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ラストステージ

 オルレアンの森にある屋敷は軍の仮設指令所となっていた。

 帰還したアランは屋敷の外で待ち構えていたデスカにラムジン撃破の報告をした。

 デスカは笑みを浮かべた。

 「ついに終わったか・・・・・・」

 「ああ・・・・・・」

 アランも安堵した。

 これで自分に課せられた義務は一通り果たせたのだから。

 「諜報員から連絡があってね、『ナチュレ』の下部組織やパリ郊外のアジトを滅ぼすことに成功したよ。機械人形軍団も辺境のアジトに強制的に帰還させられたようだ」

 「そうか・・・・・・」

 「アラン君、君に言っておきたいことがあってね。今回、君を雇ったのはただ『ナチュレ』の連中に打撃を与えるだけでなく、試作型機械人形を奪い取った幹部の怪人たちを滅ぼす特命を統合本部から命じられていたんだ。そういう意味ではソンムの事件を知っている存在を消すことは、最大の使命だったんだよ」

 デスカはアランを雇った事情を説明し、「見当はついていた」とアランは返す。

 「さすがだね。その点で言えば、君の復讐と僕の目的と利害は一致していた。アラン君、君は本当にすごいやつだった・・・・・・」

 デスカは笑みを浮かべながらアランにエンフィールドリボルバー拳銃を向ける。

 アランに戦慄が走る。

 「どういうつもりだ!」

 「ソンムの事件を知っている存在を消す・・・・・・最終的には君を処分することも視野に入れていたのさ。アラン君、君は知りすぎた。それが不幸だった」

 「デスカ!僕を利用したな!」

 アランは怒りに燃えていた。

 『ナチュレ』殲滅も、ジャン・クロード隊長たちの復讐も、すべてデスカの手の上で踊らされていたと思うと腹が立った。

 「君は本来、ソンムで死ぬべきだった。ジャン・クロードとともにね。そうすればこんな結末にならず、君は彼らとともに、綺麗な心であの世に行けたのにな・・・・・・」

 「黙れ!」

 「君は危険な存在だ!機械人形のことも、『ナチュレ』のことを知った以上、君には消えてもらう」

 最初からこうするつもりだったのか。

 『ナチュレ』幹部に打撃を与えたら、最後は切り捨て、自分を抹殺する気だったんだ。

 「アラン君、君を失うのは惜しい。せめて事故死ということにしてあげるよ。僕が引き金を引くほうが、君が引き金を引くより早いけどね」

 アランの腰に携行していた拳銃のことを見抜かれていた。

 ここもお見通しだったとは。

 四面楚歌、八方塞がり、ここまでかという思いを胸にアランは歯を食いしばる。

 しかし、地面がいきなり蒸発し、デスカとアランは吹き飛ばされる。

 威力、アランは地面に叩きつけられた。

 全身が痛い。

 しかし、全身を強く打ったが、転んだ程度だった。

 アランは目を開けたが、土煙で何も見えない。

 土煙の先ではデスカが倒れていた。

 脇腹から大量の出血が確認され、ほとんど意識がない。

 「デスカ!」

 アランが向かおうとした時、上空から二足歩行型の羽根つき機械人形が、旋回し舞い降りた。

 その機械人形はハチのような見た目でもあり、悪魔のような見た目でもあり、鉄鎌を装備し両腕には対戦車戦を想定した機関砲が搭載されている。

 アランも噂には聞いていた。

 後期型機械人形『スタッカート』の存在を。

 ハチと悪魔の2種合成型機械人形『スタッカート』は、機械人形の悲願でもあった、空中戦対応の機体で、背部の飛行ユニット『エールフライヤー』を装備することで、稼働時間の許す範囲での空中戦を可能にしている。

 武装は鉄鎌『グリムドール』と腕部機関砲『ダインスレイブ』を装備しており、癖はあるものの、武装は充実している。

 「軽装歩兵アラン・バイエル、私は『ナチュレ』怪人サンドラ、貴様の命を頂戴する。男爵たちの無念は晴らさせていただく」

 サンドラを名乗る怪人の無線越しの予告に冷徹さを感じていた。

 無念を晴らす。

 同じだ。

 ジャン・クロードの敵討ちに燃える自分と、今のサンドラはまったく同じ、自分も敵になっていた。

 アランはショックで腰の拳銃を取り出せなかった。

 『ジョワユーズ』も対戦車ライフルも手りゅう弾もない。

 殺される。

 『スタッカート』の悪魔のような形相にアランは恐怖した。

 これは報いなのか。

 アランはすべてをあきらめようとした。

 その時、虹色の光線が『スタッカート』の腹部を襲う。

 神々しい『スタッカート』の頑丈な装甲を一撃で溶解してしまった。

 強力なビーム光線が『スタッカート』の腹部装甲を溶解すると、『スタッカート』は蒸発した。

 恐らく、軍の最新兵器だろう。

 遠くで兵士の歓喜が聞こえる。

 彼らは勝利の美酒を味わっているだろう。

 「アラン君・・・・・・」

 デスカは咳き込みながら息を吹き返す。

 「デスカ!」

 「君を利用した僕を心配とは・・・・・・。君はお人よしだな・・・・・・」

 デスカは皮肉な笑みを浮かべた。

 「上の命令に従ったまでだろう」

 「でも、もう助からない・・・・・・。僕に構わないでくれ。生きろ、アラン君・・・・・・」

 アランがデスカを抱えようとした時、デスカはすでに冷たくなっていた。

 皮肉な笑みを浮かべながら、目覚めることのない眠りについた。

 「アラン曹長!」

 フランス軍の兵士が笑顔で駆けつける。

 「やりました!機械人形を新兵器で・・・・・・」

 兵士は顔色を悪くした。

 「曹長、これは?」

 アランは無言を貫いた。

 「何ということだ。デスカ大佐が、戦死された・・・・・・」

 「デスカはもういない。指揮官に伝えてくれ。周辺警戒を厳重にしてくれ。引き上げを具申してほしい」

 アランは最後の頼みを兵士に伝えた。

 3時間後、軍指揮官はオルレアンの森からの撤収命令が発令され、デスカの遺体は統合本部に引き渡される。

 デスカの死、それはアランの心の暗闇を大きくした。



メカニック


機械人形『スタッカート』


『ナチュレ』初の空中戦闘向けハチと悪魔の2種合成型機械人形。

背中にエールフライヤーと呼ばれる飛行ユニットを装備。

武装は鉄鎌『グリムドール』、両腕に機関砲『ダインスレイブ』を装備している。


パイロットはハチの怪人サンドラ。

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