【続編のご案内】 王女なのに婚活に苦労してまして。~このたび、会いたくなかった騎士と運命の出会いをしているようですが、それとは別件で歌劇場の殿下のために事件解決奮闘します!~(釣書姫シリーズ②)
【続編ご案内】
読者の皆様へ
本作への応援、本当にありがとうございました。一気に読んでくださる方や、日をまたぎながらも続きを読んでくださる方が多く、処女作の拙作ながら多少なりとも面白いものが書けたのかなと安堵しています(@物語修行中です)。
さて、本シリーズの続編が完成しましたので、2023年3月21日より連載を開始しました!
ブクマをつけてくださった方、またこの掲載に新たに目を留めてくださった方にお知らせしたく、こちらにて勝手ながら続編のご案内をさせてください。
試し読み的に第1&2話を掲載しました。続編は、会話率や物語のスピード感などが違いますが、前作同様楽しんでいただければと思います。是非続編にも、足をお運びくださいましたら嬉しいです!<(_ _)>
勝手ながら、ご案内まで。
それでは、続編、お楽しみください!!
【第1&2話】 悩めるフェリカ王女の諸事情
『どうか、あなたのお名前を教えてください! 今日会ったばかりだというのに、私の心はもうこんなにも、あなたに夢中になっているのです……!』
『私の名前は、……ジュリエット』
『ジュリエット? 西の国のジュリエット王女があなただったとは! 僕は、この国の王子ロミオ。僕たちがここで出会ったのは、きっと運命に違いない!』
オーケストラの演奏が、二人の台詞の後に続いて厳かにスタートした。舞台上で、お互いの愛の感情を歌い上げて抱きあう、大人気俳優と女優。
もうじき千秋楽を迎える超人気のこの歌劇『ロミオ王子と鏡のジュリエット王女』の観客席は、びっしりと埋め尽くされていた。
舞台上の二人の出会いのシーンに観客たちは熱い視線を送り、ため息を漏らす。
私もそのうちの一人。
一階席の最後列から舞台を食い入るように見守っていたわ。
前席の若い女性客が、隣の友達にヒソヒソ声でおしゃべりをしている。
「あ~、私も王女になって、素敵な出会いをしてみたいわ~」
……はーい、そこのお嬢さん! 残念ながら、王女になっても素敵な出会いなんか全然ありませんわよ?
話しかけられた友人が言葉を返す。
「私も王女になりた~い。いろんな男性から求婚されちゃうんだろうな~」
……はーい、そちらのお嬢さんも! 残念ながら、王女になっても全く求婚されませんのよ?
なんで、そんなことわかるのかって?
はい。それはね、
私が王女だからなの!
私は、フェリカ・ビオレット・ディ・アルタヴィラ=トゥステリア。トゥステリア王国の王女である私は、今、隣国カルドの歌劇場にてお忍び観劇中よ。
なぜ隣国カルドに来ているかっていうと、超人気のこの歌劇を見るためなの!……と言いたいところだけど、違うのよ。
実はね、大きな声で言えないのだけれど……明後日に開催される、大婚活パーティに参加するためなのだ。
そう、王女の私だけど、絶賛婚活中なのよ。
なんで婚活中かって言うとね、あの、聞いてくださるかしら?
私は十六歳の時、会ったこともない婚約者を流行り病で亡くしてしまって、当然、婚約は破棄ということになってしまったの。
そしてね、十七歳の時に、一人目のことがあったから、今度は屈強な大尉と婚約したの。そしたらその人も会う前に、蛮族との戦いに勝利した晩に、祝杯に酔って足を滑らせちゃって、打ち所が悪くてお亡くなりになってしまったのよ。
それで私は二回の婚約破棄を経験してしまったの。昨今流行ってる婚約破棄宣言なるものがあるらしいけど、お相手がそういうことだから、私にはそんなことは無かったわ。
そしたらね、この出来事が黒歴史になっちゃって、フェリカ王女と婚約すると不幸になると思われて、結婚相手が全く見つからなくなってしまったの。
私、全然悪くないわよね? なのに、ひどいでしょ?
