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七魔の極光  作者: カロ
第一章 ルーウェルティア王国編
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第四話 世界征服

すみません、設定ミスってました(汗)








「全く。何でこんなにも下等生物はわたくし達をジロジロと見るんですの? 不愉快ですわ。わたくしの体を見ていいのは、ユ、ユ……だけですのよっ!!」


「恥ずかしくて言えないのなら何で言おうとしたのよ!?」


 肝心な名前の部分を、小さな声でボソッと言ったアリスに、シャロンが的確なツッコミを入れる。



 あの後、パパっと冒険者支部から出て、路地裏まで撤退。人目が完全にないことを確認すると、【ゲート】によって、僕たちの家で、ギルドハウスである六花城に戻ってきた。

 余談だけど、六花っていうのは雪を意味する言葉で、僕の古くからの知人が僕の名前からとって、この城の名が六花城となったのだ。


 誰かが合図するわけでもなく、自然と皆がいつもの椅子に座っていき、僕も椅子に座る。

 指を絡ませて、そのまま上に伸ばして体をほぐす。


「んっ……! はぁ」


 手を下ろして、テーブルに顔を伏せて体を休ませる。六百七十年眠りっぱなしだったせいか、かなり体がなまってしまっていたようで、少し怠い。


「で? どうすんだ、これから。特にやることもねぇだろ」


「そ~なんだよねぇ。今までは何かしら事件があったから暇しなかったけど、真犯人の神様ぶっ飛ばしちゃったから完全に終わっちゃったし……」


 顎を組んだ腕の上に乗せ、つまらなさそうに喋る。


 ホント、駄女神さんのお陰で毎日が戦闘だったり冒険だったりと面倒くさいしうざかったけど、暇はしなかったからその分まだ楽しめた。ただ、平和になっちゃうとそれはそれでつまらない。


「では、一つ。私に考えがあるのですが、よろしいでしょうか」


 渋い声で、みんなからの注目を得たのは、もはやギルドメンバーではなく執事としてみんなのお世話や六花城の掃除等を行っていて、対等な扱いを受けようとしないルーウェンだった。


 ルーウェンの視線は、ギルマスであり、勝手に主になっている僕に向かっていたため、コクリと頷くと軽くお辞儀をしてから話を続けた。


「畏れ多くも私も一員となっている、我が主の治めるギルド〈七魔の極光〉は、今では知る人こそ少ないものの、六百七十年前に一度世界を救っております。では、今度は世界を支配しては如何でしょうか?」


「え、何言って――」


「ルーウェン! 貴方良いこと言いますわね! それですわよ、それ!」


「そうです! この世界はユキ様のもの! そしてユキ様以外が治めてはならないものです! 良い案ですよ!」


「面白いじゃねぇか! これならしばらく退屈しなさそうだっ!」


 ……え?


 ルーウェンの言葉に、何を言っているのかあ分からないと反論しようとしたところ、アリス、ユレイア、そしてバレンが身を乗り出すほど興奮して賛成する。


「まぁ、いいんじゃないの? ユキがいなかったらどうせ世界は終わってたんだし。それに、今更感はあるけどね。もう征服手前までのことやってたんだから」


 あ、あれ……? 唯一の良心が賛成しちゃったよ?

 あとはアイだけだけど……。


「……マスターが一番になるべき。マスター以外が王様とかありえない」


「ではユキ様! これからの目標は世界征服という事で進めていきましょう! まずはどこから征服しましょうか。ここは無難にルーウェ――」


「ちょっと待って!? え、なに、みんなやる気なの!? というか僕に決定権は!?」


 案の定アイが賛成したことにより、ユレイアが今後の方針を話し始めるも、慌てて僕が中断させる。

 が、それも全く意味がなく、一様に全員がコクコクと頷くと、すぐにユレイアへと視線が移った。


「というわけで、第一目標はルーウェルティア王国にしましょう! そうですね、現王族全てを配下に置けば、自然と王国はユキ様の手に落ちるでしょう。ただ、一番の厄介はやはり、あのクソきしょ猫ですね。まずはあれをどうにかするという事で」


 く、クソきしょ猫ってまさかレイランのこと……? え、いや、それはマズいでしょ。あれでも普通に冒険者組合組合長だよ? 一番のお偉いさんだよ? 確かにめんどくさい性格だから王都に行くのは避けたんだけどさ……。

 

「作戦は後々報告するので、ひとまず解散としましょう! ユキ様、合図を!」


「え、あ、うん。えっと、か、解散……」


 

 戸惑いながらも発した合図により、みんなが立ち上がって散り散りに自分の部屋がある方向へと消えていった。

 残ったのは、僕とユレイアのみ。ふと、ユレイアがうっとりとした表情を浮かべてこちらを見つめてきた。


 な、何? と困惑の声を出すも、にへーっと笑い、口の端から涎を垂らすばかり。


 ……どうしろと?


