか?」

 「ああ、そのとおりだよ。アラン君」

 デスカは冷静に『ナチュレ』に関する文書を広げた。

 その内容は、約すると1000年前に先住していた獣人族であったとされており、彼ら彼女らは西洋人から異端者として扱われ、今では地下に潜んで各地で破壊活動を行っているとの情報もある。

 アランはこの文書を読んで、顔を歪めた。

 「これじゃ人類に迫害されたから仕返しをしたいって話だな」

 デスカはテーブルにある紅茶を口にして、頷いた。

 「まあそんなところかな」

 「機械人形も、元々は彼らの持ち物でフランス軍が回収した物を奪い返しに来た。そしてあいつらが隊長を・・・・・・ミシェルや友人たちを!」

 アランは怒りに燃えていた。

 『ナチュレ』の迫害の主張以上に、彼ら彼女らの報復でジャン・クロード隊長やミシェルはじめ友人や仲間が死んだ。

 アランは自分が死んだとしても許せなかった。

 「まあ、君を傭兵として雇ったのはそのためだけどね。君しかできないからこそ、君の力を信用した」

 デスカはティーカップを置いて、今度はデスクから何やら図面のような物を取り出し、テーブルに広げた。

 「君が力を欲し、君の力を欲しているからこそ、これを託したいと思っていたよ。軍本部で不採用になった試作兵器なんだけど、地下に眠っていた物を君に託してみようと、掘り起こしたんだが・・・・・・」

 歩兵用のガトリングガンの図面だった。

 「こんな兵器があったのか・・・・・・」

 アランは声を失った。

 「将来的に、ドイツが機械人形を研究することを見越して製造されたガトリングガンだよ。『ジョワユーズ』、対機械人形用の徹甲弾を連射可能なガトリングガンだ。ただし曲者で反動も強く、扱えた人間はいない」

 『ジョワユーズ』

 アランは虜になっていた。

 「このガトリングガンを用意したのはいいものの、使いこなす人間がいない兵器になっちゃってね。アラン君なら、きっと使えると思うんだが」

 デスカは笑みを浮かべた。

 「やるよ。デスカ、早速だが『ジョワユーズ』の引き渡しを頼む。連中、機械人形による具体的な行動が近々あるはずだ」

 アランが真剣な眼差しをデスカに向けたタイミングで、兵士の1人がデスカに電報を届けた。

 デスカはその電報を静かに読み上げる。

 「シャンパーニュ地方の密造酒の製造所に『ナチュレ』による退去警告があったねえ・・・・・・」

 アランの予感は的中していた。

 「デスカ!今すぐ向かう!バイクを用意してくれ!」

 しかしデスカは涼しい表情で「いや、その必要はないだろうね」と返した。

 「今から急行してもどのみち間に合わないだろうし、軍も到着した頃には何も残っていないだろうさ」

 「いいのか?」

 アランは怪訝そうに尋ねる。

 「僕は密造酒が嫌いだよ。ブローカーもどうせ情報を聞いてさっさと逃げ出しているさ。彼らが密造酒を焼き払ってくれるって言うなら、僕は賛同するよ」

 デスカの物言いにアランは少し呆れていた。

 「デスカ、『ナチュレ』のシンパじゃないよな?」

 「いや〜。そんなのごめんだがね」

 結局、アランは『ナチュレ』の初期対応を静観することとした。

 彼は胸の奥で嫌な予感を感じていた。



用語


ガトリングガン『ジョワユーズ』


対戦車用のガトリングガンで機械人形に唯一対抗できる兵器。

高威力を誇る機械人形用の弾丸は、機械人形の装甲を貫通可能。

傭兵アラン・バイエル曹長に試作品が支給された。

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