なかなか相手が見つからなくて焦った私は、なんとかしようと釣書(お見合い身上書)をユセラニア大陸のあちこちに送ったんだけど……。気合が入りすぎて、ちょっと派手にやりすぎちゃって。
それで世間からは、『釣書姫』なんて渾名を付けられてしまったのだ。
おかげで『トゥステリア王国のフェリカ姫といえば「釣書姫」』、なんて面白可笑しく言われる始末。
こんな調子で結婚相手が全然見つからず、不運の婚約破棄からお相手を探し続けること丸三年。
はぁっ……、長いわよねぇ……。
あ、でもね。いつもダメダメっていうわけでもないのよ?
今までだって、時々は婚活パーティでイイ感じになった男性はいたのよね。
だけどね、
「どうかあなたのお名前を教えてください!」
と言われて、
「フェリカ・ビオレット・ディ・アルタヴィラ=トゥステリアです」
って伝えた途端、大抵の男性は真っ青になって逃げていっちゃうの。
――私も、もうすぐ二十歳。
世の中の同年齢の王女様たち、そして私の貴族の友人たちも、ほとんど結婚してしまった。
妙齢すぎていい加減マズイのよ。
『もう~こうなったら一人で生きていくのも悪くないかも!?』
とかヤケになって思うんだけど、でもまだ諦めたくないじゃない?
……それで、なんとか婚活を頑張ってるところなの。
舞台では、主演俳優と女優が身を寄せて、見つめ合いながら、愛の二重奏を歌っている。
ああ、私も舞台の王女がうらやましい! 抱擁とか、まだしたことないしなあ……
あ~、私も運命の相手と出会いた~い! それもできるだけ早くにね!
王女の私は、前の女性客たちとは違う意味で、舞台を羨ましく見てしまうのだった。
*
歌劇『ロミオ王子と鏡のジュリエット王女』の物語は進む。
ジュリエット王女は、ロミオ王子の母に化けていた悪い魔女に魔法をかけられ、別の女性の姿に変えられてしまうの。ジュリエットはその姿で王子付きの侍女として働き始めるのだけど……夜になると元のジュリエット王女姿に戻れるのよ。夜に中庭で再開する二人、心躍る王子は王女を抱きしめる……!
観客のあちらこちらからため息が漏もれ、小声がちらほらと聞こえてきたわ。
「ああっ、アクティス様! 殿下~っ!」
「アクティス殿下、ステキ!」
いったいこれから二人はどうなるのかと観客の誰しもが思う中で、舞台は暗転して、休憩時間を告げるベルが鳴った。
観客たちはこのあとの二人の関係を楽しみに、暫し休憩という現実の世界に帰っていく。
その観客の中で誰よりも早く現実の世界に帰ったのは、ベルが鳴ってすぐさま席を立ち上がった、私の侍女アメリだったわ。
「フィー様! 私、喫茶室の席をキープしときますからっ!」
その可愛い茶色の団栗眼を私に近づけて、舞台の夢世界はどこへやら、超現実的なことをきっぱり告げると、ブルネットのツインテールをぽんぽんと揺らしながらあっという間に一階席のドアから出て行った。ゆっくりしていては人の波に吞まれてしまうから、アメリの判断はバッチリなのだけど……。
こういう時のアメリは、行動が本当に素速い。侍女としてなのか、趣味のスイーツに早くありつきたいからなのかは、わからないけれど、ね?
半ばあっけにとられてアメリを見送っていると、私の左右に座っていた二人の護衛役が立ち上がった。
一人は、肩まである波打つ黒髪を無造作に結わえた筋肉隆々な大男、ブロディンだ。
そしてもう一人の護衛役は、ブロディンとは正反対、男性にしては痩身で背丈がやや低い、白金短髪で眼鏡のジオツキーだ。
私も二人の後に続いて急いで立ち上がりながら、ブロディンに話しかけた。
「ねえブロディン、歌劇は初めて?」
「こういった劇場も、歌劇も初めてで」
私と会話をしながらも、その視線は周囲への警戒を怠らない。もっとも無精髭が凄すごすぎて、いつも目元ぐらいしか見えないのよね。
ブロディンは王宮近衛騎士団の優秀な猛者もさだけど、さすがに歌劇場には縁が無く、居心地は悪そうだったわ。
「どう? 歌劇は面白いかしら?」
「台詞を喋っていたと思ったら、突然歌い出すから驚いたぞ」
口数の少ないブロディンは、ぼそりと言った。
私はその返答に思わず笑ってうんうんと頷いたわ。
「確かにそうね。歌劇って、初めてだと驚くわよね。でもそのうち自然に思えてくるのよね」
