運命の時
始まってしまったのだ。
もう戻れない。
―――たとえどんな恐怖と悲しみが襲いかかってきたとしても。
式典の会場はパニックに陥っていた。
人々の不安なざわめきと、恐怖と、嘆きの声であふれている。
「お父様・・・・これからどうするおつもりですか・・・・?」
声が、思ったよりも出なかった。自分でもまさかこんなに緊張しているとは思ってなかった。
「・・・仕掛けられたのだ。もう、ここまで来たらやるしかない。」
王は思いつめた表情で言っている。
「そうね・・・。戦争で犠牲が出てしまうけれど、このまま何もしなければ犠牲者はますます増えるわ。」
王妃がそういった。なぜかその言葉はとても冷たく聞こえた。
「どうにか犠牲を出さない方法とか無いんですか・・・?」
リリアが訊く。
「そうしたいのはやまやまなんだが・・・。」
王は困ったように答える。
このまま国は滅んでいくのだろうか・・・?
それとも、戦争で多大なる犠牲を出してまでも国を守るのか?
人は醜い。
死んで行く人々がいて、それを悲しむ人がいることを分かっていたとしても戦い続ける。
――自分たちの富、権力のために。
自分はそのために何ができる?
一国の姫として、この、ウェアルディアを愛する一人の人として。
―――出来ることなんて何もないのかもしれない。
国のために戦う?私が戦ったところで何も変わらないかもしれない。
それに、怖い。恐怖の波が押し寄せてくるのだ。
私は無力だ。
思ってるだけじゃどうにもならないことなんて、自分でもよくわかってる。
でも私にはできない。行動に移せない。
何が変わるの?私ひとりで。
何も変わらない。変わるわけがない。
でも、もしかしたら何か変わるかもしれない。
それに、私が止めなくてはいけないんだ。
私にはたとえ命に代えてでも、この戦いを止める義務がある。
それが私に出来ること。
ウェアルディア国王、王妃へのせめてもの恩返しになるならば、それでいいんだ。
わずかな確率に賭けて、たった1パーセントでもいいから。
私は国のために戦いたい。
もう、時間がない。
――私は決意をした。
今回はグレイラ視点で書いてみました。
ほかのキャラの登場が少ないような・・・。
次はリリア視点書きます。
※文章修正しました。