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月と太陽  作者: ゼーデ
9/13

追憶

「グレイラ・・・あなた本当に・・・?」

王妃は恐る恐る聞いた。


「はい・・・。お母様。」


「・・・・そう。」

王妃は悲しそうに微笑んだ。


「・・・お母様・・・?」

二人の様子にリリアは動揺していた。


王も目を伏せていた。





――今から約16年前、まだ革命も起きていなく、ファルデ王国との関係も良かった頃。


ファルデ王国とはとても交流が盛んだった。


そのため、王妃と王もファルデ王国の国王や王妃と仲が良かった。


そして、ある日のこと。


ファルデ王国の王妃ソフィアが馬車で夜中に城へ訪ねてきた。


王妃のレイニアはどうしたものだろうと急いでソフィアのいる部屋へと向かった。


ソフィアは取り乱した様子だった。まだ子供が生まれてすぐのはずだが、一体どうしたのだろうか?


しかも目立たないように平民の格好をしている。すると、ソフィアが口を開いた。



「レイニア王妃、どうかお願いがあるのです。こんな真夜中に、しかも何のお話も無くやってきたことをお詫びします。このようなことをしておきながら、こんなことをお願いするのはとても気が引けるものなのですが、どうか聞いてほしいのです。」


「・・・どのようなことでしょうか?」

レイニアは静かに聞いた。


「この子を・・・この子を、どうか・・・育てていただけませんか・・・・?」

ソフィアは泣きじゃくりながら言った。


見ると、赤ん坊がソフィアの手の中ですやすやと眠っていた。


「一体、どうしたのですか?」

レイニアはいまいち理解することができず、ソフィアに訳を聞いた。


「私の国、ファルデ王国が民主主義だということは、わかりますね・・・?ファルデ王国には昔から決まりがあって、双子が生まれた場合に、どちらか一人は殺さなければいけないのです。私たちはどちらも育てていきたいと思うのですが、国民から昔からのしきたりを守れという反対が強くて・・・、このままでは反乱が起きて王族全員が皆殺しにされてしまうのです。」


「そんな・・・。なんてひどい・・・。」

レイニアは迷った。レイニアの子供もそろそろ生まれる予定なのだ。この子を育てると決めたとして、今から生まれてくる自分の子どもと、分け隔てなく育てることができるのだろうか?


「お願いします・・・!!私たちはこの子が生きていてくれれば、それだけで満足なのです。

どうか・・・。」

ソフィアは懇願した。


「ですが・・・・。」

レイニアは困ってしまった。うまくやっていけるだろうか?

この子の未来を考えて、本当に私たちが育てていっていいものかと・・・。


「いいだろう、レイニア?ソフィア王妃がそんなに頼んでいるのだ。なに、大丈夫さ。」


「あなた・・・!」


「ウェアルディア国王、ありがとうございます・・・!」

ソフィアはとても安心したようで、泣いて喜んでいた。


「レイニア、心配しなくとも大丈夫だ。きっとお腹の中の子も、兄弟ができたと喜ぶ。」

国王は笑顔でそういった。


「そうですね・・・!」

国王にそう言ってもらったおかげで、気が楽になった。


「あ・・・、ソフィア王妃、」


「?、何でしょうかレイニア王妃」


「その子のお名前・・・。」


「ああ・・・名前ですね・・・。グレイラという名前にしたいと考えていたのですが・・・。」

ソフィアは少し困ったように言った。どうやら、育ててもらうのに名前を決めていいのだろうかと思ったらしい。


「グレイラ!素敵な名前ですわ。では、この子の名をグレイラとしましょう。」



・・・――こうしてウェアルディア王国にもう一人の姫が誕生した。


レイニアはあの時のことをハッキリと覚えている。


最愛の娘が生き延びることができると喜んだ、ソフィアの顔を。


今回の戦争も、きっと王やソフィア王妃が望んだことではないだろう。


その最愛の娘、グレイラが自分たちの国との戦争に出て、仮にも命を落としてしまったら、彼女たちはどんなに悲しむことだろう。


そしてグレイラに自分の親を、いってしまえば殺しに行くようなことをさせたくはなかった。


だめだ。あの子が背負うにはそれは重過ぎるものだから。


――確かにレイニアや王とグレイラは、実際の血のつながりはない。


けれども今までグレイラを本当の娘のように育ててきた。


グレイラだって、本当の娘のように私達と過ごしてきてくれた。


リリアはいつもグレイラを本当の姉だと思い、誰よりも頼りにしている。


・・・もう今更、あの子を失うことはだれにとっても酷なことだから。


レイニアはゆっくりと目を閉じた。


――止めなくてはいけない。何としてでも。・・・それが、私の使命ならば。


私にはそれをやり遂げる義務がある。


「グレイラ、どうしても戦に出るというのならば、私を殺してからいきなさい・・・!」


大きく見開いたレイニアの瞳は、真っ直ぐにグレイラの眼にぶつかった。


今回は、レイニアの回想と思っていることの話ですね。レイニア王妃は、結構いろいろなことを考えています。この人には、まだ謎なところがあるので、そこらへんも少しずつ出していけたらと思います。

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