姫君の決断 2
式典の会場内の空気はさらにあわただしいものとなっていた。
式典は言うまでもなく中止になり、貴族や王族は安全な部屋へととうされていった。
王もこれからのことについて指揮をとるため、王室へ行ってしまった。
リリアとグレイラと王妃はそのまま会場に残っていた。
これ以上あの重苦しい空気の中にいるのは、二人には堪え難いものだった。
そんな二人を、王妃は悲しそうな目で見ていた。
「リリア、グレイラよく聞きなさい。」
王妃がゆっくり口を開いた。
「はい。」
グレイラは短く低い声で返事をした。
その横でリリアは俯いていた。
「いい?二人とも、これからもしかして戦争が始まるかもしれない。全ては王の決断で決まる。ただ、戦争が始まる確率の方が高いということはわかるでしょう?そのときは・・・
その時は二人で逃げなさい。」
「・・・・二人で・・・逃げる・・・?」
グレイラが呟いた。
「じゃ・・・じゃあお父様とお母様は?!」
今までずっと俯いていたリリアが、口を開いた。
「私たちはどうにでもなるわ。いいわね?この国の未来はあなた達にかかっているの。あなた達が死んでしまえばこの国も終わる。」
「そんな・・・・。」
リリアは王妃の言葉に愕然としていた。
グレイラは何も言わずその言葉を聞いていた。瞬き一つせずに。
「・・・・残酷なことを言っているのはわかっているわ。けれどそれは本当のこと。あなたたちなら大丈夫。それに、まだそう決まったわけじゃないでしょう?王の決断を待ちましょう。」
王妃は二人を元気付けるようにそう言った。
「でも・・・」
リリアは納得がいかないようだ。
「王妃様、姫様!ただいま王が決断を下しました。」
城の兵士がこっちへかけてきた。
「王は・・・なんとおっしゃっていましたか?」
王妃は笑顔で兵士に聞いた。
「王は戦をするという決断をお下しになりました。」
「そうですか。」
王妃はまたこんな時には相応しくない声のトーンで返事をした。
――まるで、楽しい時のような。
リリアにはそれが理解できなかった。グレイラもだ。
「王が皆様にお話があるということなので、王室の方へお越しください。」
兵士はそう言って去ってしまった。
「さあ、いきましょう。」
王妃はほほ笑みながらそう言った。リリアとグレイラはそのあとを黙ってついて行く。
王室の扉を開けるとそこには悲しそうな顔をした王が椅子に腰かけていた。
「お父様・・・」
リリアは心配そうに言った。
「戦争が始まるのですね。」
グレイラは冷静だった。何かを決意した目をしていた。
王は王妃に目配せをした。王妃はそれに頷いた。
「リリア、グレイラ・・・話は聞いたな?戦争をしなくてはならない状況になった。全て私の責任だ。・・・・すまない。」
王はすまなそうに眼を伏せた。
「そこでだ、お前たちは二人で逃げ「いやですっ!!」
リリアは叫んだ。
「私は、みんなと離れたくないです!どうせ死ぬのならみんなと一緒に死にたいんです!!!」
「わかっているでしょう?リリア、私達はね、あなた達に生きていてほしいの。」
王妃は宥めるように言う。その眼は少し悲しそうだった。
「・・・その通りだ。リリア、グレイラわかってくれ。」
王は苦しそうにそういった。
「私は何と言われても、絶対にここを離れなくないんです!!」
リリアは泣いていた。涙がポタポタと床に落ちている。
「しかし・・・」
王と王妃は渋る。自分の子供を危険な目に遭わせたくないのは当たり前だろう。
「お父様、お母様私がこの国を守ります。」
グレイラが言い放った。一歩も譲らないような口ぶりだった。
ほかの三人は口をポカンと開けてかたまっている。
「私が守って見せます・・・!」
とても低い声で、前を見据えてハッキリといった。
まるで自分に言い聞かせるかのように。
――――守って見せる。命に代えてでも。
その時、大きく見開かれたピンクの目に気付く者はいなかった。
なんかもう訳わかんなくなってきました(オイ
こんなんですが、よろしくお願いしますw