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その頃の。ー凉

 微かな日差しが窓から差し込んで,ぼくの横顔をそっと照らす。

 ……今日は,いや,今日「も」早く起きちゃったな。のそのそと身体を起こすと,まだ眠気を引きずったまんまの瞼を無理やり開いて目覚めさせる。うん,朝だ。

 床に足を下ろしてルームシューズを履くと,半開きのカーテンをシャッと全開にする。すると後ろから同居人のうめき声が。

「うぇぇ……まぶしい,かがみぃ,閉めろぉ…」

「起きてんなら起きろって」

「休みの日っからこんな朝早く起きられるかって……朝練じゃねーんだしぃ…」

「お前ほんと朝ダメだな,月夜……」

 同室になって3年,こいつの朝寝坊癖は一向に改善の兆しがない。

「朝はいいぞ,月夜。すっきりすっから」

「うそつけぇーい,てか各務も前まで朝寝坊だったじゃんか」

「……まー,そりゃそうだけどよ」

 今までは朝なんて来なけりゃいい,って思ってたけど,今は朝が待ち遠しい。だって朝早く起きれば朝の支度に時間がかけられるし,そうなれば今日着ていく服のことだってずっと考えていられるから。……ふふっ,昔のぼくだったら考えらんないな。

 なんて一人で考えてると肌寒さからくしゃみが出る。んん,やっぱ部屋の中はこれ一枚じゃ寒いなぁ……と,自分の纏うちょっとくたびれたパジャマの生地をそっと撫でる。

 これは,ゆみりとの姉妹の証。初めて肌を重ねた後に身に纏ったお揃いのドレス。今でもゆみりのとこには時々泊まりに行くけど,お風呂上りには揃ってこのパジャマ。だってそれが二人の決まりだから。

「おーい,なに一人でニヤついてんだ?」

「べっ,別にニヤついてねぇしっ」

 同居人の眠たげな声を振り払うと,パジャマの上にカーディガンを羽織って部屋を出る。っと,財布も一応持ってくか。

 まだ若干薄暗い廊下をひたひたと歩くと,ところどころ物音のする部屋があって。そか,下級生たちは今日も部活あるんだ。朝早いのに大変だね。なんて考えつつも,時々ドアが僅かに,いや盛大に開けっ放しにされた部屋があって。

 ……ずっと思ってたけどさ,いくら女子寮だからって開放的すぎない?人に見せたいの?変態だね。なんて考えつつも,自分も人のこと言えないな,なんて。……ゆみりに見せるために何度も着たり脱いだり,体型違うから交換はできないけど……もっと脱いだり,いや,何でもない。

「あ,おはようございます各務先輩っ」

「うん,おはよう」

 顔見知りの娘に挨拶して通りすぎようとすると,

「あ,あのっ!今日って予定開いてますか!?」

 ……またこれか。

「こらこら,シーズンは終わったとはいえ受験生になーに悪い遊びの誘いしてんのさ。てかそういうのは茉莉花にやってあげな?あいつなら喜ぶよ」

「だーれが喜ぶって?」

 背後から聞き慣れすぎたアルト。

「何だ居たのかよ」

「居ちゃ悪いー?こっちは毎朝のルーティンの相手が来ないから心配して迎えに来てやったんだぞ?」

「おーそりゃ悪かったな。ってかもうそんな時間なんだ」

「そうだぞ?……というわけで悪いね子猫ちゃん,凉ちゃんはぼくが貰ってくよ?」

「は,はぃぃ…」

 一目で黙らせやがった。やるなこいつ。

「んじゃーそういうわけでー」

「って袖引っ張んなよ伸びるだろがっ」

 そんなわけで三々五々,ぼくらの春はもうそろそろ。

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