プライド高い僕と嘘つきの君
そう。
それは桜舞う春のことだった、嘘つきの君と会ったのは。
その朝、俺は朝早くから登校していた。「おはよー」「おはよー」女子高生たちが元気に話し合っている。「昨日のテレビ見たー?」「あぁ、あれ意外だったねー」など微笑ましい光景を繰り広げている。そんな光景を見ながら俺は新しく水野森立水野森高校1年生として登校していた。学校に着くと、知らない顔ばかりである。当たり前だが、とりあえず自分のクラスを確認し、教室に向かった。席に着くと、1人の男子高生が話しかけてきた。
「よう、俺の名前は岩泉光太郎だ。よろしく。お前の名前は?」とりあえず友達を作るのは大事だろう。「俺の名前は楠洋介だ、よろしく。」「へぇー」など自分から聞いといて微妙な反応をして失礼な奴だなと思ったが長い付き合いになるかもしれないので黙っておいた。ふとクラスを見ると1つの席に沢山の人が集まっていた。何事かと集まりの中心を見ると1人の女子高生がいた。見た目はとびきり整っている訳ではないが整っていない訳でもない少し可愛い感じの女子高生だった。
などと思いつつ見ているとその子が何かを言った。「わたしあなたたちみたいなブサイクな人を見ていると吐き気がしてくるの、だから近寄らないでほしいわ。」その一言でクラス全体が静まり返った。「ふざけんじゃねー」と俺は思わず叫んでしまった。「他の奴をどう言おうがどうでもいいが俺を馬鹿にするのは許せねんだよ。しかもお前みたいな特に可愛くもない奴に」さらに一層深くクラスは静まり返った。その日は誰とも喋らず急いで帰ろうとしていると校門の前で呼び止められた。「待ちなさい」この声はと思いながら振り向くとそこには予想通り、朝の女子高生が立っていた。「ちょっと来て」と体育館裏に呼び出された。女子高生は振り向くと「朝はいったいなぜ私のプライドを傷つけてくれたのかしら」何を言っているのかわからなかったけど、理由ならすぐに浮かんだ。「俺のプライドをお前が傷つけたからだよ!」と少し怒鳴ってしまった。「その程度の顔で何を言っているの?」と本気の顔で言ってきた。「お前の顔だって大したことないじゃないか」「そう見えるあなたの目が腐っているだけよ」とさぞ当たり前のように言ってきた。
そう、俺はこの時に間違えてしまったのだ。
「じゃあ俺とお前でゲームをしよう」「ゲーム?」「そう、ゲームだ」「俺かお前どっちかがどちらかを先に整っていると認めたら、認められた方が整っていると証明されるゲームだ」「うーん」などと言い少し考えた素振りを見せ言った。「いいわよ」「じゃあさっそくだがこのあとデートをしないか?」そんな提案に少女は耳を赤く染めながら言った。「小田切渚」「誰だそれ?」「だから私の名前!」「あぁ、悪い。俺の名前は楠洋介だ。よろしく小田切」「じゃあ、早速行こう」
まず、最初はアイスクリーム屋さんに行った。そして、アイスを買いベンチに座った。「なぁ、お互いの顔をよく見るためにさ「アーン」し合わないか?」小田切は一瞬、ビクッと肩を震わした気がしたがすぐにこちらを向き「いいわ」とだけ言った。「じゃあ、まず俺から。ほら、口を開けろ」「分かった、ほら」正面から改めてその顔を見た。やはり朝の印象とあまり変わらなかったが口を開けているのを見るとふと、思った。「まるで俺らカップルみたいだな」それを言った瞬間、少女は耳まで綺麗に赤に染まっていた。俺はそこで違和感を覚えたが無視した。そして彼女は小さい口で「パクッ」と食べた。「次はあなたの番ですよ」と言ってきたため大人しく口を開けた。
その次は小田切からの提案でバッティングセンターに行くことになった。彼女は慣れた手つきで中に入って準備をしていた。ボールが来ると難なくボールをバットに当てていた。「ここよく来るのか?」と聞いたら、思ったより普通に返事が返ってきた。「まぁ、昔嫌なことがあったらここでストレス発散してたの」「ふぅん」だが、これではただのデートになってしまうと思い、小田切に提案した。「お互いの顔を見合って決着をつけないか?あまり延ばすのも良くないから」そう言うと、「そうね、でもここだとあまり良くないから人目のあまりないところでしましょう」と言っている彼女の顔は少し恥ずかしいそうに見えた。
そして、決着として選んだのはあまり人気のない公園だった。「それじゃあ、やるか」「うん」お互い顔を見合った。ところが、小田切がなぜか目を合わせてくれない。「なんで、目を合わせてくれないんだ?」「恥ずかしいから」「なにを言ってるんだ?目を合わせてくれないと決着がつけられないじゃないか」「わたしの負けでいいから」とものすごく赤い顔で言ってきた。ここで、さっき感じた違和感に繋がった。「もしかして小田切、自分にあまり自信がないのか?」その言葉に一瞬で彼女が焦り始めていることに気づいた。「なんで、、分かったの?」「体育館裏で喋った時も、ソフトクリーム屋さんに行った時も、そして今も、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてるからだよ」「なんで自信が無いのにあんなこと言ったんだ?」と単純に疑問に思った。「私、中学の時いじめられてたの。だから、周りを近寄らせないようにするためにしたの」「だけど、言ったら言ったでいじめられるかもしれないんだぞ」「でも、それ以外の方法が分からなかったの」「はぁ、馬鹿馬鹿しくなってきたこんな奴になんで勝負なんて仕掛けてしまったんだろう。」「そうだよね。ごめん。」「だから、小田切を俺の勝負相手として申し分ないように俺が自信を持てるようにしてやる」「えっ」なぜ自分でもこんなことを言ってしまったのかはわからないが、言ってしまったからには助けるしかないだろう。「じゃあ、とりあえず明日からみっちり鍛え直してやるから覚悟しとけよ。じゃあな。」「えっ、あ、うん、じゃあよろしくお願いします。」やれやれ明日から大変そうだな。