天樹
初投稿です。
天使が住むといわれている樹がある
それはとても大きな樹で、天樹となずけられている
ずっとずっと昔なのだろうか…。僕の産まれる前からその樹はあって。。。
僕はここで…天使にあった事があるんだ。
誰一人信じないだろう。
僕の記憶だって、曖昧なものだ。
それに、あれ以来、会っていないのだから。
姿を消した、僕の天使。
「天…。
また…いつか…会えるといいな…。」
そっと手を、大きなその樹に添えて
懐かしいな………
小さい頃両親を亡くして、行く宛てもなく家に閉じこもっていた頃
彼女は現れた
「何故、一人で閉じこもっているのですか。」
「誰!?」
勝手に家の中に入ってくるかと思うと、いきなりそんな事を言うのだ。
それはそれは驚いたものだった
「私は……えっと、まぁ、天とでも呼んでいただければ…」
そういってエヘヘと笑い出すのだ。
「天…。」
ちょっとの怪しさ故に疑いはあったものの、魅力というものだろうか、僕は自然と天を受け入れていたのだ。
「何で…僕のところに来たの?」
「寂しそうだったから、来ちゃいけなかった?」
「でも、僕は天の顔なんて知らないし…。」
「そりゃぁ…ねぇ。」
「…。」
天然というか何と言うか、しっかりしているようでしていない天
「寂しそうだったからって…僕は、寂しくなんかない。」
そんな意地をはっていて
「何を言ってるの、意地っ張りね〜。」
そうやっていつも天に注意されたな…
僕は、村の人々との接触が無いと言っていいほど、長い間話をしていなかったので
「まずは、村の人にご挨拶!」
それを知ると、天の行動は素早い。
すぐさま僕の手を引っ張り村の人々まで持って行こうとする
「あっ ちょとっ…」
「ほら!」
あれ…この村、こんなに賑やかだったかな…。
昔はもっと、静かだったような…。
寂しかったのに、今は優しい、楽しい空気が流れている!
「天!あそこ!あそこいこう!」
「あらあら…。」
困った顔をしながらもニコニコとついてくる。
僕達は、村の人たちに挨拶している間でも、決して…
決して手を離さなかった。
半年も経つと、もう村の常連。
空気のようだった僕の家も、いつしか賑やかになって…。
でも
でも、半年という長いようで短い時間は、恐ろしく事を進めていたのである。
「話があって…ね…。」
「いい話…?」
悪い予感がした。
天の表情が、それを物語っていた。
「えっと、まぁ…。 いい話よ!うん!あなたにとっては…。」
僕にとっては…。
「で…えっと、はやく!はやく話して。」
何だか待ちきれなくてあせらせる。
…。
「天が…消えるの?」
「消える… いえ、お別れ… です。」
「お別れ…。」
いきなり来た、そして去って行くのもいきなりだ。
疑問ばかりが浮かぶ。
僕の中に後悔が浮かぶ。
「ねぇ!もっと思い出作ってからにしよう!!
…そうだよ!思い出!」
必死になる
「私は、あなたばかりを見守っているわけにはいかなくて…。
もうすぐ、村は壊れます。」
「壊…れる…?」
話に寄れば、村には大雨が降る
と、そういうことらしいが、展開が読めない。
確かに最近の雲行きは悪かった
でも、天が何故?
「何で、天が消えるの!?天が消えるのと何の関係がっ!」
「私は、私で精一杯の努力をします。
そこで、あなたに手伝ってほしいことがあるのです。」
「手伝ってほしいこと…?」
「この村が埋もれる前に、あなたのこの家の、もっと、もっと上の山に、村の人々と食料を運ぶの。大丈夫、あなたなら、きっとできるわ。いえ…私の見込んだ子ですもの、絶対にできる。」
「天は、何をするの…。」
「精一杯のこと…」
「それは?」
「…。」
沈黙が続いた。その後の事、徐々に雨が小降り、降り、と降ってきた。
「降って来たね。」
「ええ。」
真剣な顔は、これまでの天にない、暗い、強い決心を固めた顔だった。
「では、村の人々と食料を…」
「…天…。」
「なんでしょう?」
「なんでもない。」
僕は、村の人々に言伝を、そして、食料を皆で運んだ。
説得、説得が続いて、やっと山の頂上まで来たときには、もう村は水で埋まっていた。
「おい、おまえさん、どこにいく!」
「食料を運んでくれたお礼だよ!少し休んでからいきな!無理は…」
「僕は、僕にはまだ、仕事が…」
「気をつけていくんだよ〜!」
声はとおかったけど、小さく聞こえた、おばさんの声。
「天っ!」
それは、不思議な光景だった。
天は上を向いて、何かをしゃべっているように見えた。
今あるこの樹の元
「天…。」
寂しかった。もう二度と会えない気がしたんだ…。
じっと見えていた僕をそっと微笑んで目をあわせ、彼女は、
天はいつの間にか、消えていた。
「天ーーーーー!」
雨か、涙か、温かい。 ずぶ濡れになった僕は、ただ、叫んだ。
数日後、大きな芽が生えた。
……………。
それから数年たったのが今日で
天は、もういない。
寂しい気もするけど、
村の人は、天の記憶がないんだし、これからもこうやって、元気に、やっていけるかな。
「あらあら、忘れられないの?」
「…?」
「本当に、変わらないものね〜。」
「天!?」
「それとも随分と、落ち着いたかしら。
まぁ、私には同じ!!ねっ」
「天…、あの…ね。」
「うん、分かってる。」
「うん…。あえて、よかった。」
「私もよ。
でも、もう、本当にお別れ。」
「そっか…。」
「やっぱり、大人っぽくなったわねー。」
「て…天っ。」
「照れちゃって。」
「天、ありがとう。」
「どういたしまして。」
僕は、天を忘れない。
「いつか、あなたが私を忘れた頃…。あなたは、幸福でしょうか、不幸でしょうか。
でも、覚えておいて。
天使はあなたを忘れないわ…きっと…ね。」
その意味は、わかるようで、わからなくて。
でも、天は、 僕達、この村の住人にとっては、神様なんだ。
それだけは、わかった。
天樹はその後、ある少年によって、大きな大きな花を咲かせた。
その花は、村を被い、天樹と共に、花もまたその少年の名がつけられた。
〜おしまい〜
見ていただき、有難うございます。