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月と太陽  作者: ゼーデ
8/13

宣戦布告

戦争が始まる。

何故いつの時代も人間はこんなに醜いのだろう。




「・・・――グレイラ、それは無理な話よ。」

王妃は静かに言った。

「さっきも言ったはずよ。頭のいいあなたならわかるでしょう?」


「そうだ、グレイラ。お前たちが生きることが私たちの最後の望み。そして、この国の未来なのだ。」

王はグレイラをなだめるように言った。

「・・・納得がいかないのはわかる。だが、お前たちには生きてほしいのだよ。それに、私たちだってみすみす殺されやしないさ。だから、逃げなさい。」



「グレイラ、逃げよう。・・・私はお父様やお母様の望みを叶えたい。だから・・・」


「リリア、あなただけが逃げてください。あなたがこの国の未来なら、私はこの国の望みになります。」

グレイラは一歩も譲る様子は見せない。


「・・・な・・・んで?どうして?!何で戦うの?!!生きたくないの?戦に出ることは死にに行く事と同じでしょ?!いやだよそんなの!!私は・・・誰にも死んでほしくない。」

リリアは声を荒げて叫んだ。


普通の人間なら、誰だってそう思うだろう。死にたくない。大切な人を失いたくない。

別に悪い考えじゃないんだ。誰も、悪くはないんだ。


「わかってます。分かってますよ、そんなこと。」

グレイラは何気ない様子で言った。


「じゃあ、どうして・・・。」


「リリア、あなたが戦いたくないと思うのは、別におかしいことじゃない。人間なら誰だってそう思うでしょう。」


「そうでしょ?!だからっ、グレイラ・・・!」


「でも、それはおかしいと思いませんか?」


「・・・・何が・・・?」

リリアは訳が分からないという様子でグレイラを見た。


「戦いに出る兵士も、皆家族がいて死にたくないと思うでしょう?それに、市民だって皆平和に暮らしていきたいと思っています。なのに、私たち王族だけがこっそりと逃げて生き延びるなんて、おかしいでしょう?」

グレイラは優しく言った。


「グレイラの言っていることは、確かにわかるよ?でも、だからと言って何でグレイラが戦わなくちゃいけないの?」

リリアは納得しない様子で言った。


「私は・・・この国に恩返しをしたいんです。この国のためならば、私は命を惜しみません。」

グレイラがとても自信に充ち溢れた様子言うので、リリアは何も言えなくなってしまった。


「恩返し・・・・・?」

王が訝しげに聞く。


「だから、私は戦います。必ずファルデ王国を倒して見せます。これは、宣戦布告です。」


「待ちなさいグレイラ。あなたは戦争がどんなものか分かっていないわ。被害が出るのは承知の上で王は決断なさった。一人でも犠牲者を少なくするために宣戦布告をしたのよ。何度言ったらわかるの?」

王妃は焦った様子で言っていた。普段は王妃や王を困らせるような事は絶対にしないグレイラが、ここまで言うことを聞かないということは、意思を曲げる気はないと王妃は考えたからだ。


「お母様、私は本来なら此処にいてはならないはずの人間なのです。私は、自分のことはすべて分かっているつもりです。」

グレイラはどこかさみしそうに言った。


「・・・グレイラ・・・あなた・・・まさか・・・・・?!」

王妃は驚いた様子で、大きく目を見開いた。



歯車は壊れた。もう二度と戻ることはない。

そこから見えるものは、悲しい過去か、明るい未来。

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