嫌なこと、全て忘れちゃえ!
「ふあ〜ぁ…。」
手を口に抑えて、大きなあくびをする林一。
その姿を横でチラッと見つめる錬。
「でかいあくびだね、林一。」
「もしかして…一人で疲れることでもしたでしょ。」
その言葉を聞いた林一は、一瞬、目を見開かせる。
だが、次に林一は溜息を吐く。
「…君って、本当になんでも僕のことお見通しだよね。」
「なに?なんか僕のことについて探ってるの?」
「…ごめんだけど、男には興味ないからね。」
林一の言葉を聞いて、首を振る錬。
「ううん、違う。」
「ただ、俺の勘だよ。」
勘とは思わず、驚く林一。
「か、勘?…どこまで君は……はぁ、逆に怖いよ。」
「褒めてるの?」
「褒めていないよ、純粋だな君は。」
二人は歩きながら、少し無言でいる。
――その時、林一は口を開けて言う。
「…で、君はどうなんだい?」
「?何が?」
「いや、だから……」
「君は疲れているのかどうなの?」
「――て、聞いているんだけど。」
一瞬考えて
「…俺?」
「そう、君。」
「葡上錬。」
「俺…か。」
「……確かに、疲れてるの…かも。」
「だろう?なら、少しでもリフレッシュでもした方がいい。」
「――ほら、君が好きなワインでも呑んだりとかね?」
「ワイン?」
少し笑って
「ああ。」
「好きなんだろう?」
錬は、悩んだ顔をして
「好き。――でも、呑んだら俺、酔うし…。」
「そんなこと、今は関係ないだろう?“今は”だけど。」
「……。」
「じゃあ、酔った後は怖いから…」
林一の肩を掴んで
「…ん、なんだい。」
「…林一。俺のことは…よろしく。」
その言葉を聞いた林一。
一瞬考えて――
「…は?」
――そして、見事に酔い潰れた錬でした。
ふへへ――と、言いながら真っ赤に酔う錬。
それを見た林一は、呆れと
早く帰りたいという気持ちがあった。
「…錬。いきなりだけど、どうして僕なの?」
「君、弟いるじゃないか。」
ポカーンとする錬。
「え?でも…澄は海外に行ってるし…。」
「林一以外頼れる人いなくて…。」
「ふぅーん、僕が頼れる人ねー…ま、君が疲れ取れるなら肩を貸してあげてもいいよ。」
「――けど、それ以外はだめ。さすがに僕も疲れる。」
「分かった。…ありがと、林一。」
「うん。…でも、そんなに酔うとは思わなかったよ。」
「そっか…。」