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七魔の極光  作者: カロ
第一章 ルーウェルティア王国編
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第八話 早すぎる出会い









 ふんふんふ~ん♪


 ご機嫌に鼻歌交じりで街道を歩いていく。



 現在、僕は一人でセルアス――ギルドを設立するために訪れた街――に来ている。

 ここは、ルーウェルティア王国の王都から少し離れた位置にある街だが、その分比較的強い魔物が出る森や山の近くに位置しているため、王都に次ぐほどに冒険者業界が発展している。

 

 そして、何故僕がこんなにもご機嫌かというと、久しぶりの単独行動が出来ているからだ。戦闘時とか潜入とかそういうのは除いて、お出かけの際に一人で行動できるのは中々ないのだ。

 いつも、僕が出かけようとする度に、誰がついていくかの争いが始まって、毎回誰か一人と共にお出かけすることになってしまう。しかも、そういう時は監視が付いていることが多い。

 でも、今日は違う。なんと、監視が一人もいないのだ! 多分みんな王国攻略に精を出しているのだろう。


 あ、ちなみにレイランは、王国攻略に反対して暴れだしたため、速攻みんなに押さえこまれた。ただ、一応僕の仲間にできそうな気もしたため、解放させて王都に返してあげた。……頼るのは最終手段になりそうだけど。めんどくさそうだし。


「んー、何しよっかなぁ」


 特に目的地を決めずにぶらぶら歩いていたため、やることもなく街並みを眺めながら歩いていく。


 こういう街ってあれだよね。路地裏とかにひっそりとやっているお店が穴場なんだよね。喫茶店は絶対に美味しいだろうし、武器屋さんとか魔法具屋さんはやばいものがごろごろしてるんだ。


 適当に見つけた路地裏への入口からちらっと中を覗きこみ、お店がないか確認する。

 見たかぎりお店らしいものはなく、ただただゴミが散乱しているだけ。はぁ、と落胆しここから離れて別の路地裏を探そうとしたとき、耳をつんざくような悲鳴が聞こえてきた。


 ……周りの人は一切反応を示していない。ということは防音障壁を使った人攫いもしくは通り魔? なら、念のために向かってみよう。流石に、知っておきながら誰かが殺されるのを無視するのは心が痛い。


 聞こえた方向にある路地裏へと走っていき、同じくちらっと中を覗き込む。

 この路地裏に確認できるのは、防音障壁に認識阻害障壁。この安物感は多分、売り物の魔道具で創られたからだろう。


「い、いやっ! やめてくださいっ! 離して!!」


「うるせぇな。大人しく俺らの言う事を聞いときゃ痛い目に遭わさねぇからじっとしとけよ?」


 必死に抵抗する、質素な服を着た金髪の少女に、少女の腕を押さえて袋の中に突っ込もうとしている二人の男。


 ……ありゃりゃ。完全にギルティだね。


「あ、あのー、すみません。その子離してあげません?」


「……あ? 何でこんなとこにガキがいるんだ?」


「なっ、ガキじゃないですぅ! もう成人してますぅ!」


 袋を持って、少女を入れようとしている男……めんどいし、訂正。男Aの言葉にイラつき、挑発するように言い返す。


 た、確かに童顔かもしれないけど、この体の年齢はもう十五歳だ! 成人してるんだよ! おまけに精神年齢は三十五歳、実際の年齢は七百五歳だ! 老人だぞ、老人! 何十倍も生きてるんだよ、こっちは!


「あぁ、何か魔力持ってない奴は、この障壁の効果がないらしいぞ? だから、こいつノーマジックかもな。捕まえりゃ結構な値になるんじゃないか?」


「ほぉ……。いや、でもこいつ結構可愛くねぇか? 別に俺、ロリコンとかじゃねぇけどさ、こいつならかなりタイプだわ」


「んん? ……お、確かに可愛いな。アジトに持ち帰ってまわすか?」


 何を言ってるのかな、この人たちは? もしかして実力差とか一切分からない感じ? あまり周囲を刺激しない程度に、魔力を流してるんだけど。

 ……ほら、少女もこっちを見て目を見開いてるし。超魔力をガン見してるし。


「あのー、多分勘違いしてると思うんですけど、僕男ですよ? 女じゃありません」


「ん? ……あー、何だ。そう言うと良いみたいなこと、親に教わったのか? どっちにしろ、これを見た時点で逃がす気ねぇから安心しな?」


 おい待て、その言葉、襲われる度に毎回言われてるんだけど。女じゃないって言ってるのに、何か嘘乙的な感じになっちゃうの何で?


