ナンパ癖にご用心
天気のいい朝。
林一は、錬と待ち合わせをしていた。
「…あの錬、遅いじゃないか。」
「いつまで僕を待たせるつもりだ?」
ハァ…と溜息を吐く林一。
その時、林一の視界から見えたのは――
「お。あの子…後ろ姿しか見えないけど、
可愛い子な予感がするな。」
そう、女の子だった。
「…よし。」
「――やあ、そこのレディ。」
にこりとしながら、相手を見つめる。
「綺麗な髪質をしているね。サラサラで美しい。」
軽々と吐き出す言葉。まるで、
慣れたかのような口調だった。
「…そうだ、ちょうどいい。」
なんか閃いた様子の林一。
「もし良かったら、僕とおしゃべりしない?」
「僕、待ってる子がいてね、それが来ないのさ。」
「だからさ、どうせならお話でもしな――」
どうせなら、顔を見て話そう。そう思って
顔を見た瞬間、相手が喋り出した。
「待っている子って、俺のこと?」
相手は、林一が待ち合わせで待っていた錬だった。
「……。」
まさかのまさかで錬とは思わず、少し固まる林一。
「…林一?」
その時、林一はものすごい溜息を吐き出した。
「たく、錬。君か。」
「髪の毛サラサラでツヤツヤしていて、
アタリかなと思っていたのに。」
「…褒められてたんだ俺。」
「君じゃなきゃ、もっと褒めていたけどね。」
「ああ、そう…。」
褒められて少し嬉しかったのに、
後の言葉で全てグッと持っていかれた錬だった。