4/8
同じメンバーの一人から
「…林一、もしかして、君は――」
「嘘をついているでしょ?」
その言葉で、林一は目を見開かせ、次ににこりと
笑顔を向ける。
「え?嘘って…何言ってるのさ錬!」
「僕はアイドルだから、嘘を付くなど――」
「…俺には、分かるから。」
「……。」
林一は思い出した。
錬…同じユニットの葡上錬。
彼は、穏やかで慈愛深く、
まるですべてを見透かすような瞳。
そんな彼の瞳は、紫で綺麗で、林一の“嘘”を
一瞬で見抜いていた。そして――否定もせず、
彼を受け入れてくれていた。
「錬、これは……っ」
「…大丈夫、分かっている。
嘘を付く理由、ちゃんとあるんだって。」
誰にも見抜かれなかった“偽り”が暴かれ、不思議な気持ちと焦りの気持ちが、
ごちゃまぜになってしまった。
でも、どこか誰かに気付かれて嬉しいと
感じたのもあった。