「そんなもんすか?」
そう言いながらブロディンは、特に周囲には危険がないと判断したのか、私に視線を合わせた。
「だんだん慣れて、楽しくなると思うわ」
この歌劇「ロミオ王子と鏡のジュリエット王女」は、私がどうしても見たかったのだ。
実は、私は数日前に我がトゥステリア王国の湖水地方っていうところで、お見合いをしたのね。でもとある厄介事に関わることになって、従者達をずいぶん危険な目に合わせてしまったの。
そんなことがあったから、この観劇は私が見たくて来たんだけど……せっかくだから従者たちにもこの観劇を楽しんで欲しいな、と考えていたの。
そして、私はもう一人の護衛役、ジオツキーにも声をかけた。ジオツキーは、もうじき退官とはとても思えない体躯と冷淡な美しい顔をしているイケオジだ。すでに周りの女性客はチラチラとジオツキーを気にし始めていた。
ジオツキーは人混みを慣れた様子でかき分けながら、私を誘導して歩き始めた。
「ジオツキーは、歌劇は?」
「私は、かなりの本数を観ましたが」
どんどん進むジオツキーの背中に話しかける。
「あら、好きなの?」
「歌劇は面白いですが。でも自分から進んで観に来たわけではありませんよ」
「じゃあ、どうしてそんなに観ているの?」
「いつも、女性に誘われて来ていたので」
「い、いつも女性に!?」
うわーっ!
そ、そんなことってあるの? いつも女性にって……?
スゴイことをさらりと言っちゃう、ジオツキー。‥‥‥若い頃は常に女性に囲まれていたっていうのは、嘘じゃなかったのね。
――私はお相手に避けられ続けて三年以上も経つのに。
いつも女性に誘われてた人が、私の従者だなんて。
……なんだか世の中って不公平よねぇ?
「……はぁ、ジオツキーが羨ましい」
「そうですか? 面倒なだけですよ」
ジオツキーは、その話題には関心無いという冷めた視線を私に送る。
でも珍しくちょっと優しい目つきになって、ジオツキーは私の背中を軽く叩いてくれた。おそらく、婚活を頑張る私への励ましだろう。基本クールなジオツキーだけど、元王宮近衛騎士団騎馬隊の隊長だから、心配こころくばってくれる時もあるのよね。
この間の湖水地方のお見合いは、結局残念な結果になっちゃったし……。だから、いつもよりジオツキーは私に優しいのかもしれないわ。
私がこのカルド国に来た一番の目的はね、明後日に開催される婚活パーティに出席するためなのよ。ついこの前のお見合いがダメでも次はうまくいくかもしれないでしょ?
婚活はね、前向き精神あるのみなのよ!
この婚活パーティはとても大きくて、カルド国の大豪商ヤトキンが主催するのだ。彼の顔の広さで多くの若い男女が集まるそうなのよ。貴族のパーティでは会えないような実業家にも大勢会えるのだそうよ?
――――ということは。
そう、めちゃめちゃ大チャンスなのよ!
ジオツキーにも心配させちゃっているし、明後日の婚活パーティは、いつも以上に頑張らなくちゃ!
星の数ほど婚活パーティに参加している私だけど、いつもうまくいかないのよね。
ほら、例の黒歴史が邪魔をしちゃってるのよ。
……だけど、場数を踏んでるってことは、それだけ経験値があるわけで。
とにかく何事もプラスに考えて、自分を奮い立たせることにしたわ。
婚活はとにかく、前向き精神あるのみ!
繰り返しちゃうけど、これ超大事!
よ~し、私、今度こそ、絶対にお相手をゲットするわよ~!!
~ つづく ~
続編、いかがでしたでしょうか?
ウフダム侯爵に淡い恋心を抱きつつあったフェリカでしたが、結果は皆さんご存じの通り。一行は、トゥステリア王国の湖水地方から隣国カルド国の首都アルマンにやってきました。訪問の目的は、大婚活パーティに参加するためですが、アルマンでは大人気の歌劇俳優演じる歌劇を、ジオツキー、ブロディン、アメリと共に観劇します。
このあと、フェリカ達は歌劇場の事件に巻き込まれていきます。そして、アルマンの街で関わり合いになりたくなかった人にも会ってしまうのです。
はてさて、無事に事件解決できるのでしょうか? 婚活パーティでお相手は見つかるのでしょうか? そして関わりたくなかった人とは誰なのでしょう?
続きは是非続編で、お楽しみください!