 とりあえず、男たちのもとへと歩み寄っていき、魔力を高めていく。が、魔力に気付く様子もなく、にやにやと僕のことを舐めまわしながら見ているばかり。なお、少女は僕から目を離すことができないようで、汗を流しながらがくがくと震えだした。


 見ろ、この姿! お前らよりこの少女の方が優秀だぞ!? 情けないと思わないのか!


「五秒以内にここから離れてください? そうすれば、今回は見逃してあげます」


「あぁ? 何言ってんだ、お前。それも親に教わったってか? そんな子供騙しじゃ大人は騙されないんだよ」


「ふへへ、たっくさん大人の遊びを教えてあげるから、大人しくしてるんだよ?」


 馬鹿だ、完全に馬鹿だ、この人たち。もはや少女も、男たちの発言に、えっ、みたいな顔してるし。

 でもまぁ、忠告はしたから大丈夫だよね? 僕は悪くない。ただ少女を守っただけ。


「5、4、3――」


「おいおいマジか。それ、カウントゼロになったらどうなるんだろうなぁ?」


「さぁ? ごめんなさ~いって逃げ出すんじゃない? まぁさせないけどな」


「「ガハハハッ」」


 豪快な笑い声を上げて、動かずに僕の行動を見守り続ける。


 あぁ、神様。どうか彼らに安らぎを……ってリーリアだったら急所を全力で蹴り上げて地獄に放置するだろうなぁ。まぁ、神様のもとに案内されないことを祈るよ。


「2、1、0……。それじゃ、お疲れ様です」


 瞬間、男Aの両腕が消滅し、血しぶきが近くの壁に降りかかる。少女には薄い障壁を張っていたため血は一切かかっていないが、後ろの男Bには降りかかり、赤く染まっていく。


 男Aは自分の状況に気付いていないようだったが、すぐに理解し叫ぼうと口を開けたため、その口に火球を突っ込んで爆発させる。

 汚い音が鳴り、肉片が男Bの顔にべちゃっとつく。


「ひっ、あっ……く、くりゅ、な……あひゅ……」


 辛うじて聞き取れる声でそう言うも、無視してゆっくりと近づいていく。

 そして手をかざした途端、男の口に猿轡が嵌められ、驚いた男に殺気を僅かに当てて地面に這いつくばらせる。瞬時に手足にロープが巻かれて、一切身動きが取れない状態になった。


「ふぅ、完了っと。大丈夫?」


「……す、すごい。魔法で猿轡とロープを創り出した? いや、でも材料がない限り魔力利用の理論的に不可能。そもそも、腕が消滅したのはどういう原理? 動いた様子も見れなかったし、やはり魔法? だとしたら風魔法……ううん、あれは完全な消滅だった。なら切り刻んだわけでもないし、そしたら闇魔法……。ううん、闇魔法こそ、生命体の消滅は不可能。だとしたら分類が分からない。となると最終的に考えられるのは音速、いいえ、光速レベルの超移動。爆発的な強化魔法による身体強化によって目にも止まらない速度で動いたとしか。私に張られた薄い障壁。あれはかなりの薄さだったけど、確実に中級魔法を耐えるレベルはあった。これが出来るなら、余裕にできてもおかしくない。でも、なら何で情報網にこの少女が存在してないの? あの情報網はレイランさん協力のもとの情報網。レイランさんなら逃す情報はないはず。いや、彼女を上回るほどの隠密能力を持っているとしたら、レイランさんでも知ることは出来ない。つまり、天災級の技術を多く持つ少女ということ。じゃあこの少女はなぜこの街に――」


「あ、そろそろいいかな?」


「あ、はい! えと、助けていただいてありがとうございます!」


 恐怖じみた独り言にストップをかけると、まるで今のが嘘だったかのように明るい表情で、元気よくお礼を返してきた。

 少女というワードとレイランというワードが出てきたところに若干の不安が浮かぶが、ここは一旦無視をして、さっと手を伸ばす。


「僕はユキ。君は?」


 僕の手を恐る恐る握り返すと、嬉しそうに自己紹介を返す。


「私はルーウェルティア王国第三王女、メイリア・R・ルーウェルティアです! これからよろしくお願いします、ユキさん!」














次回は夜九時でーす

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