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カフェ

 1919年、フランス・パリは約束された平和を手にすることができた。

 戦後の混乱はしばらく続くが、パリの街中は牧歌的な時間が流れる。

 シャンゼリゼ通り付近のカフェ、スーツ姿のアランは苦いコーヒーを飲みながら紙のリストに真剣に目を通していた。

 そのリストは、闇商人から仕入れようとする武器のリストであったことは、アラン以外には秘密である。

 「機械人形を追い払うことができても、撃破に至らないとは・・・・・・。手榴弾の威力も足りなかった。地雷もタイマー式の誘導地雷が欲しいな。このままじゃ、機械人形を1機も撃破できない」

 アランは『フォルティシモ』との交戦結果に不満を抱いていた。

 あのタコの怪人であるラムジンも無事であろう。

 どうしたらいい・・・・・・。

 アランは悩んでいた。

 「お取り込み中、いいかな?」

 中年男性が声をかけた。

 その男性の方を向くアラン、声の主は赤いスーツを着用した貴族であった。

 体格もよく、貴族だが軍人なのかもしれない。

 「すみませんが、お名前をお聞きしても?」

 アランが恐る恐る質問すると「あーそんなに気を使わないで」と軽く返答する。

 「僕かい?僕はデスカ、アルフレッド・デスカ、貧乏貴族の情報将校だよ。こんな僕なんだけど大佐なんだよ。まあ階級とか気にしないで、気軽に話して」

 大佐、情報将校、貴族、これだけでも肩書きは士官の中でも最高峰だ。

 この肩書きに見合わないライトな人柄、威厳はあまり感じなかった。

 「アラン・バイエル君だね?かつては第17軽装歩兵小隊、『ジャン・クロード小隊』の生き残りで退役後は『マモー商会』の商人として生活をやり直しているみたいだがね」

 なるほど。

 情報将校だけあって、プロファイリングは完璧だった。

 ジャン・クロード隊長のこともお見通しのようだ。

 「大佐?どうして・・・・・・」

 「あーあーあー!大佐じゃなくてデスカでいいよ。それに呼び捨てでいい、敬語もなし。気楽にいこうよ?アラン君?」

  デスカの物言いに苦い顔を浮かべるアラン、「では遠慮なく・・・・・・」と返す。

 「デスカの訪問目的は?かつては軍属、今は民間人だ」

 「実はね、君を傭兵としてスカウトしたくてね」

 傭兵としてスカウトか。

 どうしてこんな戦争が落ち着いた時代に・・・・・・。

 「貴族なら知っているでしょう?戦争は『ヴェルサイユ条約』で一区切りついたでしょ?」

 アランが苦い表情を浮かべながら反論すると、デスカは笑みを浮かべた。

 「それが、言いづらいんだけど、今フランス軍はエイリアンと戦っていてねえ?」

 何だそれは?

 「デスカ、からかうのは・・・・・・」

 「そのエイリアン、僕らはUEアンノウンエネミーと呼んでいてね。そのエイリアンさんたちが、秘密兵器を強奪したんだ」

 「秘密兵器?」

 アランが怪しげに聞くと、「機械人形」とデスカが小声でつぶやく。

 アランの表情は険しさを増した。

 全身から電気が走った。

 「あれを知っているのか?」

 アランは小声で質問を続けた。

 「ああ、あれは軍と他国が合同で開発した次世代兵器だ。まだ試作品ばかりさ。それをUEと呼ばれる連中らが強奪してね」

 「アナキストではなかった。タコの怪人に会った。ラムジンって名前の」

 「そいつ、確か、大ボスじゃなかったかな?」

 「何だと?」

 デスカは目をつぶり、「もっと知りたいなら、僕のところにおいで」と質問を打ち切る。

 「来ればいいんだな?」

 アランも乗る気でいた。

 「まあ、いいんじゃない?運が良ければ一生遊んで暮らせるだけの金額は出るよ」

 「金は最低限でいい。衣食住も最低限度で構わない。高威力の手榴弾と高性能の地雷が欲しい。それを条件に加わろう」

 デスカは小声で笑う。

 どこか安心しているようだ。

 「手榴弾と地雷ねえ?まあどうにかしよう。とりあえずこれで対UE同盟は結束だな」

 「ありがとうデスカ」

 「ああ、くれぐれも内密にね。尾行されているかもしれないぞ」

 アランが強張ると同時にデスカの視線は、褐色の少女とおっとりした少女へと向けられる。

 褐色の少女はノースリーブの露出度の高い服装でどこか気の強そうな女性であり、もう1人のおっとりした少女は婦人服を着ており、見るからに怪しさは感じられない。

 「あの子たち、アラン君に興味があるみたいだね。用心してな」

 デスカはそれだけ言い残すと立ち去ってしまった。

 どこか貴族の威厳も感じず、情報将校としては優秀だが人柄はものすごく軽く、頼れるのか頼れないのかどこか分からない、不思議な貴族軍人デスカ、だが話す限り敵意はあまり感じなかった。

 2人の少女を気にしながらも、アランは席を立つ。

 これでアランは、フランス軍の傭兵として『対UE同盟』に加わることになり、あのラムジンを中心とした怪人たち、そして彼らが操る機械人形の復讐という利益利害が一致して、ジャン・クロードの無念を晴らすことになる。

 藁にも縋りたいアランにとっては、武器や弾薬のバックアップを受けられるチャンスでもあった。

 ついにこの時が来た。

 アランはこれも運命だと感じ、ようやく自分の暗い影を断ち切る一歩を踏むのであった。



キャラクター


アルフレッド・デスカ


貴族出身のフランス軍情報将校。

貴族とは思えない飄々としたキャラクター。

アランを傭兵としてスカウトする。


アラン・バイエル(交易商人)


交易商人のアラン。

スーツ姿の好青年。

その後傭兵アラン・バイエル曹長として転向するため休業。

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