始動Ⅱ
基地へと着くと
元師と面会をとるため、部屋へと通された
そこにはとても体格の良い、白髪の男がいた。
年齢はだいたい40代後半から50代前半といったところだろうか。
男はグレイラを見るなりこう言った。
「お初に御目にかかります。私はこの軍の元師をさせていただいております。アラン・リステニアと申します。すでに国王様の方からお話は聞いていると思われますが・・・・。」
「はい。この軍のだいたいのことは父からい聞いております。それで、元師殿・・・・」
「アランで結構ですよ。」
この軍の元師ことアランは苦笑しながら言った。
「ああ・・・・、申し訳ございません。それで、アラン殿、私は一番肝心なことを聞かされていないのですが・・・。」
「グレイラ様、私相手にそんなにかしこまらなくても結構ですよ。なんせあなた様はこの国の王女様なのですから。」
アランは人の良さそうな笑みを浮かべてそう言ってくる。たぶん根っからのお人よしなのだろう。
だがこんな性格で、一体どうやってこの大きな軍をまとめているのだろうかとグレイラは思った。
「・・・それで、グレイラ様。一番肝心なお話とは、一体何でしょうか?」
「はい、私はどこへ所属するのかということです。」
グレイラはきっぱりと言い放った。
「所属・・・でございますか?」
アランは不思議そうな顔をしている。
「アラン殿。私は、どこの隊に所属するのですか・・・・?」
「いえいえ、まさか。グレイラ様が戦地へと赴くようなことはございません。一国の姫君に、何かあった時には一大事ですから。」
アランはさも当たり前のようにそう答えた。
グレイラは考えた。
アランが、私がお父様から話を聞いてきたのを知っているということは、お父様が元師であるアランと、話をしていたことは明確である。
つまり――・・・、軍隊には所属させないようにしたのだろう。
だがここで、兵士になる以外にほかに何の仕事があるというのか・・・。
グレイラは何だか、出鼻をくじかれたような気持ちになってしまった。
だがいつまでも、一人で悶々と考えていてもどうにもならない。
ここはひとつ、思い切ってアランに聞いてみることにした。
「では、兵士になる以外ではどんな役割があるのですか・・・?」
「ええ、グレイラ様には看護隊へ所属していただこうと考えております。」
「看護・・・・隊・・・?」
グレイラが今まで聞いたことのないものだった。
「はい。これは軍とは少し違いましてね。我が国の軍隊にだけあるものです。主に負傷した兵士などの手当てをする、いわば軍人のための病院です。ただ・・・・」
そこまで言うと、アランは少し困ったような表情を見せた。
「その看護隊がどうかしたのですか?」
グレイラは不安になりアランに聞いた。
「やはり、戦場というだけあって、惨い場面も沢山見ることになると思いますが・・・・・。」
そこでグレイラは理解した。
この人は、私が一国の姫ということで、かなり軟弱なイメージを抱いているのだという事を。
「お言葉ですが、アラン殿。私はそこまで軟弱者ではありません。そもそも、私は兵士として戦地に赴くことを望んで、軍へと来たのですから。」
グレイラがそう言うと、アランはとても驚いた表情をした。
アレンは困ったようにしばらく腕を組んで考えてから、話し始めた。
「これはこれは・・・大変失礼いたしました。ですが、グレイラ様。先ほどもおっしゃりました通り、グレイラ様はこの国の姫君で在られるのです。そのグレイラ様に何かあれば・・・・・」
「ならば、姫を辞めて、一国民として軍へと入隊します。」
グレイラはアランを見据えて、ハッキリとそう言った。
アランは先ほどよりも、さらに驚いたような表情をしている。
自分がたくさんの人を振り回し、困らせていることなんて、城を出てきたときからとっくに分かっていた。
此処まで来て、今更あきらめるわけにもいかない。
――そう、あの日私は、この国を守ると誓ったのだ。
・・・・命を懸けて守ると。
今回グレイラ視点です。
だいぶ期間が開いたので、キャラとか文の感じが微妙に違うような感じがします。