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祝い酒

作者: 相浦アキラ

「しかし……まさか山城の馬鹿が親父になるとはなあ」


「ほんとっすよぉ。未だに信じられません」


「おい、色男!」


「……ん……ああ……んん……?」


「おい山城!」


「……んうううぅ」


「馬鹿がもう潰れやがって」


「……山城……おめでとなあああああ……お前に比べたらなあ……俺はクズだ……俺はクズなんだぁ」


「……飯田さんは泣き上戸ですか」


「ううううぅ……俺はクズなんだあああ……数字も取れないし……結婚もできない……」


「もおおおお……泣かないでくださいって。数字に出なくても、飯田さんの開拓には皆助けられてるんですよ」


「うるさい……俺はクズだ……クズなんだああああああ……山城の……足元にも及ばない……お前らもだあああ! ……俺達はなぁ……生物なんだぞおおおお……生物の目的は子孫を残す事じゃないのかあ……? なのに……俺達は……揃いも揃って独り身じゃねえかあ! 馬鹿がよお……! お前ら……子孫を残さないで幸せになれる訳がなあ……ないんだよ! 子供も作らず幸せになんてよお……なれる訳がねんだ! ねんだよお!」


「…………」


「飯田。お前飲みすぎだ」


「ううううぅ……」


「結婚かあ」


「そういや……橋はどうなんだ? 結婚する気ないのか?」


「無いですねえ。……なんていうか、正直この国って希望とか無いじゃないですか。しかもこれから状況がどんどん悪くなりそうって言うか……。それだけならまだいいんですけど、その悪い状況が全く想像できないっていうか……結婚どころじゃないですよ、正直。そんな余裕もありませんし」


「橋……お前なああああ! お前! お前アレかあ? あの……反出生主義かあああああああ?」


「別にそう言う訳じゃ……」


「お前なああああああああ……! 何が反出生主義だああああ? 非生物があああああああ! 非生物なんだよお前はああああああああ! このインポ野郎があああああ! お前の父ちゃんも、お前の爺ちゃんもそのまた爺ちゃんもよおおおおおおお! 全員が孕ませナマセックスしてんだよおおおお! お前だけしてねえんだぞおおおおおお? お前だけなんだぞおおおおおおおおおおお! 分かってんのかああああああああ! 何が……何が反出生主義だあああ! どうせお前んあんかなあああああ! 井内さんなんかに言い寄られたら簡単に手の平返して生出しすんだろがああああ! 誤魔化すな馬鹿があああああああああ!」


「止めてくださいよ……もう」


「おい飯田。あまり羽目外し過ぎたらもう呼ばんぞ」


「上等だあああああ! 二度と呼ぶなクソ童貞があ! 山城様の足元に及ばない癖にい! クッソオオオ……! ううううぶううううぅ」


「これで次の日はケロっと忘れてんだから笑えませんねぇ……」


「もう無視だ無視。無視しとこう。それが一番いい」


「ううううううぅ! 梅酒……! 酒持ってこい!」


「止めろ。もうお前は水飲んで寝とけ」


「ううううううぅ……」


「があああああああ……がああああああああ……」


「…………」


「やっと静かになったか」


「……あ、すみません。ハイボール。……鮫島さんは?」


「じゃあ生」


「ハイボールと生お願いします。あ、あと水も」


「…………」


「……しかし、実際変な話ですよね。山城は仕事も全然できないし、顔もこの感じだし。女にモテる要素なんかまるでないのに結婚して子供まで作るなんて。信じられないですよ」


「そういうもんだろ。女ってのはな、完璧な男には惚れないもんなのよ。ちょっとドジなくらいが『もうっ! 私がいないとダメなんだから!』ってなって、意外とモテたりすんのよ」


「山城の場合ちょっとってレベルじゃないですがね」


「まあそれはそうだが……」


「あー、でも浮気は絶対し無さそうですね」


「確かにその点は安心だな。山城は純朴な所あるし、そもそも他人の亭主に手を出すような女は山城みたいな男には絶対惚れないだろうし。山城が浮気してる所なんて想像も出来ねえよ」


「っすねえ……ところで……鮫島さんは結婚とか考えなかったんですか?」


「まあなあ……考えた事はあるが」


「…………」


「俺らの仕事って、子供連れと接する機会多いだろ?」


「はい」


「子供連れと話してて、ふと思う時があるんだ。こいつ、自分のガキの為だったら少しも悪びれず平気で世界滅ぼしそうだな……ってな。そういう浮ついた全能感みたいなのが……ちょっとした仕草とか会話の節々に滲み出てんだよなあ。俺も人の親になったらああなるのかと思ったら、なんていうか……怖くなってな」


「ああ……でもちょっと分かります」


「……でもなあ。今思うと、責任を取るって事にビビってただけな気もしてきてな。飯田程じゃないが、いても立ってもいられなくなったりもする訳よ……全く宿題せずに夏休みを終えようとしているガキみたいにな……俺ももう年だしさ……無駄に年だけ喰ってさ、そりゃ寂しくもなるわな。寂しさの原因は考えるまでもなく明らかな訳よ。俺は今、子供作らなかった罰を受けてるんだろうな……はぁ……これで良かったのかどうか。……まあ、どのみち後悔はする事にはなっただろうが」


「鮫島さんまで泣かないでくださいよ」


「バカ言うなお前……ハハ……」


「…………」


「ぐううううううううう……がああああああああ……」


「ううううぅ……ううううううぅ……」


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