空軍基地
空軍基地に緊張が走った。
それは、空軍基地の内部の爆発から始まった。
ネコの女怪人たちで結成されたバイク部隊と『ネフライトワイバーン』3機の『ナチュレ』混成部隊の侵入を許したからだ。
そして、飛行艇をおもちゃの如く破壊しつくし、基地に威風堂々と現れた赤い塗装のネコ型機械人形『ダカーポ』の姿もあった。
ネコ型機械人形『ダカーポ』は、来る機械人形・戦車との格闘戦を想定して開発された試作型の機械人形でゴリラ型機械人形『デクレシェンド』では技術的な制限制約から断念された二足歩行システムを採用した機体で、両腕に高威力のアイアンクローを装備しており、このアイアンクローには高圧電流を流すことが可能で、戦車相手には強力すぎる武装となっている。
機体内部の強化リブの採用と軽量化が徹底されており、機体強度の向上と機動性の確保を両立できた格闘向き機体に仕上がっている。
パイロットは右腕を負傷しながらも、空軍基地を壊滅させようと目論むネコの怪人であるキャルだった。
「空軍基地なんか、あたしたちでめちゃくちゃにするんだから!クモおばさんとアルスバッハがいない以上、あたしが『ナチュレ』の意地を見せてやるわ!」
キャルはもう後がないことを知っていた。
アラン暗殺に失敗し、アルスバッハとルビーの死を知った以上、自分が人類に思い知らせるしかないと考えていた。
キャルの駆る『ダカーポ』は兵員宿舎や格納庫を手当たり次第に取り壊す。
しかしキャルは、奇妙なことを考える。
「どういうこと?フランス軍の抵抗はまったくない。まるでもぬけの殻ね・・・・・・」
フランス軍の抵抗はない。
おまけに飛行艇も兵員宿舎、格納庫もまるで廃棄されたかのように放置されており、違和感がある。
ネコの女怪人1人が『ダカーポ』に合わせてバイクを停車させた。
「キャル姉さん、物資・弾薬も空になっていました。地上の物資はみんなダミーばかりです!」
「どういうことなの?」
おかしい。
あまりに抵抗がないのは奇妙だ。
「キャル姉さん!地下に謎の電気設備がありました!」
別の女怪人から無線連絡が入る。
「電気設備?新兵器なの?」
「いえ・・・・・・それが、なんというか、変電設備みたいです・・・・・・」
新兵器?
いや電気設備みたいと言っていたから、変圧器ではないかと推測したキャル、しかしどうしてここまで基地ががら空きなのか?
「姉さん!機械みたいなのが動き・・・・・・」
女怪人からの無線が途絶えてしまった。
「何が起きたの?」
急に地震のような不快な上下左右の振動が『ダカーポ』と『ネフライトワイバーン』、女怪人たちの乗るバイクを襲う。
振動と同時に地面から電気が迸る。
「なによ!どうなっているのよ!」
キャルは混乱していた。
青い閃光、引き裂かれる地面、激しい衝撃、空軍基地は青い炎に呑まれ、『ダカーポ』と『ネフライトワイバーン』、女怪人たちのバイクは巻き込まれた。
『ダカーポ』の五体は青い炎に引き裂かれ、『ネフライトワイバーン』は全身がバラバラになり、女怪人たちは消し炭となった。
空軍基地にはきのこ雲が立ち上る。
半径50km程、アランとデスカの乗る飛行船はその様子を捉えていた。
2人はこの後、フランス軍が秘密兵器『ミネルヴァ』を使用して、空軍基地を放棄して自爆したことを知った。
あの兵器は指向性イオン粒子爆弾で、作動すれば半径8キロ圏内を火の海にできる強力な威力を有している。
すでに空軍基地からは兵士や必要な兵力は引き上げており、残っている飛行艇も部品取り機のみで、すでに『ナチュレ』が攻め込んできた時点では基地は放棄されており、誘いこめる範囲まで誘い、ついに『ミネルヴァ』を自爆させた。
その一件はあくまで基地内部で発生した試験兵器の爆発事故として処分されており、公式の記録からも削除されている。
軍内部でも緘口令が徹底され、この事件は誰もが口にすることはできなかったという。
メカニック
機械人形『ダカーポ』
『ナチュレ』が開発した格闘向け機械人形。
両腕のアイアンクローからは高圧電流が流れる設計になっている。
二足歩行機の傑作だが稼働時間に制限がある。
パイロットはネコの怪人のキャル。
指向性イオン粒子爆弾『ミネルヴァ』
米国が開発した指向性イオン粒子爆弾で詳細は不明。
半径8キロ圏内を焼き払うことができる殺戮兵器。