「ユキ様! んっ、お願いします!」


 顔を俯かせて、頭の頂点が見えるようにすると、ちょんちょんと頭を近づけてくる。


 えっと、これはあれだよね。頭を撫でろってことだよね。いつも何か良いことをやってくれた時にやるご褒美の頭なでなで。

 初めて要求されたときはホントにビビったけど、今じゃなるべく手触りとか漂ってくる甘い匂いを何とか無視することでどうにかしてる。


 ……って、え? これ、ご褒美の証だよね? ご褒美、ご褒美……。


「私、世界征服のために頑張ります! そして、今日、これから世界で語り告げられるであろう第一歩が成し遂げられたのです! どうか、ご褒美をください! そしたらなお、やる気が出てきます!」


「あ、あはは……」


 苦笑いをしながら、頭にそっと手のひらを乗せると、まるで猫のようにユレイアの喉からゴロゴロと音が鳴る。床にはポトポトと涎が垂れていき、小さな水溜まり、いや、涎溜まりを作り出した。


 勇気を出して手を動かすと、瞬時に悲鳴のような声が上がり、そのあとに体がビクンビクンと痙攣し始めた。


「お、終わり! 何か今日のユレイアおかしいから!? お、お風呂、お風呂に入ってきて!」


「あ、まだ、もうちょとおねが――」


 言い切る前に【テレポート】でユレイアをお風呂場へと飛ばし、嵐が過ぎ去ったかのように静寂がおとっずれる。

 ささっと床にできた涎溜まりを魔法で綺麗にし、誰もいなくなった大広間で自分の椅子に腰を下ろす。


 ……疲れたなぁ。今日のユレイア、何か反応が過剰すぎた気がしたけど大丈夫だよね?


「……にしても、世界征服ねぇ。……流石にやりすぎな気がするんだけど、どう思う?」


 ため息をつきながら、柱の陰に隠れているつもりの人物に声をかける。


「んー、やっぱりバレてるかぁ……」


 同じくため息をつきながら柱の陰から姿を現したのは、綺麗な艶のある長い黒髪に、翡翠色の透き通る眼を持つ美女。しかし、ここまでの美人なのだが誠に残念ながら体に凹凸が少ない。


「ちょっと。何で私の胸を見ながら哀れなものを見るかのような顔をしてるのよ。イラっと来るんだけど?」


 顔をしかめ、コツコツと音を立てながら僕の元まで歩いてくる。やがてたどり着くと、適当になのか分かっていてなのかは分からないが、ユレイアの座る席に腰を下ろすと、お互いに見つめ合う。


 ……これを見たらユレイアは大暴れするんだろうなぁ。勝手に座られちゃって。


 しばらく無言で見つめ合うと、先にあっちが吹き出し僕もつられて吹き出してしまう。


「ぷっ、ふふ、いやぁ、ホントにあれは凄かったわよねぇ。よくもまぁ生きてたもんだよ、ユキは」


「くっ、あははっ、君に言われるって、随分と酷いなぁ。どれだけ大変だったか分かってるの?」


 しばらく皮肉を言い合いながらひとしきり笑うと、少しして熱が冷め、今度はピリピリとした空気が流れ始めた。

 最初に話を持ち出したのは僕からだった。


「それで、いつ起きたの?」


「思ってるほど前じゃないと思うよ? ほんの十二年前。もともと魂だけはこの世界に存在し続けてたからね。体を作り直すのに時間がかかっちゃっただけ。それに、力も全然よ。ユレイア二人分しか回復してないし、全快は多分永遠に来ないだろうねぇ。数百年後でもユキとは碌な勝負ができなさそう」


「そっか。ごめんとは言わないからね? 自業自得だよ、リーリア?」


「はぁ、手厳しいわねぇ」


 リーリアは笑いながら立ち上がると、再びあの柱の裏へと歩いていく。僕も立ち上がってそちらに歩いていくと、柱の裏に小さな時空の歪みを発見する。


「私はもうちょっと上から見てるわね。……そうそう、あの子たち、何だかんだ言って六百七十年も待たされてたんだからもうちょっと優しくしてあげてもいいんじゃない? 色々と頑張っていたみたいだし」


「あぁ、だからユレイア……。そうだよね、うん、分かった。アドバイスありがと。また今度、食べにでも行こ? 今の時代の美味しいお店を教えてほしいな」


「それこそあの子たちに……ううん、いいわ。そうしましょうか。それじゃ、また今度」


「うん、じゃあね」


 六百七十年前と同じように、あっさりとした別れを告げると、そのままリーリアは時空の歪みに手を触れ、ぐにゃりと変形して歪みに吸い込まれていった。

 やがて完全に吸い込まれると、時空は正しい形に戻り、魔力や気配の乱れを感じなくなった。


「さて、これから忙しくなりそうだなぁ」


 両頬を軽く叩いて気合を入れる。


 世界征服。表から阻止できないなら、こっそり仕組んで世界征服を阻止してやる! 絶対に諦めさせるからね!


 誰にも知られることなく、そっと心の中で決心した。














 

次話は二十一時です!

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