動き出した歯車
何とかリリアはスピーチをグレイラに教えてもらって、たじたじになりながらも成功させることができた。
一方グレイラは当たり前のようにスラスラと話し、人々が驚きの声をあげるほどの出来のスピーチを披露した。
王はやっとで王妃を連れてくることができたらしく、疲れ切った顔で二人のスピーチを見守っていた。
召使に探しに行かせればいいのに、とグレイラはいつも思うのだが、結局王が王妃を溺愛しているため、なんだかんだいって探しに行くのもいやではないのだろうと思う。
スピーチが終わった二人は、王と王妃のもとへとやってきた。
「お父様ー、グレイラのおかげでスピーチなんとかできましたー!」
「そうか、よかった・・・。」
王は安堵の表情を浮かべてそういった。一時はどうなると思ったことか。
「今度からスピーチは忘れないようにしなさいね。」
王妃はいたずらっぽい笑みを浮かべながらそう言った。
「それにしても、グレイラは立派なスピーチだった!」
王は満足そうにうなずきながら言った。
「本当に流石だわ。」
「いいえお母様、これは当たり前のことです。」
褒められても、顔色一つ変えずにグレイラは言った。
「グレイラは姫としての心構えがとてもなっているわ!」
「レイニア・・・お前は王妃としての心構えを持ちなさい・・・。」
「うふふ、ごめんなさい。」
王の心からの嘆きを軽くかわした王妃は、あら?と首をかしげた。
「?、どうしたんですか?お母様。」
それに気付いたグレイラはすかさず王妃に聞いた。
「リリアはどこへ行ったのかしら・・・。」
「全く・・・。またあの子は・・・。」
王は半ばあきれた表情でそういった。
「・・・あっちのテーブルで何か食べてます。」
グレイラが無表情でそういった。もはやあきれているのか、怒っているのかも分からない。
王はあぁ・・・、とため息をつき、王妃はそれを見てうふふと笑っている。
「・・・・・私が呼びに行ってきます。」
「あぁ、そうか・・・、グレイラ、頼んだ。」
「はい。」
グレイラはリリアのいるテーブルへ、急いで向かった。
「・・・リリア。」
「ふぇ?・・・・あぁ、グレイラか。」
もぐもぐとしながら、リリアが言った。
「食べながら話すのはやめてください。それに、今は食べ物を食べる時間ではないですよ。」
相変わらず無表情で話すグレイラだが、あ、怒ってる。とリリアは思った。
「あはは・・・。ごめんごめん・・・でもほら、よく言うじゃん腹が減っては戦はできぬって・・・。」
「・・・・・・戦なんてしないでしょう・・・?」
笑顔でそういうグレイラを見て、リリアはしまった、と思った。
何故なら、グレイラが笑うということはキレてしまったことを意味するからである。
・・・・・そしてグレイラはキレると非常に恐ろしい。
「わ・・・わかったよ、もどりますから・・・ハイ・・・。」
「では行きましょう。」
キレる寸前で何とか踏みとどまったグレイラに、リリアがほっと胸をなでおろして戻ろうとした時だった。
ガシャーーーーン!!!
すさまじい音と共に、人々のざわめきや悲鳴が聞こえた。
――――これが全ての始まりだった。
やっと始まったって感じですね・・・。
いらなく長かったですが(汗)
次回はちょっとシリアスな感じになる・・・かもしれませんw